タワマン節税を考える③~タワマン節税の否認事例~

タワマン節税は非常に大きな圧縮高価がありますが、節税効果を税務署によって否認、最高裁まで争った結果税務署の判断は妥当であったという判決がでています。なぜ、税務署はタワマン節税を否認したのか解説します。

 

タワマン節税が否認されたケース

タワマン節税では国税局によって節税効果が否認されたケースがあります。

否認されたケースでは、金融機関からの借り入れによって13.8億円で取得した2つのタワマンを合計3.3億円と評価し、金融機関の借り入れ額と相殺し、評価0円としたケースです。

この例では税務署は相続人が3.3億円で評価したものを12.7億円と評価をし直し、追徴課税を請求しました。

相続人は追徴課税の取り消しを求めて訴えを起こしましたが、最高裁で相続人側が敗訴しています。

 

伝家の宝刀「財産評価基本通達第1章総則6項」

タワマン節税が否認された理由としては最高裁が伝家の宝刀といわれる財産評価基本通達第1章総則6項(以下総則6項)を認めたからだといわれています。

総則6項には以下の通り記載があります。

「この通達の定めによって評価をすることが著しく不適当と認められる財産の価額は、国税庁長官の指示を受けて評価する」

つまり、財産評価基本通達の評価方法が不適当であると国税庁長官が認めた場合、国税庁長官が決めた評価額で納税を行うというものです。

今回のケースではタワマンの原則的な評価方法である路線価と固定資産税評価で評価を行った場合、相続税が0円になるということが「著しく不適当」と判断され、評価額の見直しが命じられたのです。

この裁判では伝家の宝刀といわれ、今まで適用されていなかった総則6項を裁判所が認めたということになります。

 

節税対策の「やり過ぎ」が原因

タワーマンションは原則、財産評価基本通達に基づいて路線価と固定資産税評価額で相続時評価を行います。他のケースではこの評価方法が否認されることはほとんどありません。

今回紹介した、国税局に否認された理由は「やり過ぎ」が原因だといわれています。

否認された事例では10億円を超えるタワマンを銀行借り入れと相殺し、評価0で申告を行っています。これが認められるのであれば、すべての資産家がタワマン節税を無限に行うことによって相続税を0にすることができてしまいます。

最高裁は伝家の宝刀といわれる総則6項がどのような場合に適用されるかは明らかにされませんでしたが、「やり過ぎ」が原因となっているのは間違えないでしょう。

タワマン節税を考える②~タワマン節税のメリットとデメリット~

今回はタワマン節税のメリットとデメリットについて解説します。

 

タワマン節税のメリット

タワマン節税にはどのようなメリットがあるのでしょうか。具体的に確認しておきましょう。

相続税の圧縮高価が高い

タワマン節税を選択する人の多くが資産家の方で、財産を大きく圧縮することができるという理由でタワマン節税を行っています。タワマン節税は他の節税策と比べても圧縮高価が非常に高いことが最大のメリットといえるでしょう。

時間がかからない

相続税対策には毎年暦年贈与を行うなど、時間がかかるものも多くあります。タワマン節税は時間をかけずにできる節税対策です。

資産価値が高いものを遺すことができる

タワマンは都心の駅近などにあり、資産価値としても非常に高いものです。自分で利用するとしても他人に貸すとしても高い家賃を設定することができるでしょう。資産価値の高いものを遺すことができるというメリットは大きいものです。

 

タワマン節税のデメリット

タワマン節税にはメリットも多いものの、デメリットもあります。デメリットもしっかり理解して行う必要がありますので、具体的に確認しておきましょう。

投資用として購入する場合リスクがある

投資用として不動産を購入する場合、さまざまなリスクがあります。最も起こる可能性が高いのが空室リスクです。購入時は築浅の人気物件でもだんだん老朽化が進むにつれて周辺の新しいマンションに見劣りすることになります。

空室を避けるために賃料を下げざるを得ない可能性もあり、思うように収益を得られない可能性があります。

災害等に巻き込まれる可能性がある

不動産投資では火事や天変地異などの災害に巻き込まれて資産価値が大きく目減りする可能性があります。また、中で人で亡くなった場合などは事故物件として大きく評価を下げる可能性があります。

管理費・修繕積立金などのランニングコストがかかる

マンションを保有すると管理費・修繕積立金などのランニングコストがかかります。賃料として収入を得られている場合は、相殺することができますが、空室になってしまうと単純にコストになってしまいます。また、タワマンの修繕積立金は購入時よりも高くなっていくことがあります。

超高層のタワマンの大規模修繕はまだ経験が少ないため、どれくらいの費用がかかるのか、正確に見積もることができていません。そのため、将来大規模修繕の目前になって修繕積立金が高騰する可能性もあります。

タワマン節税を考える①~タワマン節税の仕組みを解説~

相続税対策には様々な方法があります。

相続税対策を検討している人の中には「タワマン節税」という言葉を聞いたことがある方も多いのではないでしょうか。今回は効果も大きく即効性があるタワマン節税について解説します。

タワマン節税とは

タワマン節税とはタワーマンションの時価と相続税評価の差分を利用した節税策です。タワマン節税の解説をする前に不動産の相続税評価について解説します。

不動産の相続税評価は土地は路線価で計算を行います。土地は一般的に時価の7~8割程度の評価額になるといわれています。一方の建物は固定資産税評価額で計算を行います。建物は一般的に時価の5割~7割くらいの評価額になるといわれています。

マンションの場合、建物の床面積に応じて土地も保有していることになりますので、戸建てよりも土地の割合が少なく、建物の割合が大きくなります。

先ほどご説明した通り、土地よりも建物の方が時価との差が大きいため、マンションを保有することで一戸建てを購入するよりも相続税の節税効果が大きいのです。

マンションの中でも節税効果が大きいのが高層のタワーマンション、いわゆる「タワマン」です。

タワマンは超高層の建物ですので、土地の割合が通常のマンションに比べてもかなり小さくなります。また、上の階に行けば行くほど眺望がよく、人気がありますので時価評価額は高くなります。一方で相続税評価については低層階と高層階で同じ評価になりますので、高層階に行けば行くほど相続税評価との差額が大きくなる仕組みになっています。

都心のタワーマンションは1億円を超えるものも多くありますが、相続税評価は2割~3割になることも多く、相続財産の圧縮効果が高いため、資産家の方にとって人気の節税策となっています。

 

投資用として購入する人も多い

いくらタワマンを持つことで節税になるといっても住み慣れた今の自宅を離れたくない方やマンションの高層階に住むのは避けたいと考える方も多いでしょう。そのような場合は投資用として保有する人も多くいます。都心のタワマンは夫婦共働きで収入が多いパワーカップルなどから人気があり、賃貸需要も旺盛です。

タワマンを投資用不動産として購入し、人に貸すことで、収益を得ることも可能です。毎月の賃料収入を得ることで、年金の足しにすることができますし、さらに相続税対策を進めるのであれば、不動産から得た収益を子や孫に贈与をしていってもよいでしょう。

不動産を共有で相続する場合の注意点

相続が発生すると悲しみに暮れる暇もなく、さまざまな手続きを期限内に終わらせる必要があります。

その中でも特に時間がかかるのが遺産分割協議でしょう。特に不動産がある場合は、誰か一人が相続すると配分に不公平が生じることがあります。その場合、持ち分均等で共有にしようと考える方も多いでしょう。しかし、共有にすると様々な問題点も発生しますので注意が必要です。

不動産の共有とは

不動産の共有とは不動産を単独で所有するのではなく、複数の人で共有で保有することです。共有で保有する場合は、持ち分が決められており、権利・義務はその持ち分に応じて発生することになります。

例えば、持ち分が

A:10分の5
B:10分の3
C:10分の2

となっている場合、不動産から生じる収益は持ち分に応じて受け取ることになりますし、固定資産税などの費用も持ち分に応じて支払うことになります。

 

不動産を共有する際の注意点

遺産分割協議の際には均等に配分できるため、便利に感じる不動産の共有ですが、不動産の共有をすることで、さまざまな課題が発生します。不動産を共有する際の注意点について解説します。

意思決定が難しい

不動産を保有しているとさまざまな意思決定が必要になります。例えば、売却をするべきか否か、収益アパートであれば、修繕をいつするのか、どの程度の規模で行うのか、など重大な決定事項が多くあります。

単独で所有している不動産であれば、一人で決めることができますが複数で共有している場合は意見が分かれる可能性もあります。共有の場合、全員で合意をしなければいけませんので、意思決定が非常に難しくなります。

義務の範囲が難しい

先ほど、持ち分に応じて義務が発生すると説明をしましたが、実際には義務の範囲を決めることは非常にむずかしいことです。収益や固定資産税など明確に分けられるものについては持ち分に応じて分けることが可能ですが、不動産周辺の草刈りや掃除、人に貸している不動産であれば、賃借人からの依頼への対応などさまざまな業務が発生します。

通常は持ち分の多い人や近くに住んでいる人にこのような負担は偏りがちです。そのため、負担が偏っている人は負担が大きいため、売却したいと考えていても共有で持っている人は特に負担がなく収益が入ってくるため、売却したくないと考えるケースも多くあります。

このように持ち分に応じて負担をするということは実は簡単ではないということも認識して共有する必要があります。

共有となっている不動産を相続する際の注意点

駐車場や収益物件などの不動産を相続する際に、共有となっており、相続する分は持ち分の一部となる場合があります。このようなケースではどのような点に注意をしないといけないのでしょうか。

不動産が共有となっているケースとは

まずは不動産が共有となっているケースとはどのようなケースが考えられるのか解説していきます。

最もケースとして多いのが親の代から引き継いだ不動産をその子が共有で相続し、さらにその子どもが共有するようなケースでしょう。

このようなケースでは相続した子どもは叔父や叔母もしくは叔父や叔母が亡くなっていた場合、いとこと共有することになります。

共有で不動産を相続する場合の問題点

先ほどのケースでは共有する人は最初は兄弟ですが、その後は叔父・叔母、いとこなどどんどん縁遠くなっていきます。また、人数もどんどん増えていく可能性があります。

例えば、3人の兄弟で共有で相続し、その後その子ども二人ずつで共有した場合、6人で不動産を共有することになります。

不動産を売買する際や建て替えをする際は共有者全員で同意する必要があります。人数が多く、縁遠くなってくると話し合いで方向性を決めることも難しくなってしまいます。共有不動産は結果として折り合いがつかず何もできなくなってしまう可能性も高いのです。

共有となっている不動産を相続する場合の対処法

共有となっている不動産を相続する場合は、まず誰と共有となっているか確認をし、方向性について話し合うことが重要です。共有者が全員が売却を希望する場合は早めに売却手続きを進めた方がよいでしょう。

特に共有者の中に高齢の方がいる場合は相続が発生して共有者が代わったり、意思能力が低下して売買ができなくなる恐れがありますので、早めに対応することが重要です。

保有し続けたい人と売却したい人で意向が分かれた場合、保有を継続したい側に売却したい側の持ち分を売却することも考えられます。親族間で売買をすることで、共有を解消し、一人がすべての持ち分を保有することが可能です。

話し合いによって方向感を見いだせないときも、今回の相続でさらに共有者を増やすことはやめたほうがよいでしょう。とりあえず解決しないから兄弟で持ち分をさらに分割して共有しておこうと考える方も多いと思いますが、共有する人が増えれば増えるほど、考え方も異なる方が出てくる可能性が高くなります。

不動産についてはなるべく一人が相続した方がよいでしょう。

不動産のみ記載する内容の遺言を書く際の注意点

前回の記事でもご紹介した通り、不動産のみ記載する遺言を書くことは可能です。しかし、不動産のみ記載する遺言を書く際は注意点も多くあります。不動産のみ記載する遺言を書く際の注意点について解説します。

不動産のみ記載する遺言書を作成する場合の注意点

不動案のみ記載する遺言書を作成する場合はどのような点に注意すればよいのでしょうか。

不動産以外の財産の割合でトラブルになることがある

不動産のみ記載する遺言書を作成した場合、不動産以外の財産は遺産分割協議によって誰が相続するかを決めることになります。不動産を取得していない人としては預金など現金を多く相続することを主張することが考えられます。

不動産を除いて現金を等分にわけるべきなのか、不動産を取得した分を加味して、不動産をもらった人は現金を少なくするべきかというのは正解がありません。被相続人が事前に遺言書に記しておけば、相続人も納得する可能性が高いですが、お互いに話し合って決めても納得できないことも多いでしょう。

不動産のみ指定することでかえって他の財産を誰が引き継ぐのかトラブルになることも考えられますので、注意が必要です。

納税資金不足になる可能性がある

不動産は財産として価値があるため、相続税の対象となりますが、不動産を相続してもすぐに現金を得られるわけではありません。そのため、相続した財産だけでは納税資金不足となり、自分のお金で税金を支払う必要が出てくる可能性があります。

価値のある複数の不動産を一人に遺した場合、多額の納税が必要となる可能性がありますので、相続税をどれくらい払う必要があるのか把握して配分を決めるようにしましょう。

相続税の計算はすべての財産の評価を行う必要があり、非常に複雑な作業です。税理士など専門家に相談して間違えないようにしておきましょう。

また、不動産を維持するためには固定資産税や建物のメンテナンス費用などもかかります。納税資金だけでなく、ある程度の運営資金も残しておくようにしましょう。

遺言書を書く際は全財産を書く方が良い

法律上は不動産のみ記載する遺言書は有効です。しかし、預金など他の財産の遺し方も決めておかないと相続人間でトラブルになったり、納税資金不足になったりとさまざまな問題が発生します。相続人間でのトラブルを避けるために作成した遺言でかえってトラブルになってしまうこともあり得ます。

不動産のみ記載する遺言を作成することも可能ですが、できればすべての財産を記載した遺言書を作成するほうがよいでしょう。

不動産のみ記載する遺言を書くことを可能?

遺言書を作成しておくことで、自分が亡くなった後、誰に財産を遺すか決めておくことができます。

不動産を保有している人の中には代々引き継いだ資産である不動産だけ残す人を決めておきたいという人もいるでしょう。今回は不動産のみ記載する遺言について解説します。

不動産のみ記載する遺言書を作ることは可能

結論から言うと不動産のみ記載する遺言書を作ることは可能です。遺言書はすべての財産について記載する必要はありません。記載した財産のみ効力を生じることになります。

不動産を複数保有している場合はそれぞれ受け取る人を指定することができます。例えば、自宅と駐車場とアパートがある場合、配偶者に自宅、長男に駐車場、長女にアパートを遺すということも可能です。

不動産のみ記載する遺言の作成方法

不動産のみ記載する遺言を書く際も通常の遺言の作成方法と大きな違いはありません。

遺言には自筆証書遺言と公正証書遺言があります。自筆証書遺言とは自分で自宅で作成する遺言です。自分で作成するため、費用などはかからず簡単に書き換えることも可能です。ただし、形式的な不備がある可能性もあるため、法律上有効な遺言となるかどうかは亡くなったあとにしかわかりません。

一方の公正証書遺言は公証役場で公証人に依頼して作成してもらう遺言です。作成時に公証役場に費用を支払う必要がありますが、作成時に有効な遺言として確実に残すことが可能です。

自筆証書遺言の場合も公正証書遺言の場合も不動産の登記を確認して、正確な地番を書くことが重要です。

例えば、「自宅不動産を長男に遺す」という遺言があったとしても自宅不動産とはどこまでを指すのかがあいまいな場合があります。自宅には土地と建物がありますし、自宅前の私道や隣接している駐車場が文筆されているケース、敷地内に物置など別の建物が建っているケースもあるでしょう。

登記簿上に記されている地番を正確に記載しておかなければトラブルになる可能性があります。

自分が保有している不動産を把握するためには名寄帳を確認するのが便利です。名寄帳とは地方税法第387条1項に基づいて作成されている市区町村ごとにその人が保有している不動産の一覧です。名寄帳には所在や評価額が記されており、自分が保有している不動産の一覧が掲載されています。

固定資産税を納付する際に届く納税通知書でも保有不動産を一覧で確認することができますか、税金を支払う義務が発生していない私道等の土地は記載されていません。

記載漏れが無いように市区町村役場で名寄帳を取得して記載するようにしましょう。

 

貸付事業用宅地の特例とは


今回は貸付事業用宅地について解説します。

貸付事業用宅地とは

貸付事業用宅地とは被相続人が貸付事業に利用している土地のことです。

貸付事業用宅地の特例を利用することで最大200㎡まで50%減額することができます。

被相続人が貸付事業用に利用していた土地と被相続人と生計を一にしていた者が貸付事業用に利用していた土地が貸付事業用宅地として特例を受けることができます。

 

貸付事業とは不動産貸付業やアパートの土地、駐車場などがあげられます。ただし、相続開始前3年以内に新たに貸付事業として利用されていた土地は特例を適用することができません。

 

土地はアパートなどを建てて賃貸に出すことで、貸家建付地評価となり、土地の評価を下げることができます。また、建物も固定資産税評価となり、建築費用よりもかなり低い評価となります。保有している土地に建物を建てることで収益性も上がり、相続税評価を下げることで、相続税の負担を下げることになります。本特例を活用することで、さらに相続税負担を減らすことができるでしょう。

 

居住用の不動産と貸付事業用の宅地

居住用の宅地と貸付事業用の宅地がある場合、どのように対応すればよいのでしょうか。併用する場合の計算方法について解説します。

自宅の面積が330㎡以上の場合は特定居住用宅地の特例から利用する

特定居住用宅地の特例は330㎡まで80%、貸付事業用宅地の特例は200㎡まで50%減額することができます。特定居住用宅地の特例で330㎡を適用した場合、貸付事業用宅地の特例を適用することができません。特定居住用宅地の特例の方が減額割合が大きいため、同じくらいの価格の土地であれば、特定居住用宅地の特例を利用する方が有利です。

自宅の面積が330㎡に満たない場合

自宅の面積が330㎡に満たない場合、特定居住用宅地の特例と貸付事業用宅地の特例を面積に応じて併用することができます。特定居住用宅地の特例を優先し、貸付事業用宅地の特例を利用する際の限度面積を計算する方法は以下の通りです。

特定居住用宅地の特例を利用する面積×200/330+貸付事業用宅地の特例で利用する面積≥200㎡

特定事業用宅地と特定居住用宅地の特例を利用する場合、完全に併用することができ、特定事業用宅地の400㎡と特定居住用宅地の330㎡あわせて730㎡まで適用することができます。

一方で、特定居住用宅地の特例と貸付事業用宅地の特例は完全に併用することができませんので注意が必要です。

計算方法や特例の適用要件は複雑ですので、税理士に相談するようにしましょう。

 

 

特定事業用宅地の特例とは

今回は特定事業用宅地について詳しく解説します。

 

特定事業用宅地とは


特定事業用宅地とは最大400㎡まで、80%評価を減額できる制度です。

被相続人が事業用に利用していた宅地で次のいずれかの条件を満たすものを指します。

①被相続人の事業用の宅地
被相続人の親族が相続により取得し、相続税の申告期限までその土地を保有し、事業を営んでいること

②被相続人と生計を一にする親族の事業用の宅地
事業を行なっていた生計を一にする親族が相続により取得し、相続税の申告期限まで保有し、事業を営んでいること


①の場合、取得者が被相続人の親族であること、②の場合は取得者がその事業を行なっていたものと生計を一にするものである必要があります。

事業用とは不動産貸付業や駐車場業、不動産の貸付などによって収入得ている土地のことです。

事業を転業・廃業した場合、この特例を利用することができません。一部転業した場合は転業部分以外が特例の対象となります。

 

特定同族会社事業用宅地

 

特定同族会社事業用宅地も最大400㎡まで80%減額することができます。ただし、特定事業用宅地と合計で400㎡までの適用となりますので、注意しましょう。
特定の同族会社とは相続開始直前に被相続人及び被相続人の親族の持株割合、出資割合が50%を超える法人のことです。

法人の事業の用に使われていた宅地とは特定同族会社に貸し付けられていた法人や法人の社宅として利用されていた宅地などが該当します。

取得者がその法人の役員であること、相続税の申告期限まで保有し、事業を営んでいることが要件となっています。

 


特定事業用宅地の特例・特定同族会社事業用宅地の特例を利用する際の注意点

特定事業用宅地の特例・特定同族会社事業用宅地の特例を利用する際の注意点について解説します。

要件が複雑


特定事業用宅地の特例・特定同族会社事業用宅地の特例は小規模宅地の特例の中でも複雑な要件が定められています。利用を検討する場合は税理士に相談するようにしましょう。

納税資金を確保する


土地や自社の株式などが被相続人の財産の大部分を占める場合、別途納税資金を確保する必要があります。相続人が相続税を払えるように、生命保険や生前贈与で現金を蓄えておく必要があります。

 

分割方法をあらかじめ決めておく


事業用の宅地や同族会社の株式を持つ場合、法定相続割合通りに分けることができないケースがほとんどです。相続発生後に配分について話し合うことは非常に難しいでしょう。
配分方法をあらかじめ決める場合は遺言書を作成することをお勧めします。公正証書の遺言は効力も強くスムーズに手続きを進めることができるでしょう。

 

特定居住用宅地の特例とは?

 

今回は前回に引き続き小規模宅地の特例について解説していきます。小規模宅地の特例を利用することで、相続税の負担を大きく減らすことができます。

 

その中でも特定居住用宅地の特例は最も利用されることが多い特例です。また、330㎡まで土地の評価が80%減額となる、効果も大きい特例です。

今回は特定居住用宅地の特例について詳しく解説します。

 

特定居住用宅地の特例を利用できる対象者

特定居住用宅地の特例はどのような方が相続する際に利用できるのでしょうか。詳しく解説していきます。

配偶者などの同居親族

配偶者などの同居親族が特定居住用宅地の特例を利用する場合、特に制限がなく利用できます。そのため、配偶者などのが相続する場合は問題なく特定居住用宅地の特例を利用できると考えてよいでしょう。

ただし、相続税の申告期限の日まで配偶者が住み続けていることが条件です。独り身となったことで、有料老人ホームに入居したり、子どもの家の近くに引っ越すと特例が利用できなくなりますので、注意しましょう。

子どもなどの別居親族

子どもなどの別居親族が相続する場合は以下の条件をすべて満たす必要があります。

・被相続人の配偶者が同居していない

・宅地を相続する親族が相続発生前3年以内に自己または自己の配偶者の持ち家に住んでいない。

・申告期限まで宅地を保有する

別居の親族が居住用宅地の特例を利用する場合は、上記をすべて満たす必要があります。特に相続発生前3年以内に自己または自己の配偶者が持ち家に住んだことがないといういわゆる「家無き子」が理由で特例を利用できないことが多くあります。本特例を利用するためには相続するまで、マイホームを購入しないなど注意する必要があります。

居住用宅地の特例の利用において注意が必要なケース

居住用宅地の特例の利用において注意が必要なケースについて解説します。

二世帯住宅に居住していたケース

二世帯住宅に居住していたケースでは区分所有の登記がされているか否かが特例利用可否に影響します。

二世帯住宅を区分所有の登記をして、親と子供で区分所有の登記をしていない場合であれば、本特例を利用することができます。しかし、親と子供でそれぞれ区分所有の登記をしている場合、本特例を利用できません。

有料老人ホームに入居していたケース

有料老人ホームに入居しているケースでも、被相続人が要介護・要支援などの認定を受けており、特定養護老人ホームなど老人福祉法等に規定される介護施設に入居している必要があります。

また、有料老人ホームに入居した後、自宅を他人に賃貸に出していた場合は本特例を利用することができません。

 

小規模宅地の特例とは

数ある相続関連の特例の中でも頻繁に利用されているのが小規模宅地の特例です。

ただし小規模宅地の特例の適用条件は非常に複雑で勘違いしている人も少なくありません。今回は小規模宅地の特例の全体像を解説します。

 

小規模宅地の特例は4つに分かれている

小規模宅地の特例は4つの分類に分けることができます。それぞれの概要を見ていきましょう。

 

特定居住用宅地の特例

特定居住用宅地の特例は被相続人が居住用に利用していた土地について最大330㎡まで配偶者や自宅を持たない子どもが相続した場合、80%減額できる制度です。

 

特定事業用宅地の特例・特定同族会社事業用宅地の特例

特定事業用宅地の特例は事業用の宅地について最大400㎡まで80%減額することができる制度です。事業用の宅地が400㎡を超える場合は、400㎡まで減額の適用を受けることができます。

特定事業用宅地の特例を利用するためには相続税の申告期限まで事業を継続している必要があります。また、事業用地に利用されている場合でも、建物が建っている必要がありますので、青空駐車場や資材置き場として利用している場合は適用できません。

 

特定同族会社事業用宅地の特例

特定同族会社事業用宅地の特例は被相続人と相続人の持ち株の合計が50%を超える場合かつ同族会社に貸し付けている場合に利用できる特例です。400㎡まで80%減額することができます。

特定同族会社事業用宅地の特例を利用するためには、特定事業用宅地の特例同様、相続税の申告期限まで事業を継続している必要があります。また、事業用地に利用されている場合でも、建物が建っている必要がありますので、青空駐車場や資材置き場として利用している場合は適用できません。

 

貸付事業用宅地の特例

貸付事業用宅地とは被相続人が貸付の事業のために使用している宅地のことです。相続税の申告期限まで保有し、貸付事業を継続していることが条件です。最大200㎡まで50%まで減額することができます。

 

小規模宅地の特例の併用について

小規模宅地の特例は併用して利用することができます。特定居住用宅地の330㎡と特定事業用宅地の特例または特定同族会社事業用宅地の特例の400㎡を両方適用する場合は合計で770㎡利用することができます。

一方で、特定居住用宅地と貸付事業用宅地の特例を利用する場合、限度面積を超えて併用することはできません。特定居住用宅地の特例の利用面積に余裕がある場合のみ利用することができます。特定居住用宅地の方が減額割合が大きいため、特定居住用宅地の特例を適用してから、余裕がある分について貸付事業用宅地の特例を利用します。特例を併用する場合は、計算が非常に複雑になるため、税理士に相談するようにしましょう。