タワマン節税を考える①~タワマン節税の仕組みを解説~

相続税対策には様々な方法があります。

相続税対策を検討している人の中には「タワマン節税」という言葉を聞いたことがある方も多いのではないでしょうか。今回は効果も大きく即効性があるタワマン節税について解説します。

タワマン節税とは

タワマン節税とはタワーマンションの時価と相続税評価の差分を利用した節税策です。タワマン節税の解説をする前に不動産の相続税評価について解説します。

不動産の相続税評価は土地は路線価で計算を行います。土地は一般的に時価の7~8割程度の評価額になるといわれています。一方の建物は固定資産税評価額で計算を行います。建物は一般的に時価の5割~7割くらいの評価額になるといわれています。

マンションの場合、建物の床面積に応じて土地も保有していることになりますので、戸建てよりも土地の割合が少なく、建物の割合が大きくなります。

先ほどご説明した通り、土地よりも建物の方が時価との差が大きいため、マンションを保有することで一戸建てを購入するよりも相続税の節税効果が大きいのです。

マンションの中でも節税効果が大きいのが高層のタワーマンション、いわゆる「タワマン」です。

タワマンは超高層の建物ですので、土地の割合が通常のマンションに比べてもかなり小さくなります。また、上の階に行けば行くほど眺望がよく、人気がありますので時価評価額は高くなります。一方で相続税評価については低層階と高層階で同じ評価になりますので、高層階に行けば行くほど相続税評価との差額が大きくなる仕組みになっています。

都心のタワーマンションは1億円を超えるものも多くありますが、相続税評価は2割~3割になることも多く、相続財産の圧縮効果が高いため、資産家の方にとって人気の節税策となっています。

 

投資用として購入する人も多い

いくらタワマンを持つことで節税になるといっても住み慣れた今の自宅を離れたくない方やマンションの高層階に住むのは避けたいと考える方も多いでしょう。そのような場合は投資用として保有する人も多くいます。都心のタワマンは夫婦共働きで収入が多いパワーカップルなどから人気があり、賃貸需要も旺盛です。

タワマンを投資用不動産として購入し、人に貸すことで、収益を得ることも可能です。毎月の賃料収入を得ることで、年金の足しにすることができますし、さらに相続税対策を進めるのであれば、不動産から得た収益を子や孫に贈与をしていってもよいでしょう。

不動産を共有で相続する場合の注意点

相続が発生すると悲しみに暮れる暇もなく、さまざまな手続きを期限内に終わらせる必要があります。

その中でも特に時間がかかるのが遺産分割協議でしょう。特に不動産がある場合は、誰か一人が相続すると配分に不公平が生じることがあります。その場合、持ち分均等で共有にしようと考える方も多いでしょう。しかし、共有にすると様々な問題点も発生しますので注意が必要です。

不動産の共有とは

不動産の共有とは不動産を単独で所有するのではなく、複数の人で共有で保有することです。共有で保有する場合は、持ち分が決められており、権利・義務はその持ち分に応じて発生することになります。

例えば、持ち分が

A:10分の5
B:10分の3
C:10分の2

となっている場合、不動産から生じる収益は持ち分に応じて受け取ることになりますし、固定資産税などの費用も持ち分に応じて支払うことになります。

 

不動産を共有する際の注意点

遺産分割協議の際には均等に配分できるため、便利に感じる不動産の共有ですが、不動産の共有をすることで、さまざまな課題が発生します。不動産を共有する際の注意点について解説します。

意思決定が難しい

不動産を保有しているとさまざまな意思決定が必要になります。例えば、売却をするべきか否か、収益アパートであれば、修繕をいつするのか、どの程度の規模で行うのか、など重大な決定事項が多くあります。

単独で所有している不動産であれば、一人で決めることができますが複数で共有している場合は意見が分かれる可能性もあります。共有の場合、全員で合意をしなければいけませんので、意思決定が非常に難しくなります。

義務の範囲が難しい

先ほど、持ち分に応じて義務が発生すると説明をしましたが、実際には義務の範囲を決めることは非常にむずかしいことです。収益や固定資産税など明確に分けられるものについては持ち分に応じて分けることが可能ですが、不動産周辺の草刈りや掃除、人に貸している不動産であれば、賃借人からの依頼への対応などさまざまな業務が発生します。

通常は持ち分の多い人や近くに住んでいる人にこのような負担は偏りがちです。そのため、負担が偏っている人は負担が大きいため、売却したいと考えていても共有で持っている人は特に負担がなく収益が入ってくるため、売却したくないと考えるケースも多くあります。

このように持ち分に応じて負担をするということは実は簡単ではないということも認識して共有する必要があります。

共有となっている不動産を相続する際の注意点

駐車場や収益物件などの不動産を相続する際に、共有となっており、相続する分は持ち分の一部となる場合があります。このようなケースではどのような点に注意をしないといけないのでしょうか。

不動産が共有となっているケースとは

まずは不動産が共有となっているケースとはどのようなケースが考えられるのか解説していきます。

最もケースとして多いのが親の代から引き継いだ不動産をその子が共有で相続し、さらにその子どもが共有するようなケースでしょう。

このようなケースでは相続した子どもは叔父や叔母もしくは叔父や叔母が亡くなっていた場合、いとこと共有することになります。

共有で不動産を相続する場合の問題点

先ほどのケースでは共有する人は最初は兄弟ですが、その後は叔父・叔母、いとこなどどんどん縁遠くなっていきます。また、人数もどんどん増えていく可能性があります。

例えば、3人の兄弟で共有で相続し、その後その子ども二人ずつで共有した場合、6人で不動産を共有することになります。

不動産を売買する際や建て替えをする際は共有者全員で同意する必要があります。人数が多く、縁遠くなってくると話し合いで方向性を決めることも難しくなってしまいます。共有不動産は結果として折り合いがつかず何もできなくなってしまう可能性も高いのです。

共有となっている不動産を相続する場合の対処法

共有となっている不動産を相続する場合は、まず誰と共有となっているか確認をし、方向性について話し合うことが重要です。共有者が全員が売却を希望する場合は早めに売却手続きを進めた方がよいでしょう。

特に共有者の中に高齢の方がいる場合は相続が発生して共有者が代わったり、意思能力が低下して売買ができなくなる恐れがありますので、早めに対応することが重要です。

保有し続けたい人と売却したい人で意向が分かれた場合、保有を継続したい側に売却したい側の持ち分を売却することも考えられます。親族間で売買をすることで、共有を解消し、一人がすべての持ち分を保有することが可能です。

話し合いによって方向感を見いだせないときも、今回の相続でさらに共有者を増やすことはやめたほうがよいでしょう。とりあえず解決しないから兄弟で持ち分をさらに分割して共有しておこうと考える方も多いと思いますが、共有する人が増えれば増えるほど、考え方も異なる方が出てくる可能性が高くなります。

不動産についてはなるべく一人が相続した方がよいでしょう。

不動産のみ記載する内容の遺言を書く際の注意点

前回の記事でもご紹介した通り、不動産のみ記載する遺言を書くことは可能です。しかし、不動産のみ記載する遺言を書く際は注意点も多くあります。不動産のみ記載する遺言を書く際の注意点について解説します。

不動産のみ記載する遺言書を作成する場合の注意点

不動案のみ記載する遺言書を作成する場合はどのような点に注意すればよいのでしょうか。

不動産以外の財産の割合でトラブルになることがある

不動産のみ記載する遺言書を作成した場合、不動産以外の財産は遺産分割協議によって誰が相続するかを決めることになります。不動産を取得していない人としては預金など現金を多く相続することを主張することが考えられます。

不動産を除いて現金を等分にわけるべきなのか、不動産を取得した分を加味して、不動産をもらった人は現金を少なくするべきかというのは正解がありません。被相続人が事前に遺言書に記しておけば、相続人も納得する可能性が高いですが、お互いに話し合って決めても納得できないことも多いでしょう。

不動産のみ指定することでかえって他の財産を誰が引き継ぐのかトラブルになることも考えられますので、注意が必要です。

納税資金不足になる可能性がある

不動産は財産として価値があるため、相続税の対象となりますが、不動産を相続してもすぐに現金を得られるわけではありません。そのため、相続した財産だけでは納税資金不足となり、自分のお金で税金を支払う必要が出てくる可能性があります。

価値のある複数の不動産を一人に遺した場合、多額の納税が必要となる可能性がありますので、相続税をどれくらい払う必要があるのか把握して配分を決めるようにしましょう。

相続税の計算はすべての財産の評価を行う必要があり、非常に複雑な作業です。税理士など専門家に相談して間違えないようにしておきましょう。

また、不動産を維持するためには固定資産税や建物のメンテナンス費用などもかかります。納税資金だけでなく、ある程度の運営資金も残しておくようにしましょう。

遺言書を書く際は全財産を書く方が良い

法律上は不動産のみ記載する遺言書は有効です。しかし、預金など他の財産の遺し方も決めておかないと相続人間でトラブルになったり、納税資金不足になったりとさまざまな問題が発生します。相続人間でのトラブルを避けるために作成した遺言でかえってトラブルになってしまうこともあり得ます。

不動産のみ記載する遺言を作成することも可能ですが、できればすべての財産を記載した遺言書を作成するほうがよいでしょう。

不動産のみ記載する遺言を書くことを可能?

遺言書を作成しておくことで、自分が亡くなった後、誰に財産を遺すか決めておくことができます。

不動産を保有している人の中には代々引き継いだ資産である不動産だけ残す人を決めておきたいという人もいるでしょう。今回は不動産のみ記載する遺言について解説します。

不動産のみ記載する遺言書を作ることは可能

結論から言うと不動産のみ記載する遺言書を作ることは可能です。遺言書はすべての財産について記載する必要はありません。記載した財産のみ効力を生じることになります。

不動産を複数保有している場合はそれぞれ受け取る人を指定することができます。例えば、自宅と駐車場とアパートがある場合、配偶者に自宅、長男に駐車場、長女にアパートを遺すということも可能です。

不動産のみ記載する遺言の作成方法

不動産のみ記載する遺言を書く際も通常の遺言の作成方法と大きな違いはありません。

遺言には自筆証書遺言と公正証書遺言があります。自筆証書遺言とは自分で自宅で作成する遺言です。自分で作成するため、費用などはかからず簡単に書き換えることも可能です。ただし、形式的な不備がある可能性もあるため、法律上有効な遺言となるかどうかは亡くなったあとにしかわかりません。

一方の公正証書遺言は公証役場で公証人に依頼して作成してもらう遺言です。作成時に公証役場に費用を支払う必要がありますが、作成時に有効な遺言として確実に残すことが可能です。

自筆証書遺言の場合も公正証書遺言の場合も不動産の登記を確認して、正確な地番を書くことが重要です。

例えば、「自宅不動産を長男に遺す」という遺言があったとしても自宅不動産とはどこまでを指すのかがあいまいな場合があります。自宅には土地と建物がありますし、自宅前の私道や隣接している駐車場が文筆されているケース、敷地内に物置など別の建物が建っているケースもあるでしょう。

登記簿上に記されている地番を正確に記載しておかなければトラブルになる可能性があります。

自分が保有している不動産を把握するためには名寄帳を確認するのが便利です。名寄帳とは地方税法第387条1項に基づいて作成されている市区町村ごとにその人が保有している不動産の一覧です。名寄帳には所在や評価額が記されており、自分が保有している不動産の一覧が掲載されています。

固定資産税を納付する際に届く納税通知書でも保有不動産を一覧で確認することができますか、税金を支払う義務が発生していない私道等の土地は記載されていません。

記載漏れが無いように市区町村役場で名寄帳を取得して記載するようにしましょう。

 

貸付事業用宅地の特例とは


今回は貸付事業用宅地について解説します。

貸付事業用宅地とは

貸付事業用宅地とは被相続人が貸付事業に利用している土地のことです。

貸付事業用宅地の特例を利用することで最大200㎡まで50%減額することができます。

被相続人が貸付事業用に利用していた土地と被相続人と生計を一にしていた者が貸付事業用に利用していた土地が貸付事業用宅地として特例を受けることができます。

 

貸付事業とは不動産貸付業やアパートの土地、駐車場などがあげられます。ただし、相続開始前3年以内に新たに貸付事業として利用されていた土地は特例を適用することができません。

 

土地はアパートなどを建てて賃貸に出すことで、貸家建付地評価となり、土地の評価を下げることができます。また、建物も固定資産税評価となり、建築費用よりもかなり低い評価となります。保有している土地に建物を建てることで収益性も上がり、相続税評価を下げることで、相続税の負担を下げることになります。本特例を活用することで、さらに相続税負担を減らすことができるでしょう。

 

居住用の不動産と貸付事業用の宅地

居住用の宅地と貸付事業用の宅地がある場合、どのように対応すればよいのでしょうか。併用する場合の計算方法について解説します。

自宅の面積が330㎡以上の場合は特定居住用宅地の特例から利用する

特定居住用宅地の特例は330㎡まで80%、貸付事業用宅地の特例は200㎡まで50%減額することができます。特定居住用宅地の特例で330㎡を適用した場合、貸付事業用宅地の特例を適用することができません。特定居住用宅地の特例の方が減額割合が大きいため、同じくらいの価格の土地であれば、特定居住用宅地の特例を利用する方が有利です。

自宅の面積が330㎡に満たない場合

自宅の面積が330㎡に満たない場合、特定居住用宅地の特例と貸付事業用宅地の特例を面積に応じて併用することができます。特定居住用宅地の特例を優先し、貸付事業用宅地の特例を利用する際の限度面積を計算する方法は以下の通りです。

特定居住用宅地の特例を利用する面積×200/330+貸付事業用宅地の特例で利用する面積≥200㎡

特定事業用宅地と特定居住用宅地の特例を利用する場合、完全に併用することができ、特定事業用宅地の400㎡と特定居住用宅地の330㎡あわせて730㎡まで適用することができます。

一方で、特定居住用宅地の特例と貸付事業用宅地の特例は完全に併用することができませんので注意が必要です。

計算方法や特例の適用要件は複雑ですので、税理士に相談するようにしましょう。

 

 

特定事業用宅地の特例とは

今回は特定事業用宅地について詳しく解説します。

 

特定事業用宅地とは


特定事業用宅地とは最大400㎡まで、80%評価を減額できる制度です。

被相続人が事業用に利用していた宅地で次のいずれかの条件を満たすものを指します。

①被相続人の事業用の宅地
被相続人の親族が相続により取得し、相続税の申告期限までその土地を保有し、事業を営んでいること

②被相続人と生計を一にする親族の事業用の宅地
事業を行なっていた生計を一にする親族が相続により取得し、相続税の申告期限まで保有し、事業を営んでいること


①の場合、取得者が被相続人の親族であること、②の場合は取得者がその事業を行なっていたものと生計を一にするものである必要があります。

事業用とは不動産貸付業や駐車場業、不動産の貸付などによって収入得ている土地のことです。

事業を転業・廃業した場合、この特例を利用することができません。一部転業した場合は転業部分以外が特例の対象となります。

 

特定同族会社事業用宅地

 

特定同族会社事業用宅地も最大400㎡まで80%減額することができます。ただし、特定事業用宅地と合計で400㎡までの適用となりますので、注意しましょう。
特定の同族会社とは相続開始直前に被相続人及び被相続人の親族の持株割合、出資割合が50%を超える法人のことです。

法人の事業の用に使われていた宅地とは特定同族会社に貸し付けられていた法人や法人の社宅として利用されていた宅地などが該当します。

取得者がその法人の役員であること、相続税の申告期限まで保有し、事業を営んでいることが要件となっています。

 


特定事業用宅地の特例・特定同族会社事業用宅地の特例を利用する際の注意点

特定事業用宅地の特例・特定同族会社事業用宅地の特例を利用する際の注意点について解説します。

要件が複雑


特定事業用宅地の特例・特定同族会社事業用宅地の特例は小規模宅地の特例の中でも複雑な要件が定められています。利用を検討する場合は税理士に相談するようにしましょう。

納税資金を確保する


土地や自社の株式などが被相続人の財産の大部分を占める場合、別途納税資金を確保する必要があります。相続人が相続税を払えるように、生命保険や生前贈与で現金を蓄えておく必要があります。

 

分割方法をあらかじめ決めておく


事業用の宅地や同族会社の株式を持つ場合、法定相続割合通りに分けることができないケースがほとんどです。相続発生後に配分について話し合うことは非常に難しいでしょう。
配分方法をあらかじめ決める場合は遺言書を作成することをお勧めします。公正証書の遺言は効力も強くスムーズに手続きを進めることができるでしょう。

 

特定居住用宅地の特例とは?

 

今回は前回に引き続き小規模宅地の特例について解説していきます。小規模宅地の特例を利用することで、相続税の負担を大きく減らすことができます。

 

その中でも特定居住用宅地の特例は最も利用されることが多い特例です。また、330㎡まで土地の評価が80%減額となる、効果も大きい特例です。

今回は特定居住用宅地の特例について詳しく解説します。

 

特定居住用宅地の特例を利用できる対象者

特定居住用宅地の特例はどのような方が相続する際に利用できるのでしょうか。詳しく解説していきます。

配偶者などの同居親族

配偶者などの同居親族が特定居住用宅地の特例を利用する場合、特に制限がなく利用できます。そのため、配偶者などのが相続する場合は問題なく特定居住用宅地の特例を利用できると考えてよいでしょう。

ただし、相続税の申告期限の日まで配偶者が住み続けていることが条件です。独り身となったことで、有料老人ホームに入居したり、子どもの家の近くに引っ越すと特例が利用できなくなりますので、注意しましょう。

子どもなどの別居親族

子どもなどの別居親族が相続する場合は以下の条件をすべて満たす必要があります。

・被相続人の配偶者が同居していない

・宅地を相続する親族が相続発生前3年以内に自己または自己の配偶者の持ち家に住んでいない。

・申告期限まで宅地を保有する

別居の親族が居住用宅地の特例を利用する場合は、上記をすべて満たす必要があります。特に相続発生前3年以内に自己または自己の配偶者が持ち家に住んだことがないといういわゆる「家無き子」が理由で特例を利用できないことが多くあります。本特例を利用するためには相続するまで、マイホームを購入しないなど注意する必要があります。

居住用宅地の特例の利用において注意が必要なケース

居住用宅地の特例の利用において注意が必要なケースについて解説します。

二世帯住宅に居住していたケース

二世帯住宅に居住していたケースでは区分所有の登記がされているか否かが特例利用可否に影響します。

二世帯住宅を区分所有の登記をして、親と子供で区分所有の登記をしていない場合であれば、本特例を利用することができます。しかし、親と子供でそれぞれ区分所有の登記をしている場合、本特例を利用できません。

有料老人ホームに入居していたケース

有料老人ホームに入居しているケースでも、被相続人が要介護・要支援などの認定を受けており、特定養護老人ホームなど老人福祉法等に規定される介護施設に入居している必要があります。

また、有料老人ホームに入居した後、自宅を他人に賃貸に出していた場合は本特例を利用することができません。

 

小規模宅地の特例とは

数ある相続関連の特例の中でも頻繁に利用されているのが小規模宅地の特例です。

ただし小規模宅地の特例の適用条件は非常に複雑で勘違いしている人も少なくありません。今回は小規模宅地の特例の全体像を解説します。

 

小規模宅地の特例は4つに分かれている

小規模宅地の特例は4つの分類に分けることができます。それぞれの概要を見ていきましょう。

 

特定居住用宅地の特例

特定居住用宅地の特例は被相続人が居住用に利用していた土地について最大330㎡まで配偶者や自宅を持たない子どもが相続した場合、80%減額できる制度です。

 

特定事業用宅地の特例・特定同族会社事業用宅地の特例

特定事業用宅地の特例は事業用の宅地について最大400㎡まで80%減額することができる制度です。事業用の宅地が400㎡を超える場合は、400㎡まで減額の適用を受けることができます。

特定事業用宅地の特例を利用するためには相続税の申告期限まで事業を継続している必要があります。また、事業用地に利用されている場合でも、建物が建っている必要がありますので、青空駐車場や資材置き場として利用している場合は適用できません。

 

特定同族会社事業用宅地の特例

特定同族会社事業用宅地の特例は被相続人と相続人の持ち株の合計が50%を超える場合かつ同族会社に貸し付けている場合に利用できる特例です。400㎡まで80%減額することができます。

特定同族会社事業用宅地の特例を利用するためには、特定事業用宅地の特例同様、相続税の申告期限まで事業を継続している必要があります。また、事業用地に利用されている場合でも、建物が建っている必要がありますので、青空駐車場や資材置き場として利用している場合は適用できません。

 

貸付事業用宅地の特例

貸付事業用宅地とは被相続人が貸付の事業のために使用している宅地のことです。相続税の申告期限まで保有し、貸付事業を継続していることが条件です。最大200㎡まで50%まで減額することができます。

 

小規模宅地の特例の併用について

小規模宅地の特例は併用して利用することができます。特定居住用宅地の330㎡と特定事業用宅地の特例または特定同族会社事業用宅地の特例の400㎡を両方適用する場合は合計で770㎡利用することができます。

一方で、特定居住用宅地と貸付事業用宅地の特例を利用する場合、限度面積を超えて併用することはできません。特定居住用宅地の特例の利用面積に余裕がある場合のみ利用することができます。特定居住用宅地の方が減額割合が大きいため、特定居住用宅地の特例を適用してから、余裕がある分について貸付事業用宅地の特例を利用します。特例を併用する場合は、計算が非常に複雑になるため、税理士に相談するようにしましょう。

不動産で相続税を納めることができる?

相続税は原則、現金一括で支払う必要がありますが、どうしても現金で納付することが難しい場合、現物で納付する物納という方法があります。今回は物納について解説していきます。

物納の対象となる財産

物納の対象となる財産と優先順位が決まっています。物納対象財産と優先順位は以下の通りです。

第1順位:不動産、船舶、国債、地方債、上場株式等

第2順位:非上場株式

第3順位:動産

物納をするまでの流れ

まず物納の流れについて解説します。物納は以下の手順で手続きを行います。

①物納する財産を選定する

物納する財産を前述の対象となる財産から選定します。優先順位が高いものから選定する必要があります。

②物納申請書と物納関係書類の作成

物納に必ず必要となる書類は物納申請書、金銭納付を困難とする理由書、物納財産目録の3つです。 相続税の申告期限である10ヶ月までに提出が難しい場合は物納手続関係書類提出期限延長届出書をあわせて提出する必要があります。書類が完成したら管轄の税務署に提出します。

③税務署による調査

不動産などの場合、現地調査などが行われます。残置物の撤去など整備が必要な場合、必要な措置を講じる必要があります。

④物納許可または却下

税務署による判断が行われて物納許可か却下されます。物納は必ずしも許可されるわけではありません。

物納のメリット

物納をすることで、物納許可限度額までは譲渡所得が非課税になります。 親から引き継いでいくらで購入したかわからない不動産は譲渡金額の5%しか取得価格として算入できないため、売却時の譲渡所得税の負担が大きくなります。 物納を選択することで、譲渡所得は免状されますので、売却してから現金で納付するよりも有利になる可能性があります。

物納のデメリット

物納にはどのようなメリットがあるのでしょうか。具体的に確認しておきましょう。

物納が許可されるまで利子税がかかる

物納の場合、納税期限から物納による所有権移転までの間利子税がかかります。審査に要した期間については利子税の免除期間となりますが、書類の整備などにかかった期間については利子税の対象期間となりますので迅速に手続きを進める必要があります。

必ず物納が認められるわけではない

物納の申請をしても必ず物納が認められるわけではありません。万が一物納が認められなかった場合、手間がかかるうえに、申告期限ギリギリになってしまい、資金を用意する必要が出る可能性がありますので、注意が必要です。 また、却下される可能性もありますので利子税がかかったものの、現金を用意して相続税を支払う必要が出てくる可能性もあります。

融資を受けたら相続税が安くなるって本当?

 

今回は相続税と借金の関係について解説したいと思います。

相続税が多くかかりそうな資産家の方には銀行が融資を受け、借金を作ることで相続税が安くなるという提案をすることがよくあります。

 

なぜ借金を作ると相続税が安くなるのでしょうか。

融資を受けることで相続税が安くなる仕組みとデメリットについて解説します。

 

融資を受けると相続税が安くなる仕組み

融資を受けることで、相続財産からマイナスすることができます。

 

例えば、1億円の借金があれば、相続財産から1億円をマイナスすることができます。

しかし、1億円の借金をしても1億円の現金が増えていたらプラスマイナスは0になります。

融資を受け、借金を作ることで相続税が安くなる理由は、融資を受けて現金から不動産に資産を組み替えるからです。

前回の記事「融資を受けたら相続税が安くなるって本当?」でも解説した通り、土地や建物は時価よりも安くなります。

融資を受けて規模を大きくすることで購入できる物件の規模が大きくなり、節税効果も大きくなるのです。

相続税評価が70%程度になる不動産の例で考えてみましょう。

 

ケース①

時価:5,000万円

相続税評価:3,500万円

現金支出額:5,000万円

融資:無し

 

ケース②

時価:1億円

相続税評価:7,000万円

現金支出額:5,000万円

融資:5,000万円

 

ケース①の場合、相続税評価は1,500万円下げることができます。一方でケース②の場合は相続税評価を3,000万円下げることができます。

同じ現金支出額でも、融資を受けることで、規模が大きくなり節税効果も大きくなるのです。融資を受けること自体が相続税対策になるのではなく、融資を受けて購入する不動産の規模を大きくすることで、相続税対策につながるのです。

 

融資を受けることのデメリット

融資を受けることで相続税評価を大きく下げることができますが、デメリットにも注意しておく必要があります。2つのデメリットについて解説します。

 

規模が大きくなることでリスクが大きくなる

不動産は価格変動があるため、リスクのある資産です。融資をうけて資産規模が大きくなれば、リスクもそれだけ大きくなります。

投資用の不動産であれば、節税効果よりも投資による損失の方が大きくなる可能性もありますので注意しましょう。

 

金利が上昇して負担が大きくなる可能性がある

融資を受けている場合に、リスクとして把握しておく必要があるのが金利の上昇です。

変動金利で融資を受けている場合、金利が上昇するとコストが大きく増える可能性があります。

現在は超低金利の状態が続いており、低金利での融資を受けることが可能ですが、この状態がいつまで続くかはわかりません。金利上昇に備えた余裕のある返済計画を立てることが重要です。