戸籍の見方(郵送請求)

身近な方が亡くなって相続が始まると、故人や相続人の戸籍が必要になります。

 

現在の相続で一般的に見られる戸籍は、大正4年式戸籍から始まるケースが多く、その後に戸籍制度が複数回改正されています。

 

このため、昭和32年頃までに出生した方の場合は、出生から死亡までを確認するためには、4種類から5種類になるケースが多いと言えます。

 

すべて近くの市区町村で取得できれば良いのですが、他県への転居や転籍などがあれば、複数の自治体から戸籍を取得しなければなりません。

 

このような場合に役立つのが、戸籍の郵送請求です。

 

各市区町村によって異なる部分もありますが、ほぼ同様の郵送請求手続きによって、1週間から10日程度で戸籍が取得できます。

 

一般的には利用する機会が少ないものの、相続手続きなどで戸籍が必要な場合には、とても便利な方法です。

 

請求できる人

 

戸籍には、最新の戸籍以外に、除籍や改正原戸籍、戸籍の附票などがあり、それぞれに請求できる人が定められています。

 

故人のプライバシーに関わる請求ですから、請求できる人は厳格に定められているものの、委任状があれば第三者でも取得可能です。

 

単純に言えば、請求者からみて、配偶者や子、孫、父母、祖父母が記載されている戸籍や附票であれば、「本人など」として請求できます

 

戸籍

 

最新の戸籍や除籍、改製原戸籍については、次のように定められています。

 

本人など

 

戸籍法第10条による「本人等」からの請求です。

本人以外では、戸籍に記載されている配偶者や親(直系尊属)、子、孫(直系卑属)が請求できます。

 

なお、兄弟姉妹は、婚姻などで戸籍が別の場合は請求できず、第三者としての請求手続きが必要で、通常、委任状が必要となります。

 

また、取得しようとする戸籍から、このような親族関係が確認できない場合は、別途、すでに取得している戸籍などの写しを提出する必要があります。

 

第三者

 

戸籍上の配偶者、親や子孫などの「本人など」に該当しない場合は、すべて第三者として請求する手続きが必要です。

 

プライバシー保護のため、第三者からの請求については厳格な審査があり、適切な請求理由を明らかにする必要があります。

 

戸籍の附票の写し

 

戸籍の附票の写し、または戸籍の附票の除票の写しを請求できる方は、次のように定められています。

 

それぞれに記載されている本人以外では、そこに記載されている配偶者や直系尊属、直系尊属に限られます。

 

なお、取得しようとする写しで、このような親族関係が確認できない場合は、別途、すでに取得している戸籍の写しなどを提出する必要があります。

 

また、代理人も請求できますが、この場合は委任状が必要で、戸籍の第三者請求と同様、適切な請求理由を明らかにする必要があります。

 

使いみち

 

この記述は、戸籍などを過不足がないように返送してもらうために、とても重要な部分です。 

 

自己の権利行使または自己の義務履行の場合

 

この場合は、権利または義務の発生原因に加え、その内容や、戸籍の記載事項を確認する必要がある理由を明らかにしなければなりません。

 

国または地方公共団体の機関に提出する必要がある場合

 

この場合は、戸籍謄本などを提出する具体的な理由を、明らかにしなければなりません。

   

請求方法

 

市区町村それぞれのホームページで、郵送による請求方法について紹介されていますが、一般的なやり方について紹介します。

 

なお、送付先住所や、市区町村独自の規定など、詳細についてはそれぞれのホームページを確認してください。

 

必要書類を同封して郵送

 

請求時には、封筒に「請求書」「本人確認(返送先確認)書類の写し」「手数料」「切手を貼付した返信用封筒」の4種類を同封して、各市区町村の郵送請求窓口に郵送します。

 

一般的に、郵便局に依頼するか、ポストに投函してから戸籍が届くまでに、1週間から10日程度かかります。

 

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郵送による請求方法

 

 請求書

 

郵送用の「戸籍証明書等請求書」がPDFなどで提供されていることが一般的ですが、ダウンロードできない場合は、以下の内容を便せんなどに明記します。

 

1 本籍

2 筆頭者の氏名、生年月日

3 証明書の種類(個人事項証明書、抄本、身分証明書、附票が必要な場合は、必要な方の名前)

4 通数

5 使いみち(請求理由)

5 請求者の住所、氏名、筆頭者との関係、昼間連絡の取れる電話番号

 

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戸籍証明書等請求書(郵送用)

 

本人確認(兼・返送先確認)書類の写し

 

請求者の本人確認用と、返送先の確認用を兼ねて、運転免許証やマイナンバーカード、健康保険証などのコピーを同封します。

 

なお、コピーの際に、現住所と氏名の記載のある部分が含まれている必要があることに注意が必要です。

 

手数料

 

郵送請求に必要な手数料の合計金額分を、郵便局で「定額小為替」を購入して同封します。

 

なお、定額小為替には、住所や氏名の記載欄などがありますが、何も記入してはいけません。

 

また、定額小為替1枚について100円の手数料がかかり、発行日から6ヶ月以内のものでなければなりません。

 

市区町村によっては、定額小為替以外にも、普通為替や現金書留による納付を受け付けていることもあります。

 

・一般的な1通当たり「手数料」

 

一般的に、戸籍謄本などの1通あたり手数料は、全部事項証明書(戸籍謄本)や個人事項証明書(戸籍抄本)では450円です。

 

また、除籍全部事項証明書(除籍謄本)や除籍個人事項証明書(除籍抄本)、改製原戸籍謄本、改製原戸籍抄本では、750円です。

 

一方、戸籍の附票の写しや戸籍の附票の除票の写しなどは、300円です。

 

ちなみに、一般的な相続で必要な戸籍を1セット請求する場合は、手数料で4,000円から5,000円程度かかります。

 

切手を貼付した返信用封筒

 

封筒に記入する返送先は、原則として請求者の住所登録地(現住所)を記入しておきます。

 

戸籍などが返信される時の重さを考慮して、重さ制限までに少しゆとりがあるような金額の返信用切手を貼付した、返信用封筒を同封します。

 

返信用の切手代が料金不足の場合は、あらためて不足額が請求されることになり、それまで発送されないことになってしまいます。

 

なお、利用できるかどうか、事前に市区町村に確認する必要がありますが、特定記録郵便やレターパックを利用すると、配達状況が確認でき安心です。

 

その他、必要に応じて必要な書類

 

第三者からの申請の場合は、委任状が必要です。

 

なお、委任状をパソコンで作成する場合でも、本籍や筆頭者名、委任者の氏名については、必ず委任者が自署しなければなりません。

 

全文をパソコンで作成した委任状は、受付されないことがあるため注意が必要です。

 

また、請求先の市区町村で、戸籍請求者と対象者の親族関係が分かる戸籍がない場合は、あらかじめ戸籍謄本を取得して、提出する必要があります。

 

郵送請求の注意点

 

死亡届を本籍地以外の市区町村に提出した場合、亡くなった方の戸籍に反映されるまで、長い場合でおよそ2週間程度かかります。

 

このため、その期間内に郵送請求する場合は、請求書に、死亡日と届出日、届けた市区町村名を記入しておくと、スムーズな事務処理が期待できます。

 

また、金融機関での相続手続きなどの場合は、金融機関に提出する書類も同封しておくと、取得する戸籍などに過不足が生じにくくなります。

 

いずれにしても、同封する「請求書」に、できるかぎり具体的に記入しておくことがおすすめです。

 

まとめ

 

戸籍を偽りや不正な手段によって取得した場合は、30万円以下の罰金が科される刑罰がありますから、適正に請求することが重要です。

 

なお、戦時の空襲や震災などによって戸籍が消失しているような場合は、「告知書」を取得することができます。

 

告知書は、このような状況で連続する戸籍が取得できない場合に、消失が証明されることによって、間接的に戸籍が連続するであろうことが証明されるものです。

 

郵送請求は相続に係る労力や期間を短縮でき、たいへん便利な制度ですが、不安がある場合は、最寄りの市区町村や専門家などに相談することをおすすすめします。

戸籍の見方(大正4年式戸籍)

戸籍は、時代とともに制度が変わり、そのたびに戸籍に記載する内容や様式、項目などが変化してきました。

 

現在の戸籍はコンピュータ化されているため、シンプルで読みやすいのに対し、一般的な相続で見る機会が多い大正4年式戸籍は、ある程度の知識や経験が必要です。

 

なぜなら、当時は「家」を単位とする戸籍であり、戸籍に書かれる内容が現在とは異なっていたからです。

 

また、小さな手書き文字で書かれていたこともあって、毛筆文字がかすれていたり、読み取りにくい状態になっていることも、その原因です。

 

手書き文字の読み取り方は別として、大正4年式戸籍の見方を知っておくと、相続で取り寄せた戸籍を読む際に役立ちます。

 

戸籍には何が書かれている?

 

戸籍は、被相続人や相続人との関係を証明することができ、相続には不可欠な書類ですが、何が書かれているのでしょうか?

 

戸籍には、「本籍」「戸籍の筆頭者の氏名」「戸籍事項」「戸籍に記録されている者」「身分事項」が記載されています。

 

「戸籍事項」は、戸籍を作った理由や転籍先、戸籍の閉鎖(消除)などが、日付と共に記録され、いつからいつまでの戸籍か分かります。

 

「戸籍に記録されている者」には、氏名や生年月日、父母や養父母の氏名、父母や養父母との続柄が記載されています。

 

「身分事項」には、それぞれの出生や養子縁組、婚姻、離婚、認知、死亡などの身分関係の変化が記録されています。

 

この身分事項を確認すると、その戸籍にいつからいつまで在籍していたかを知ることができます。

 

戸籍制度の変遷

 

戸籍制度は、本籍や、夫婦や親子など親族の身分関係、婚姻、離婚、縁組、離縁など、人との身分関係の形成や消滅を記録して、証明する制度です

 

現代の戸籍制度は、明治5年に始まり、その後、明治19年、同31年、大正4年、昭和23年、平成6年と制度が変わり、6種類の戸籍があります。

 

なお、昭和23頃までに生まれた方は、大正4年式戸籍がスタートとなるため、現在の一般的な相続では、この戸籍を見る機会が多くなります。

 

一方、出生が記録された戸籍は、一般的に、死亡までの間に婚姻や転籍などによって除籍や消除され、その都度、新たな戸籍が編成されます。

 

また、婚姻や転籍など、本人に新たな戸籍を作る原因がない場合でも、制度改正があれば、新たな戸籍が「編成」されます。

 

したがって、相続で出生から死亡までの戸籍を揃える場合は、このような戸籍の編成や消除があるため、数種類の戸籍を取得することになるのです。

 

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戸籍制度の変遷

 

大正4年式戸籍の特徴

 

この時代の戸籍は、現在のような夫婦単位ではなく、戸主を筆頭者とする「家」単位で作られていました。

 

このため、現在の戸籍には記載されない、オジやオバ、その配偶者、従兄弟、孫などが1つの戸籍に記載されていたのです。

 

また、先に紹介した「戸籍事項」には、以前の戸籍に書かれていた「戸籍の編成要因」すべてが転記されていたことも、大きな特徴です。

 

このため、戸籍を編成した理由が複数記載されていることが珍しくなく、いつ作られた戸籍か見誤る原因となりがちです。

 

戸籍事項に書いてあること

 

「戸籍事項」には、戸籍の編製や消除の原因と、その日付が記載されています。

 

大正4年式戸籍の編成と消除の原因には、「家」を単位とする戸籍特有のものもあるため、確認しておきましょう。

 

この「家」は、戸主と親族で構成され、戸主は、家督相続によって親から子へ引き継がれ、新たな戸籍が編製されました。

 

新たに戸籍を編製する原因としては、ほかに「分家」「創立」「廃家または絶家の再興」、「転籍」、「戸籍の改製」などがあります。

 

ちなみに、現在は、婚姻すれば新たな戸籍が編製されますが、大正4年式戸籍では、当然に新たな戸籍が作られるわけではありませんでした。

 

一方、戸籍を消除する原因としては、「家督相続」「廃家」「絶家」「他市町村への転籍」「戸籍の改製」などがあります。

 

まとめ

 

一般的に、戸籍を見る機会は少ないものの、相続が発生すると、往々にして、手書きで書かれた制度改正以前の戸籍を目にする傾向にあります。

 

最新の戸籍は、コンピュータ化されているため、非常に分かりやすくなっています。

 

また、それ以前の戸籍でも、夫婦単位になった昭和23年式戸籍までは、比較的分かりやすいと言えます。

 

しかしながら、大正4年式戸籍やそれ以前の戸籍になると、手書きの文字を読み取ることが難しいことに加え、書かれている事項が異なります。

 

相続で、被相続人の出生から死亡までの戸籍を取得する際には、この大正4年式戸籍を読み取ることがカギになるかもしれません。

 

不明な点や不安がある場合などは、市区町村役場や専門家などに相談することがおすすめです。

一部売却で袋地になってしまう農地をどうする

袋地は、農地でも宅地でも、公道との往来ができなければ利用できなくなってしまうため、所有者には通行権が認められます。

 

ただし、通路の広さは、車が出入りするほどの幅が当然認められるわけではなく、農業を営むにしても宅地化するにしても、難しい問題を抱えることになります。

 

袋地になるような分割は避けることが賢明ですが、袋地になってしまった農地を利用する場合の解決策を紹介しましょう。

 

袋地とは

 

「袋地」は、ほかの土地に囲まれて公道との間を往来できない土地のことで、河川や沼などに遮られている場合は「準袋地」と呼ばれます。

 

使い勝手が良くないため、土地の評価が大幅にダウンし、買い手が現れないことも珍しくありません。

 

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袋地

 

袋地になるとどうなる

 

準袋地も含め、袋地には建物を建築することができず、農業を続けることも簡単ではありません。

 

農地の場合は、農作業用の機械や運搬用の車が出入りできなければ、事実上、農業を営むことは困難になってしまいます。

 

特に、農地は袋地が多いと言われ、相続などの際の分割や、道路に面した部分の宅地化や売却などによって、一層袋地が発生しやすい状況にありますす。

 

今後は、2022年の生産緑地の指定期限切れを迎えることから、固定資産税のアップ前に手放す動きも加速しそうな気配です。

 

一方、宅地の場合は、建築基準法により、公道に2m以上の間口の広さで接していない土地には、建物を建築することができないとされています。

 

公道に接していなければ、火災や地震などの際に非難が困難で、消防車や救急車などの緊急自動車がたどり着くことができない危険も伴います。

 

このような土地を売却しようと思っても、一般的な買い手が現れることは滅多になく、価格も近隣土地の半値以下になってしまうかもしれません。

 

袋地の囲繞地通行権

 

袋地が利用できない土地となってしまわないように袋地の所有者には、民法で必要最低限の通行権が認められています。

 

これは「公道に至るための他の土地の通行権」と呼ばれるもので、登記の必要もなく、袋地の所有者に「当然認められる」のです。

 

なお、この通行権は、一般的に「囲繞地通行権」として知られています。

 

この通行権は、袋地や囲繞地の所有者が変わっても消滅することはなく、いずれが売却された場合も、通行権が承継されます。

 

ただし、この通行権は、通行する土地(囲繞地)所有者の犠牲によって成立するため、袋地所有者の通行にとって必要で、かつ、損害が最も少ない範囲に限定されます。

 

また、囲繞地の所有者に損害が発生する場合は、袋地の所有者は、賠償金に当たる「償金」を支払う必要があります。

 

なお、「償金」については、囲繞地と分割した結果で生じた袋地の場合、支払が不要とも定められています。

 

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囲繞地通行権

 

建物を建てることができる?

 

民法によって、公道までの通行が認められるなら、人や自転車、自動車、トラクターなども通行でき、建築基準法の接道義務は無関係ではないかとも思われます。

 

しかしながら、この通行権は、無制限に認められるものではなく、通常は人や自転車の通行程度と解されています。

 

なぜなら、通り抜けする土地の所有者にしてみれば、ただでさえ犠牲を払わなければならないわけですから、損害を被るような通行までは認められないのです。

 

最高裁の判決でも、囲繞地通行権が与えられるにしても、建築基準法の接道要件を満たさなければならないような通行権が「当然に認められると解することはできない」とされています。

 

つまり、建築基準法の接道義務要件を満たすことができるとは限らないのです。

 

道路側を売却したら袋地になってしまった農地を利用したい場合の解決策

 

ここまで見てきたように、囲繞地通行権があるからと言って、袋地にハンディキャップがあることは確かです。

 

この囲繞地通行権を巡る判例は多く、裏返せば、トラブルに発展するケースが多いことの証拠でもあります。

 

では、相続した農地が袋地であった場合や、公道側を分割して売却したら袋地が発生してしまう場合など、袋地を利用できるようにする解決策はあるのでしょうか。

 

通行地役権

 

袋地と囲繞地の所有者の話し合いで合意すれば、「通行地役権」契約を結んで、通行する場所や道路幅を設定することができます。

 

契約は、有償でも無償でも両者の合意があれば成立し、囲繞地通行権のような必要最低限の場所や通路幅に限らず、両者の合意で設定できます。

 

ただし、通行地役権は通行できる権利であって、駐車はできないため、その必要があれば「賃借権」を設定することで解決可能です。

 

この権利については、「当然認められる」囲繞地の通行権とは異なり、第三者に対抗するためには共同での登記が必要になります。

 

この場合は、できるだけ登記しておくことをおすすすめします。

 

等価交換や通路部分の購入

 

袋地を解決する方法として、通路部分と袋地の一部を交換する方法や、通路部分を購入する方法があります。

 

囲繞地所有者の合意が必要なほか、分筆を行うための測量、所有権移転登記手続きなどが必要で、かなりの労力や費用、期間がかかりますが、確実な方法ではあります。

 

ただし、農地の場合は、交換するにしても購入するにしても、農地法の許可が必要となるため、決して安易に考えないことが大切です。

 

まとめ

 

袋地は、いずれにしても利用しにくく、相続や売買などをきっかけとして、土地の維持管理が難しくなることが少なくありません。

 

このような土地の分割や分筆、売買、賃貸などに際しては、自動車や中大型の農機具などの通行や、建築基準法の接道義務要件などについて、しっかり確認しておくことが重要です。

「相続分の譲渡」揉める協議からの離脱や相続不動産の放棄

親の兄弟仲が悪く、疎遠になってしまった祖父が亡くなり、伯父から代襲相続人としての相続について連絡がありました。

 

山里奥深いところにある親の実家には、幼いころに数回行ったことがあるものの、場所や親せきの人たちの顔も記憶にありません。

 

主な遺産は、山林や原野、山間の農地などで、ほとんど魅力を感じていません。

むしろ、伯父や伯母が遺産分割協議で揉めているようで、関わりたくないと考えています。

 

相続放棄できることは知っていますが、家庭裁判所が遠いうえに、なにかと手間がかかると躊躇しているうちに、3カ月以上過ぎてしまいました。

 

このような場合に、遺産や遺産分割協議に関わらないで済む方法として、「相続分の譲渡」があります。

 

相続分の譲渡とは?

 

相続人になると、法定相続分を取得する権利が与えられますが、自分の相続分を他人に譲渡することを「相続分の譲渡」と呼びます。

 

相続分は、配偶者や子、親、兄弟姉妹などの相続人に与えられる、遺産の割合です。

 

図の例では、遺産を4人の子で均等に分けることになり、代襲相続人は、二男の相続分となった4分の1が相続分です。

 

なお、相続の連絡が来た時点では明らかではありませんでしたが、もし負債があれば、それも代襲相続人が受け継ぐことになってしまいます。

 

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揉める遺産分割協議からの離脱

 

譲渡の条件や相手

 

相続分の譲渡は、譲渡人と譲受人の合意があれば成立し、他の相続人の同意は不要です。

 

譲渡する相手方は、相続人でも第三者でも良く、複数の方に譲渡することもできるなど、配分は自由に決めることができます。

 

なお、第三者に譲渡された場合は、残りの相続人全員で行う遺産分割協議に、譲渡を受けた方が加わる必要があります。

 

また、譲渡は贈与とみなされ、有償・無償のどちらでもかまいませんが、有償の場合は、譲り受けた方によって相続税や贈与税などの課税対象になります。

 

負債も一緒に譲渡される

 

相続分を譲渡すると、プラスの遺産だけでなく、同時に相続債務も譲り渡されます

 

したがって、代襲相続人がオジやオバなどに譲渡すれば、負債があってもオジやオバなどが負うことになります。

 

ただし、これは当事者間の合意にとどまり、債権者には対抗できないことに注意が必要です。

 

つまり、譲渡された方が返済すれば問題ありませんが、債権者から請求された場合には応じなければならない可能性があります。

 

相続分の譲渡による相続債務については、相続放棄とは異なり、必ず取り立てや返済から免れるとは限りません。

 

譲渡できないケース

 

相続放棄のような3カ月といった期限はありませんが、譲渡できない場合もあります。

 

基本的に、遺産分割の前でなければ譲渡できず遺言で分割方法が指定された財産については、相続分の譲渡の対象とすることはできません

 

なお、相続人全員の同意があるなら、遺言や遺産分割後でも譲渡することが可能です。

 

揉めてしまった遺産分割協議からの離脱

 

譲渡してしまえば、相続する財産がなくなります。

 

このため、本来は相続人全員で行う必要がある遺産分割協議に、相続放棄と同様、譲渡した方は加わる必要がありません

 

一般的に、相続分の譲渡は、相続放棄や遺産分割協議の代わりに、共同相続人などの当事者を整理するために利用される方法です。

 

特に、相続分を取得したくない場合や、遺産分割協議やその調停手続などに関わりたくない場合に、離脱するための手段となります。

 

なお、相続分を譲渡したことを証明するためには、「相続分譲渡証書」を作成して署名と押印の上、印鑑登録証明書を添付すれば、家庭裁判所にも認められます。

 

相続放棄の熟慮期間を過ぎてからも不動産を相続放棄できる

 

相続分の譲渡は、相続分を特定の人に譲渡でき、後順位の相続人が相続権を取得しないことや、一部の相続分に限って譲渡できるメリットがあります。

 

これに加えて、期限や手続きについて、相続放棄にはないメリットがあります。

 

遺産分割前なら、いつでもできる

 

相続放棄であれば、3カ月の熟慮期間が過ぎると認められないのに対し、相続分の譲渡には特別な期限がありません

 

相続発生や相続を知ったときからの経過期間とは関係なく、遺産分割前なら、いつでも譲渡できます。

 

また、相続人の間で決めるだけで済み、相続放棄のような家庭裁判所での面倒な手続きが必要ありません。

 

つまり、他の相続人などへの相続分の譲渡は、遺産を取得しない、つまり、単純に表現すれば、放棄することになるのです。

 

相続分譲渡証明書

 

譲渡は、口頭でも成立するものの、「相続分譲渡証明書」あるいは「相続分譲渡証書」として、証明書を作成することが一般的です。

 

証明書を作成しておけば、後のトラブルを防ぐことができ、かりに遺産分割調停や遺産分割審判になった場合でも、これらに参加する必要がなくなります。

 

なお、この相続分譲渡証書があれば、相続した方が不動産を登記する際に、登記原因証明情報として利用することもできます。

 

まとめ

 

このように、相続分の譲渡は、相続人の間では相続放棄と同様の役割を果たしてくれます。

 

ただし、譲渡に負債がある場合は、あくまでも相続人間での取り決めと扱われることから、注意しなければなりません。

 

このため、遺産に債務がある場合は、相続分の譲渡ではなく、相続放棄を検討することをおすすめします。

 

不動産を相続や贈与されたときの所有権移転登記の登録免許税

遺言で不動産を譲り受けたら、所有者の名義を変えるために「所有権移転登記」の申請手続きを行います。

 

名義を変更しておかなければ、将来的に売買や相続などでトラブルが発生する恐れがあります。

 

この手続きを行う際は、登録免許税と呼ばれる税金がかかりますが、「相続」と、遺言で贈与する「遺贈」で異なることをご存知でしょうか。

 

相続では、登録免許税率が低く、相続未登記に対応するための免税措置も設けられているのに対し、遺贈による登録免許税は割高になります。

 

また、「相続させる」場合は、単独で登記できるのに対し、「遺贈する」場合は他の相続人と共同で登記を行わなければならない制約もあります。

 

遺言の作成や執行の際には、このような不動産特有の登記についても把握しておくことが大切です。

 

「相続させる」と「遺贈する」の違い

 

遺言では、だれにどれだけの財産を与えるかなどを指定できます。

 

法定相続人には、相続の発生と同時に法定相続分の権利が与えられる一方、内縁関係にある配偶者や面倒を見てくれた義理の娘などは相続人になりません。

 

しかしながら、遺言で指定しておけば、特定の相続人に相続させることや、相続人にはなれない方に財産を譲ることができます

 

このような指定を行う場合、通常、相続人に対しては「相続させる」、相続人以外の方には「遺贈する」と表現します。

 

なお、「遺贈」は、遺言で特定の財産を無償で与える「贈与」を意味し、だれに対しても遺贈できますが、ここでは第三者に対する贈与に限定して話を進めます。

 

では、「相続させる」と、第三者に「遺贈する」場合とでは、どのような違いがあるのでしょうか。

 

「相続させる」

 

「相続させる」遺言は、「特定財産承継遺言」と呼ばれ、複数の相続人のうち特定の相続人に、特定の財産を相続させる場合に使う表現です。

 

遺言は、通常相続開始時に効力が発生し、書かれたとおり、指定した相続人が指定した財産を受け継ぐ効果が発生します。

 

「遺贈する」不動産の登記は、相続人の反対があるとできない

 

一方、「遺贈する」遺言で、特定の第三者に、特定の財産を無償で与えることができますが、不動産の場合は「相続させる」とは法的効果が異なります。

 

「相続させる」場合は、譲り受けた方が単独で登記できるのに対し、「遺贈する」場合の登記は、相続人と共同で行わなければなりません。

 

つまり、単独では登記できず、相続人の反対があると、所有権移転の登記ができなくなってしまう恐れもあるのです。

 

「相続させる」と「遺贈する」では登録免許税額が異なる

 

以前は、相続人であっても、「相続」と「遺贈」では登録免許税が異なり、遺贈による場合の税額が高く設定されていました。

 

現在では、相続人に対する登録免許税は、相続でも遺贈でも同額ですが、相続人ではない方が遺贈を受ける場合は現在も割高になっています。

 

登録免許税とは?

 

相続や遺贈で不動産を譲り受けると、所有者を亡くなった方から譲り受けた方に変更する登記が必要です。

 

この登記には税金がかかり、その税金は「登録免許税」と呼ばれます。

 

登記は、不動産の所有者がだれか分かるように、法務局で管理する「登記簿」に記録する手続きで、その際に登録免許税がかかります

 

登記簿には、土地や建物の所在や面積、所有者の住所や氏名などが記録され、だれでも閲覧することができます。

 

このような制度によって、他人に対して自分の所有物であることを主張でき、売買などもスムーズにできる仕組みになっています。

 

登録免許税の計算方法と税率

 

登録免許税の額は、土地や建物の「固定資産税評価額」に税率をかけて計算します。

 

税率は、新築した自宅の所有権保存、中古住宅の売買や相続、贈与などによる所有権移転、住宅ローンなどの担保とする抵当権設定などで異なります。

 

相続や贈与の登記手続きは「所有権移転登記」と呼ばれるもので、「相続」の税率は0.4%ですが、「贈与」の場合は2%です。

 

たとえば、固定資産税評価額が2,000万円の土地を譲り受けた場合に、相続では8万円で済むのに対し、贈与の場合は40万円の登録免許税がかかります。

 

免税

 

田舎にある不動産を相続するような場合は、点在する農地や山林、原野などを多数譲り受けるケースも珍しくありません。

 

このような場合も、所有権移転登記には登録免許税がかかりますが、すべてに登録免許税がかかるわけではなくなりました。

 

というのも、平成30(2018)年の税制改正によって、相続登記を促進するために、登録免許税の免税措置が設けられたからです。

 

指定された地域にある10万円以下の土地は免税

 

法務局ごとに、相続登記の促進を特に図る必要があるとして、法務大臣が指定する市街化区域外の土地については、評価額が10万円以下なら免税です。

 

2021年3月までの限定ですが、筆者の住む県では、県庁所在地と人口の多い市などを除く市町村で、多くの土地が指定に該当しています。

 

相続未登記分を登記する場合は該当部分が免除

 

相続未登記の土地を相続した方は、所有権移転登記を行う際に、まず未登記の部分を解消しなければなりません。

 

たとえば、亡くなった父が相続したものの、相続登記をしなかった場合は、その相続人が自分の名義に変更する際に、まず亡き父親名義に変更しなければなりません。

 

こうなると、亡き父と自分の相続登記で、2回分の登録免許税がかかってしまいます。

 

2018年の改正により、このような相続登記では、2021年3月まで、未登記部分の登録免許税が免除されることになりました。

 

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登録免許税が免除


まとめ

 

遺言の作成や執行では、相続税に注意を奪われがちですが、そのほかの税金や手続きなどにも注意を払う必要があります。

 

不動産の相続や遺贈でも、将来的な賃借や売買、相続などに登記が欠かせず、登記の際は登録免許税や依頼する費用がかかります。

 

また、遺贈では、単独で登記ができず、登録免許税も割高になるとともに、相続では課されない不動産取得税がかかるなどの違いもあります。

 

今回は登録免許税について紹介しましたが、遺言の作成や執行時には、不動産特有の税金や手続きなどについて把握しておくことも大切です。

遺言のススメ

多くの方が自分の死後も、先祖から受け継いだ財産や自分が築いた財産を、有効に活かしてほしいと願っています。

 

そんな思いを叶えるためには、相続に自分の意思を反映させることができ、親族間のトラブルを避けることもできる遺言書を作成しておくことがおすすめです。

 

自分一人で完結できる自筆証書遺言は、作成や保管のデメリットが改善され、利用しやすくなっています。

 

遺言で思い通りに指定でき、自筆証書遺言なら負担が少ない

 

遺言では、相続人それぞれの財産割合や相続させる財産など、自分が望む財産の分け方を指定できます。

 

遺言によって、必要とする方が必要な財産を相続できれば、事業の承継、自宅の登記や居住なども円滑・円満に進めることができます。

 

なかでも自筆証書遺言なら、自分一人で手軽に作成できるうえに、作成した遺言書を役所に保管してもらうこともできるようになりました。

 

自筆証書遺言は、費用がかからず、他人を煩わすこともなく自分一人で完結できるうえに、書き直しも自由なことが大きな特徴です。

 

ただし、何を書いても良いわけではなく、形式や、相続人に認められる「遺留分」など法的な有効性についての注意が必要です。

 

また、すべてを自筆で書く必要がありましたが、2019年からは、一部をパソコンで作成することなどが認められ、自筆負担を少なくできます。

 

さらに、作成した自筆証書遺言は、法務局に保管を依頼できる選択肢ができたために、より利用しやすくなっています。

 

民法改正で手書きが少なくて済む

 

2019年から一部をパソコンで作成することができるようになったと書きましたが、もう少し詳しく紹介しましょう。

 

新たにパソコンで作成することなどが認められたのは、財産の明細書である「財産目録です。

 

パソコンを利用すれば、土地や建物などの不動産、預貯金などの明細を手軽に整理でき、修正も容易です。

 

また、パソコンによる作成だけでなく、家族が代筆で作成しても問題なく、既存資料のコピーで代用も可能です。

 

既存資料としては、不動産の全部事項証明書や、金融機関の通帳のコピーなどを利用できます。

 

ただし、自筆以外で作成した財産目録には、1枚1枚に遺言者自身の署名と押印が必要です。

 

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自筆証書遺言をパソコンで作成するイメージ

法務局に保管を依頼できる

 

パソコンの利用と同様、民法改正によって、作成した自筆証書遺言を法務局に保管してもらうことができるようになっています。

 

それまでは、遺言を自分で保管しなければならず、死後に発見されにくいことや、隠ぺいや改ざんされやすいことなどが問題視されてきました。

 

民法改正では、これらのデメリットを解消できる仕組みとして、法務局に保管を依頼できる選択肢が新たに加わることになりました。

 

この制度は、2020年7月10日から始まったもので、法務局が、自筆証書遺言としての形式を審査し、保管してくれるものです。

 

法務局からは、保管していることについての証明書を発行してもらうことができ、遺言書の画像情報は全国の法務局で共有されます。

 

相続人が遺言書の開示を請求すれば、全国にある地方法務局で閲覧が可能になります。

 

また、相続人の一部が遺言内容を閲覧した場合は、他の相続人にも遺言書の内容が知らされるため、相続人どうしの公平性も保たれます。

 

遺言者自身が保管する場合とは違い、開封するための家庭裁判所への検認手続きも必要ありません

 

まとめ

 

遺言を作成しておけば、相続に自分の意思を反映させることができ、親族間のトラブルを避けることもできます。

 

遺言には3種類ありますが、その中でも自筆証書遺言なら、自分一人で完結でき、あとで書き直すことも自由にできます。

 

2019年からは、財産目録をパソコンで作成して自筆部分を減らすことが認められるなど、全文自筆の負担も軽減されています。

 

最近では「終活」が注目され、財産の整理やエンディングノートを始める方も増え始めています。

 

遺言書の作成は、終活で行うべきことの一つに挙げられているように、相続を円滑にするための意思表示です。

 

子孫に自分の人生を伝えるためにも、自筆証書遺言を作成してみてはいかがでしょうか。

戸籍の見方(編成要因が2つ以上ある戸籍)

戸籍は、見方のポイントが分かれば、相続人を見落としたり、証明できる期間が途切れていたりといった失敗を防ぐことができます。

 

相続人を確定するためには、被相続人の出生から死亡までを、連続して証明できる戸籍を取得して、確認しなければなりません。

 

このため、戸籍がいつ作られ、いつ消除(閉鎖)されたか、また、被相続人がいつ入籍し、いつ除籍されたかなど、戸籍の見方を知っておくことが必須です。

 

特に、昭和30年前後まで使われていた古い戸籍は、現在使われている戸籍とは、記載様式や記載方法が異なっています。

 

なかでも、戸籍を編成した要因が2つ以上記載されていることがあり、いつ作られたかを見間違うことも珍しくありません。

 

今回のブログでは、出生から死亡までの連続戸籍を揃える際のポイントを、特に、2つ以上の編成要因がある戸籍に焦点を当てながら、紹介します。

 

連続する戸籍が必要な理由

 

相続が発生すると、相続人を確定するために、必ず、被相続人の出生から死亡までの連続する戸籍を揃える必要があります。

 

一般的に、出生が記録された戸籍は、死亡までの間に婚姻や転籍などによって除籍や消除され、その都度、新たな戸籍が編成されていきます。

 

基本的に、新しく編成された戸籍には、両親や兄弟・姉妹が記載されません

また、以前の戸籍で死亡や婚姻などによって除籍された方、認知した記録も、新しい戸籍には転記されません

 

このため、本籍地の市区町村役場で死亡直前の戸籍を取得できるものの、通常、その戸籍だけでは、相続人の全てを確認することができません。

 

新たに戸籍ができる要因

 

戸籍上、人の一生は、出生による「入籍」に始まり、「死亡」により「除籍」されて終わります。

 

婚姻や本籍地の移動、分籍、離婚で以前の苗字に戻るための戸籍がなくなっている場合などは、その都度、新たな戸籍が作られます。

 

また、現在の戸籍は、夫婦と同姓の未婚の子どもが1単位のため、一つの戸籍に三世代が含まれてしまうような場合に、新たな戸籍が編成されます。

 

「一つの戸籍に三世代」は、子が非嫡出子を出生した場合や、子が養子をもらった場合などが該当します。

 

一方、現在の戸籍になる前は、「家」が戸籍の1単位であったため、家督相続や分家のような、時代劇でしか聞いたことのない要因も存在していました。

 

法律改正など制度の改正でも新たに戸籍が作られる

 

現代の戸籍制度は、明治5年に始まり、その後、明治19年、同31年、大正4年、昭和23年、平成6年と制度が変わり、そのたびに新しい様式に改められています。

 

したがって、本人に新たな戸籍を作る要因がない場合でも、制度改正があれば、それまでの戸籍が「消除」され、新たな戸籍が「編成」されます。

 

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戸籍編成の流れ

連続しているかは、いつからいつまでの戸籍かを確認

 

相続人を確定するには、出生から死亡までの「連続する戸籍」が必要です。

つまり、出生時の戸籍から、その後に編成された戸籍すべてを取得する必要があります。

 

除籍日や消除日から、新たな戸籍の編成日までの間が、たとえ数日でも途切れていれば、途切れた期間を証明できません。

 

つまり、出生届が受理され、死亡届が受理されて除籍となるまでの、1日も欠けることなく連続する、一連の戸籍が「連続する戸籍」です。

 

このため、戸籍を確認する際は、それぞれの戸籍が、いつ・どんな要因で編成され、いつ除籍または消除(閉鎖)されたか「読み解く」ことが重要です。

 

「読み解く」と表現したのは、現在のコンピュータ化された戸籍と違い、以前の戸籍は手書きで書かれているため、非常に読み取りづらいのです。

 

また、詳しくはあとで紹介しますが、古い戸籍では、過去に戸籍を編成した要因を、新しい戸籍にも転記していました。

このため、戸籍を編成した理由が複数記載されていることも珍しくなく、見誤りの原因となりがちです。

 

【メモ】改正原戸籍と除籍謄本

 

連続した戸籍を集める際に、改正原戸籍と除籍謄本という用語を知っておくと、混乱せずに済みます。

どちらも閉鎖された戸籍ですが、制度が変わって改製された場合は「改製原戸籍」、全員が除籍された場合は「除籍謄本」として保管されます。

 

本人がいつからいつまで在籍していたかも見落とさない

 

それぞれの戸籍が、いつ編成され、いつ消除されたかだけでなく、被相続人が、いつからいつまで在籍したかも重要なチェックポイントです。

 

たとえば、昭和2年2月1日生まれの方の出生届が受理され、初めて入籍した時の戸籍は、2月1日以前に編成されているはずです。

 

しかしながら、出生の記録は、新たな戸籍でも記載されるため、戸籍の編製日を確認しないと、その後の転籍などで編成された戸籍を見ている可能性もあります。

 

また、養子縁組によって入籍した、養子が被相続人となっている場合は、出生時の戸籍は実親の戸籍をたどらなければなりません。

 

したがって、出生時の戸籍からの連続を確かめるためには、戸籍がいつできたかだけでなく、いつ養子となって入籍したかを確認することが重要なのです。

 

複数の編成要因が記載されているときは、いつ作られた戸籍か要注意

 

昭和26年に制度が改正される前の戸籍では、新たな戸籍を編製するときに、以前の戸籍に書かれていた戸籍の編成要因すべてが転記されました。

 

このため、見ている戸籍がどの編成要因によって新たに作られたのか、分かりにくい状態が発生します。

 

このような記載方式は、現在でも取得する機会の多い大正4年式戸籍まで見られ、昭和30年代前半ころまで使用されていました。

 

複数の編成要因が記載されている具体例を、確認してみましょう。

編成要因は、「戸籍事項欄」と呼ばれる、本籍欄のすぐ左側に記載されます。

 

 

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大正4年式「戸籍事」項の具体例

この例では、①出生、②婚姻、③家督相続、④転籍、⑤死亡、⑥戸籍の消除について記載があります。

このうち、②婚姻、③家督相続、④転籍は、いずれも戸籍の編成要因です。

 

つまり、連続する戸籍としては、出生により入籍した戸籍、婚姻で編成された戸籍、家督相続で編成された戸籍、転籍で編成された戸籍の4種類あることになります。

 

この例に記載されている戸籍の編成要因のうち、②と③は、過去に戸籍が編成されたときのものであって、この戸籍の編成要因ではありません。

 

最後の④転籍が、最も新しい戸籍の編成要因となるため、この戸籍で証明できる期間は転籍日以降だけです。

 

したがって、かりに婚姻が戸籍の編成要因と読み違うと、転籍日前日までの、婚姻や家督相続で編成された戸籍を取得し損なう恐れがあります。

 

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戸籍が新しく編成される要因と連続する戸籍の種類

このように、古い戸籍を読み解く場合は、特に、戸籍の編製要因を取り違えないようにしなければなりません。

 

まとめ

 

戸籍は、見る機会も少なく、見方に慣れていない方が圧倒的に多いと言えます。

市区町村役場で大正4年式戸籍を取得しても、どこをどう見れば良いか、手書きの文字は小さく、判読しにくいこともあって、見誤る事態も起こりがちです。

 

相続人を確定する際は、出生から死亡まで、戸籍の日付が連続しているか、被相続人が連続して在籍しているかが確認のポイントです。

 

また、読み間違えないためには、戸籍の編成要因や編製日、消除日、除籍日などを、じっくり「読み解く」ことが大切です。

マンションを相続する際の評価額の調べ方

不動産を相続する場合は、相続税の計算に手間がかかります。

というのも、評価額を自分で計算しなければならないからです。

 

建物なら、市区町村から郵送される、固定資産税の納付通知書の評価額がそのまま当てはまります。

 

しかしながら、土地の場合は、路線価や倍率方式があるため、どちらに該当するかを確かめなければなりません。

さらに、路線価方式の場合は、土地の状況に応じた補正率を確認して、計算式に当てはめて計算する必要があります。

 

戸建て住宅の場合は、ここまで調べると評価額が分かりますが、では、一つの土地に多くの住宅がある区分所有マンションの場合は、どうでしょうか。

 

どうやって調べればいいの?そんな相談に答えるために、今回は、区分所有マンションの評価額の調べ方について、分かりやすく紹介します。

 

 

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区分所有マンションの評価額

 マンション全体の評価額の調べ方

 

区分所有マンション相続税評価額を計算するときは、戸建住宅と同様、建物と土地を別々に計算します。

 

計算によって得られたそれぞれの評価額を合計すると、区分所有マンションの評価額を計算できます。

 

区分所有マンションの評価額 = 建物の評価額  +  土地の評価額

 

建物評価額の調べ方

 

マンションは、自分だけが出入りできる専有部分と、マンションの住人や訪問者が利用する共有部分があります。

 

エントランスやエレベーター、廊下などが共有部分になっていることは、入居時の説明などでご存知の方も多いでしょう。

 

建物全体のうち、自分が所有する部分を計算しなければならないとなると、これは大変と思われるかもしれません。

 

しかし、計算する必要はありませんので、安心してください。

「固定資産税評価額」には、自分が所有するマンションの専有部分と共有部分の合計額が、記載されています。

 

建物の評価額 = 固定資産税評価額 (⇦専有部分と共有部分の合計が記載)

 

共用部分の評価額は、すべての区分所有者が所有する専有部分の床面積の割合によって、あらかじめ計算されています。

 

この固定資産税評価額は、納税通知書で確認する方法と、市区町村役場で固定資産税評価額の証明書を取得して確認する方法があります。

 

土地評価額の調べ方

 

土地の評価額は、建物と違い、固定資産税評価額を当てはめることができません。

まず、土地全体の評価額を計算して、自分の持分割合をかけ算して、計算します。

 

区分所有マンションの土地評価額 = マンション全体の土地評価額 × 持分割合

 

マンション全体の土地評価額

 

全体の土地評価額は、2種類の計算方式があります。

市街地の場合は「路線価」が決められていて、それ以外の土地は「倍率」が決められています。

 

路線価は、面している道路によって決まる、1平方メートル当たりの評価額で、倍率は、固定資産税評価額の何倍かを決める割合です。

 

路線価のある土地の場合は、次の式で計算します。

マンション全体の土地評価額 = 路線価 × 面積 × 補正率

 

「補正率」は、標準的な土地と比べた時の「条件の良さ・悪さ」を意味し、条件の良し悪しで評価額が増減します。

 

条件が良いケースとしては、敷地の2面や3面が道路に接している場合があります。

この場合は、評価額が上がることになります。

 

反対に、条件が悪いケースとしては、奥行きが短い、逆に、奥行きが長い、台形や三角形など変形しているなどがあります。

 

この場合は、条件によって決められている補正率を当てはめると、評価額が下がることになります。

 

評価額が上がる補正率としては、側方路線影響加算や二方路線影響加算、下がるものとしては、奥行き補正や間口狭小補正、奥行長大補正などがあります。

 

それ以外の土地の場合は、次の式で計算します。

マンション全体の土地評価額 = 固定資産税評価額 × 倍率

 

倍率は、「字」程度の単位の地域に、共通で設定されている数値で、宅地や田、畑、山林などに区分されています。

 

持分割合

 

持分割合は、マンション全体に対する専有部分の割合を意味します。

管理費や修繕費を割り当てる際は、この割合を基に配分します。

 

この持分割合は、区分所有マンションの登記簿や売買契約書の記載で確認することができ、10万分の195などと書かれています。

 

まとめ

 

区分所有マンションの評価額も調べ方が分かると、自分で計算できます。

詳しい当てはめ方や補正率も、国税庁のホームページに詳しく掲載されています。

 

ただし、該当する補正率を探して、間違いなく正確に計算するのは少々厄介なため、いくつもの条件に当てはまるような場合は、専門家に相談することをおすすめします。

相続登記を放置した土地の売却に失敗した事例

相続登記放置すると、のちのちトラブルの原因になることは、以前のブログでも紹介しました。

不動産を相続した場合は、所有者の名義を変更しておかないと契約できず、売却を進めることができません。

 

今回は、買い手が決まったのに、相続登記を放置していたために、売買契約を諦めなければならなかった事を紹介します。

 

失敗事例から、そうならないための教訓も見えてきます。

 

失敗の内容と原因

 

親が亡くなった後に居住し、別宅を購入して転居した後も、管理や固定資産税の支払いを続けた不動産に、買い手が現れました。

売却価格も決まり、あとは契約して所有者の名義を変更すれば、一件落着のはずでした。

 

失敗の内容

 

購入を希望する方から相談を受け、必要な手続きを確認するために、登記情報を取得して不動産の所有者を確かめました。

 

すると、所有者は、現在売買の話を進めていた当事者ではなく、亡くなった父親であることが判明したのです。

 

売買契約や登記申請手続きは、所有者本人、あるいは相続人全員で行う必要がありますから、相続人を調べて全員の承諾を得なければいけません。

 

1カ月近くかけて戸籍などを取得した結果、相続人は判明したのですが、戸籍の附票から分かるのは住所だけです。

 

当事者の方に連絡してもらうよう、手紙と返信用切手を貼った封筒を入れ、配達記録が残る特手記録郵便で送付し、返信を待ちます。

 

当事者以外の8人の相続人のうち、7人からは連絡があり、事情を理解して、当事者が相続することを了解してもらうことができました。

 

しかしながら、比較的近くに住む甥だけは連絡が取れず、遺産分割の話を進めることができません。

理由は分からないままですが、訪問しても居留守を使って、会うことを拒否しているようです。

 

半年かけて、連絡を取るために様々な方法を試みましたが、結局、連絡を取ることができず、買主は諦めることを決断。

 

このため、売却話は失敗に終わり、ここで打ち切らざるを得なくなったという訳です。

  

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相続関係説明図

 

失敗の原因

 

売却が進められなくなった直接の原因は、相続人全員からの承諾を得られなかったことです。

 

しかしながら、根本の原因は、不動産の相続登記を放置したことで、のちのちトラブルになりやすいことの証明でもあります。

 

事例から知ることができる、トラブルの原因を確認しておきましょう。

 

記憶の薄れと口約束

 

相続発生から長い時間が経過すれば、記憶が薄れていきます

 

当事者が住んでいたころは、兄弟すべてが、当事者が相続することを認めていたものの、暗黙の了解や口約束で、その証拠がありません。

 

また、当事者が不動産を譲り受けるかわりに、長男には金銭を渡し、領収書ももらった記憶があるのですが、その領収書は見つかりません。

 

会ったこともない疎遠な相続人が増えていく

 

当事者を除く相続人8人のうち、甥と姪が4人いますが、一度もあったことがありません。

また、亡くなった兄弟の奥さんとも、数回しか会ったことがなく、ほぼ疎遠な状況でした。

 

このように、長い時間が経過するほど疎遠な方が増えていくため、血縁とはいえ、見ず知らずの他人と変わらない状況が発生します。

 

利害関係が複雑になる

 

疎遠なれば、特に金銭にまつわる話は特にまとまりにくくなります。

 

互いに状況が理解しづらく、たとえ、固定資産税の支払いや、費用や労力をかけて管理していたとしても、意に介さなれないことも多くなるでしょう。

 

相続を承諾するかどうかの判断になると、代襲相続人だけでなく、その家族も加わって、様々な損得勘定が働くことになります。

 

今後もトラブルが発生しやすい

 

時間をおけば、相続協議に参加しなかった甥も、気が変わるかもしれませんが、あまり期待はできません。

 

相続人間での遺産分割協議が進まなければ、不動産は相変わらず共有状態が続き、年月の経過とともに、さらに相続人の数だけが増えます

 

そうなれば、さらに遺産分割協議ができるような状態を期待することが困難になり、これまで管理してきた当事者も、その意欲をなくす懸念があります。

 

将来的に管理者がいなくなれば、相続不動産は所有者が確定しないまま、場合によっては放置され、近隣に迷惑がかかることにつながります。

 

現在、法務省の法制審議会では、所有者不明土地の相続登記を義務化する案が検討されていますが、実施時にはトラブルが起きるかもしれません。

 

事例から学ぶ対策

 

相続登記を放置したことが原因で発生した、今回の事例から学ぶことが多くあります。

 

所有者として

 

このようなトラブルを引き起こさないために、所有者の立場で対策を取ることができます。

 

相続がスムーズに進むように、生前に不動産を整理することや遺言書を残すことなどが有効な策となります。

 

相続人の立場から

 

身近な方が亡くなれば、葬儀や墓地の手配、初七日や四十九日の法要など、悲しむ余裕もなく進めていかなければなりません。

 

慌ただしく手配や法要が終われば、ようやく日常生活に戻りますが、今度は日々の仕事や生活に追われ、相続手続きを放置することにもなりかねません。

 

このため、葬儀や法要が終わったら、できるだけ早めに遺産分割協議や相続登記の申請手続きを済ませておくことが、とても大切です。

 

もし、すぐには手続きに着手できない場でも、暗黙の了解や口約束ではなく、文書にして証拠を残しておくことが重要です。

 

ただし、そのような場合でも、できるだけ早めに手続きをしておきましょう。

 

まとめ

 

遺産の分割について決める際は、親しさの度合いが深いほど、言い出しにくいこともあるでしょう。

しかしながら、何も決めずに放置しておけば、今回のようなトラブルにつながる恐れがあります。

 

このため、費用がかかりますが、専門家に依頼して、早めに遺産分割協議や相続登記を終わらせておくことが、おすすめです。

 

結果的に、のちのちの売却や賃貸だけでなく、良好な親族関係を保ち、また、故人が遺した財産の有効利用につながります。

相続した農地をタダで譲る手続き

相続した不動産を手放したい。

特に、その土地を離れて暮らす方からの、こんな相談が後を絶ちません。

なかでも、農地は、法律上も現実的にも、適切な管理が求められることから、相続人の大きな負担となっていることが垣間見えます。

 

高齢化や後継者不足の時代を迎え、農地の売買や貸借は、年々困難さを増しています。

今回のブログでは、管理できなくなった農地をタダで譲り、有効な利用を図ることができた事例を紹介します。

今後の解決策の一つかもしれません。

 

相談内容と解決策

 

まず、相談者からの依頼内容と、解決策を確認しましょう。

 

■相談内容■

 

相談者は、妻と2人で暮らす76歳の男性と、その長男です。

男性は、実家から車で1時間ほど離れた場所に移り住んだ後も、実家近くの農地で米作りに励んできました。

 

現在では、高齢となって「通勤農業」に限界を感じていますが、子どもたちは会社勤めをしているため、後継者がありません。

 

このため、農業を廃業したいと考えているのですが、先祖からの相続不動産手放すより良い方法について、ご相談です。

 

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管理されないままの農地

■解決策■

 

依頼の農地を調査したところ、営農するうえでの環境や条件には恵まれているものの、買い手や借り手がいない状況です。

 

農地を処分するといっても、動産のように廃棄処分や所有権放棄するわけにはいきません。

所有している限りは、周辺農地に悪影響が及ばないように、適切に管理する義務を負っているのです。

 

このため、地続きの農地を耕作しているほかの農家に無償で譲り渡し、農地として利用し続けてもらうことが解決策となりました。

 

売却や貸し付けが可能?

 

農地を手放したいというご相談が多く寄せられます。

最善の「より良い方法での処分」は、買い手や借り手が見つかることでしょう。

 

しかしながら、高齢化や後継者難、過疎化、鳥獣害による被害といった、農業を続けていくための悪条件が重なっているため、容易ではありません。

 

ここからは、事例から確認できた、相続農地を手放す場合の注意点や手続きについて確認していきましょう。

 

農地は売却が難しい

 

農地は、農地として利用することが求められるため、買い手が少なく、一般的に、宅地のような売却は期待できません

買い手となる農業者も減少しているため、需要が減り、価格も低迷しています。

 

農地の価格はピーク時に比べて4割程度下落

 

(一社)全国農業会議所が毎年実施している、「田畑売買価格等に関する調査結果」から、農地取引の実態を確認してみましょう。

 

この調査結果によれば、農地の価格は年々低下しています。

2019年の純農業地域の農地価格は、ピークとなった1994年に比べ平均的な田で約42%、平均的な畑で約36%も下落しました。

 

その要因としては、複数の影響が挙げられています。

最たるものが、農地の「買い手の減少や買い控え」で、農産物価格の低迷などによる生産意欲の減退、後継者不足と続きます。

 

耕作放棄地や所有者不明農地が、全国的な問題として指摘されていることからも明らかなように、農地の取引が低迷しているのが現状です。

 

農業委員会での聞き取り

 

農地の売買や貸借については、農業委員会が中心的な役割を果たしながら、農地有効利用の橋渡が図られています。

 

農地中間管理機構が間を取り持つ売買や貸借、また、市町村レベルでの売買や貸借を試みる「農地バンク」、農業委員会の仲介などが、その方法です。

 

このため、売買や貸借の可能性があるか、農業委員会や地区担当の農業委員から、聞き取り調査を行いました。

 

しかしながら、ここでも農地を売りたい、貸したい希望者ばかりで、買い手や借り手がいないことが分かりました。

 

無償でも借り手がなく、管理にも手が回らない、ここに、田舎にある相続農地の深刻さが浮き彫りになります。

 

土地の所有権は放棄できる?

 

売却や貸すことができず、管理もできなくなった場合、農地の所有権を放棄して、国や町に引き取ってほしい。

相談を受ける方々からは、そんな期待を耳にすることがあります。

 

国や自治体への寄付を考える方もいますが、行政上の利用目的がなければ、受け付けてもらうことはできません

なぜなら、管理などの負担が増えるだけになってしまうからです。

 

民法では、所有者のいない不動産は国の所有に属すると規定されていますが、所有者が所有権を放棄した不動産の扱いについては、規定がありません。

 

不動産の所有権を抹消するためには、抹消登記の申請をしなければなりませんが、国の協力が得られなければ実現しません。

 

農地をタダで譲る

 

農業委員会から働きかけてもらったところ、この農地の場合は、隣接する農地の所有者が面積規模を拡大したいと考えていました。

 

そのため、無償なら譲り受けたいとの意向を示したため、相談者も、手続きや費用を負担してくれるなら、無償で譲渡しても良いとの結論に至りました。

 

その背景には、農地の管理や固定資産税の支払いを免れることができ、先祖から譲り受けた農地を放置せずに済むとの思いがあったのです。

 

ただし、無償で譲渡する場合でも、農地には農地法による権利移動の制限があります。

このため、タダで譲る場合にも、その許可申請手続きが必要です。

 

譲るためには、農地法3条許可申請手続きが必要

 

農地を売却や贈与する場合、たとえ親子間であっても、農地法第3条の規定に基づいて、農業委員会などの許可を受けなければなりません。

 

この許可申請をするためには、双方に要件があることに注意が必要です。

 

譲渡人の要件

 

譲渡人は、不動産登記をした所有者でなければ、権利者として申請できません。

したがって、原則的に、相続登記を済ませておく必要があります。

 

譲受人の要件

 

譲り受ける相手には、農地を農業に利用できる者の要件を満たしている必要があります。

 

個人の場合、まず、農業を行う際の最低限の面積が決められています。

市町村によって、この下限面積が設定されていますが、当地域の場合は20aでした。

新たに取得する農地と、現在農業を「適切」に営んでいる農地の合計が、20a以上なければ申請できません。

 

また、農業を継続して営んでいくための、農業経験のほか、実際に農業を行うための農機具や資材、労働力があるかも要件になります。

 

法人の場合は、農地を所有できる法人の条件が厳格に定められているため、その要件がクリアできる場合のみ、申請の対象です。

 

許可後の手続き

 

農地法第3条による許可が下りれば、あとは、所有権の移転登記の申請手続きを行って、所有者の名義を変更します。

 

この申請は、司法書士に依頼することが一般的ですが、自分で行うこともできます。

申請の際は、贈与契約書、印鑑証明書、登記済み権利証、譲り受ける方の住民票などが必要です。

 

なお、不動産取得税はかかりませんが、不動産の評価額に応じた贈与税がかかることに注意してください。

 

まとめ

 

利益を得ることにはつながりませんでしたが、譲渡後の管理や固定資産税の支払いを免れることができ、相続した農地の心配から解放される結果となりました、

 

また、譲り受ける農家からは、譲渡手続きにかかる費用を負担してもらうことで、両者にとって不利益のない解決策となったと言えそうです。

身近な人が亡くなったときに必要な不動産相続の手続き

良くある相談として、相続の発生後かなりの年月が経過してから、相続した不動産の名義変更手続きをしたいというものがあります。

 

身近な人が亡くなった場合、悲しむ余裕も十分にないまま、慌ただしく葬儀や後片付け、四十九日の法要などを済ませなくてはなりません。

 

自分が不動産を相続することは、相続人の間で了解されていると安心している方が多く、緊急性がなければ、なかなか手続きに着手しない方も珍しくありません。

 

しかしながら、時間が経過してしまうと、いざ売却や貸借をしようと思ってもトラブルが発生しやすく、相続手続きがスムーズに進まない傾向にあります。

 

そんなトラブルに陥らないように、今回のブログでは、身近な人が亡くなった時に必要な不動産の相続手続き、相続登記を自分で行う場合に必要な書類について、紹介します。

 

特に、相続登記を自分で行う場合に必要な書類のうち、相続関係説明図と遺産分割協議書について、一人が相続する場合の書き方について、具体的に紹介します。

 

身近な人が亡くなったときに必要な不動産相続の手続き

 

身近な人が亡くなると、死亡届など、まずは行政面での手続きが必要ですが、並行して遺産の相続手続きも必要になります。

不動産の相続について、一般的な流れを確認していきましょう。

 

遺言書の有無

 

最初にすべきことは、遺言書があるかどうかの確認です。

公正証書遺言なら検認の必要はありませんが、自筆証書遺言の場合は、家庭裁判所での検認手続きが必要です。

 

遺言書がない場合は、相続人の間で遺産分割協議を行って、不動産をだれが、どれだけの割合で相続するかを決めます。

 

不動産の調査

 

相続不動産については、不動産の権利証や固定資産税納税通知書などから特定し、登記情報や登記簿謄本を入手します。

 

なお、複数の不動産を所有していた場合、市区町村役場で名寄帳を取得すれば、同一市区町村内にある所有者名義の不動産をまとめて確認することができます。

 

相続人の調査

 

相続手続きの基本は、戸籍から相続人を間違いなく調べ上げることです。

 

遺産分割協議は、権利のある相続人全てが参加して行う必要があるため、協議の前には戸籍によって戸籍上のつながりを調べ、相続人を確定しなければなりません。

 

存在を知らされていない義兄弟や、認知した子がいるなど、協議の後になって別の相続人の存在が判明した場合には、協議をやり直すことにもなりかねません。

 

また、相続放棄や限定承認は、相続の発生を知った時から3カ月以内であれば選択することができるため、相続人の人数に影響します。

ただし、相続の発生からかなりの時が経過してしまった場合は、その時点で選択することはできません。

 

なお、相続不動産の名義変更(相続登記)を行う場合は、法務局に、被相続人と相続人の相続関係を証明するための戸籍を提出する必要もあります。

 

遺産分割協議書の作成

 

被相続人が所有していた不動産を、相続人がどのように遺産分割するかについての協議結果は、「遺産分割協議書」を作成して証明します。

 

相続登記では、協議書に相続人全員が署名と実印を押印した上で、印鑑登録証明書を添えて提出しなければなりません。

 

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不動産相続の手続きフロー

 

一人が不動産を相続するための書類の書き方

 

たとえば、親と同居していた長男が、実家の家屋敷を一人で相続するようなケースは、良くあるパターンです。

 

このような場合、複数の相続人のうち一人が不動産を相続することになるため、多くの方が「相続放棄の手続きが必要なのではないか?」という疑問を持っています。

 

しかしながら、この疑問については、遺産分割協議書と相続関係説明図を適切に作成することで、問題なく解決できます。

 

遺産分割協議書

 

遺産分割協議書は、遺言書がない場合に、遺産の分割について相続人全員で協議し、決めた結果を証明するために作成します。

 

したがって、相続人全員で協議を行って、相続人のうち一人が相続すると決めたことを記載すれば、それで成立します。

 

一人が相続する遺産分割協議書の記載例

 

具体的な記載例を確認しておきましょう。

 

まず、相続人全員で協議を行って、合意したことを記述します。

 

「被相続人 (A)の共同相続人である(B)、(C)、(D)の3名は、遺産分割協議を行い、次のとおり合意した。」

 

次に、合意内容を記述します。

相続人(C)が不動産を相続することを合意した場合は、次にように記述します。

 

「1.  相続人 (C)は、下記の不動産を相続する。」

 

なお、協議の対象とする不動産については、遺産分割協議書中で、「下記」などとして具体的に表示しておく方法が一般的です。

 

最後に、合意事項を証明するために遺産分割協議書を作成すること、相続人それぞれが署名し、押印することなどを記載します。

 

「この遺産分割協議の合意を証するため、本協議書3通を作成し、各相続人が署名、押印のうえ、各自1通を所持するものとする。」

 

作成日付を記入し、相続人全員が住所と氏名を記入し、実印で押印します。

なお、住所は、印鑑登録証明書と全く同じように、略さず記載することに注意しましょう。

 

相続関係説明図 

 

相続関係説明図は、被相続人と相続人について、相続する権利の関係を図示するために作成する、家系図のような書類です。

 

先に紹介した遺産分割協議書を例にすれば、相続人のうち(C)だけが不動産を相続することになるため、氏名の上に「相続」と記載します。

 

一方、相続人(B)と(D)は相続せず、(C)に遺産を分割したという意味で、氏名の上に「分割」と記載します。

 

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相続関係説明図

相続登記を自分で行う場合の必要書類

 

亡くなった人から相続した不動産について、名義を変更する手続きは、相続登記と呼ばれます。

 

この相続登記手続きは、基本的に、自分で行うことができます。

ただし、準備する戸籍や作成する書類が多いなど、途中で断念する人も多いのが実態です。

 

このため、事前に必要書類を把握しておけば、無駄を省くことができるだけでなく、状況によっては専門家に依頼することを決める判断材料にもなります。

 

また、不動産の相続評価額によっては、相続税が発生するケースもありますから、注意が必要です。

 

遺産分割協議による相続登記の必要書類

 

申請手続きには、相続登記申請書のほか、遺産分割協議により相続する場合は、遺産分割協議書が必要です。

遺産分割協議書には、相続人全員が署名し、実印を押印するとともに、印鑑登録証明書を添付します。

 

このほか、被相続人と相続人の関係を示す戸籍謄本などの添付書類が必要です。

戸籍謄本などからは、相続関係説明図を作成します。

 

まず、被相続人について、出生から死亡までの戸籍が分かる戸籍謄本や除籍謄本、住民票の除票が必要です。

 

戸籍は、出生から死亡まで連続する戸籍が必要で、本籍を移動している場合は、移動前の本籍地で除籍謄本を取得します。

 

住民票の除票は最後の住所地を証明する書類ですが、不動産登記簿の住所と異なる場合は、戸籍か除籍の附票が必要になることがあります。

 

なお、登記簿の住所地を証明する書類が、保存期限を過ぎることなどによって消失し、住所が証明できない場合には、不在住証明が必要なケースもあります。

 

また、相続人全員について現在の戸籍謄本、相続不動産を譲り受ける相続人は、住民票、固定資産評価証明書、登記にかかる登記免許税(固定資産評価額の1000分の4)も必要です。

 

まとめ

 

自分で相続登記手続きを行う場合、必要書類の多さと複雑さに嫌気がさして、途中で断念する方が少なくありません。

 

また、高額な不動産の場合は、相続発生から10カ月以内に支払わなければならない相続税についての対応もあります。

 

放っておくと後が大変になるケースが多いですから、相続が発生したら専門家に相談して、できるだけ早めに対応することをおすすめします。