路線価が上昇すると相続税や固定資産税もアップ、納税に支障も

先祖から受け継いでいる土地を相続したら、相続税が高額で払えず困っているといった話を聞くことがあります。
現金や預金なら財産の額もハッキリわかりますが、土地の価格はどのように決めるのでしょうか。
そもそも、相続税は、どのように決まるのでしょうか。

 

相続税や土地の価格は、統一されたルールに従って決められます。
なかでも、市街地や住宅地では、基準となる土地価格について、国が路線価として定めています。

全国の路線価は年に一度公表されますが、そのたびにニュースや新聞などのメディアに取り上げられますから、気にかけている方も多いことでしょう。

 

この路線価から土地の価格を求める方法、そして相続税の計算方法を知れば、路線価と相続税の関係が分かります。

今回は、路線価に焦点を当て、上昇した場合に相続税にどう影響を与えるかについて、紹介しましょう。

 

相続税は土地の価格を含めた総額にかかる

 

相続税は、課税の対象になる財産の合計に対して課されます。

相続によって課税対象となる財産は、現金や預貯金のほか、現金化できるすべての資産が含まれます。
このような資産のことを、本来の相続財産と呼びます。

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相続税計算における本来の財産

本来の財産のほかにも、死亡したことによって支払われる死亡保険金や死亡退職金など、財産扱いされる「みなし財産」があります。
一方、みなし財産の一部や非課税扱いの財産、また借金や葬式費用は、財産の合計から差し引かれます。

 

まとめて計算式で表すと
「課税の対象になる財産の合計額」
=「本来の財産」+「みなし財産」+「生前贈与」-「非課税財産」-「債務」-「葬式費用」
となります。

 

つまり、土地の価格は、相続税を計算する際の合計額に影響を与えることになります。
同じ土地でも、土地の価格が低ければ課税の対象となる合計額も低く、土地の価格が高ければ合計額も高くなることが分かります。

 

路線価は、相続した土地を評価する基準単価

 

では、土地の価格はどのように決めるのでしょうか?
土地には定価がないため、一定のルールに従って評価額を求める方式が採られています。

土地を評価する方式は、路線価方式と倍率方式に分かれ、いずれかの方法が用いられます。
いずれの方式の場合も、1筆(区画)ごとに価格を評価します。

 

どちらの方法を使うかは、それぞれの土地の所在地によって決まりますが、一般的に、市街地や住宅地にある場合は、路線価方式を用いることが多くなっています。

路線価は、道路に面する土地の基準価格を示し、倍率は、固定資産税評価額に乗じる倍率を示しています。

 

一般的に、路線価は公示地価の0.8倍、固定資産税評価額は公示地価の0.7倍に設定され、どちらも、実際の取引価格などに比べて低く評価されます。

なお、公示地価は、一般の土地の取引価格に対する指標として定められるもので、例外もたくさんありますが、おおむね時価に近い価格と言えます。

 

つまり、路線価は、土地の評価額が時価の0.8倍程度になるように定められる土地の単価と言い換えることができるでしょう。

 

路線価による土地評価の計算

 

路線価は、相続税や贈与税を計算する際の基準として、国税庁が公表する「財産評価基準」に掲載されます。公表時期は毎年7月~8月頃で、2019年は7月1日に公表されました。

この財産評価基準は、各年の1月1日から12月31日までの間に、相続や遺贈、贈与によって取得した財産について適用する基準になります。

 

つまり、路線価は毎年1回変わる可能性があり、相続する土地の評価額を求めるためには、相続する年の路線価を使う必要があるということになります。

 

土地評価の計算方法

 

土地の評価は、建物とは切り離して考えます。
倍率方式なら、固定資産税評価額に倍率をかけ算するだけなので、特別な難しさはありませんが、路線価方式の場合は、それぞれの土地条件を加味することもあり、少々複雑です。

 

路線価は、道路に面する標準的な土地の1㎡当たりの単価として、千円単位で決められます。

路線価を使う土地の評価は、計算式で表すと、
「土地の評価額」=「路線価(千円/㎡)X 地積(土地の面積:㎡)× 補正率」
となります。

 

路線価は、正方形や長方形の整形地をイメージした、あくまでも標準的な宅地を想定した価格を示すものです。
このため、土地の形状など、整形地より劣るそれぞれの土地の条件を減額するために、補正率を乗じて調整します。

 

路線価が上昇すると相続税が増える具体例

路線価が上昇すると相続税がどうなるか、具体的に数字で確認してみましょう。
被相続人が購入した時の路線価が、1平方メートル当たり30万円から、相続時には50万円に上昇したケースです。


土地は、幅が20mで奥行きが50mの整形地のため、評価額を計算する際は、補正率を1.0、つまり補正なしとします。

 

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路線価が上昇すると?

 

この例の場合、土地購入時の評価額は、3億円です。
評価額 = 路線価(千円/㎡)X地積(土地の面積:㎡)X 補正率
    =  300千円    X   1,000㎡    X  1.0
    = 300,000千円

 

一方、相続時には路線価が50万円に上昇したため、5億円にアップします。
評価額 = 路線価(千円/㎡)X地積(土地の面積:㎡)× 補正率
    =  500千円   X  1,000㎡ X 1.0
    =  500,000千円

 

つまり、路線価が約1.7倍になったため、評価額も約1.7倍に上昇です。

 

しかしながら、相続税への影響は、この上げ幅だけでとどまるとは限りません。
というのは、財産の金額によっては、相続税率が変わるからです。

仮に、相続税の課税対象がこの土地だけだとして、控除も基礎控除だけの場合を考えてみると、相続時の課税価格が3億円を超えるため、相続税率は45%から50%に上がります。
控除額があるものの、相続税額は約2憶円で、路線価上昇前の約1億円に比べ、2倍になることが分かります。

 

このように、路線価が上昇すれば、相続税を上げる影響がありますが、さらに相続税率にも影響する可能性があることに注意が必要でしょう。

 

路線価上昇の余波

 

路線価が上昇する背景には、時価の上昇があります。
時価が上がれば、固定資産の評価額もアップすることになります。

つまり、土地の相続人が毎年払う固定資産税も上昇します。

 

また、相続税額が増えれば、税金の支払いを考えなければなりません。
相続税は、原則として現金で支払う必要があります。

さきほどの例のように、相続税が1億円増えた場合、簡単に現金を工面できるでしょうか?
工面できなければ、金融機関からの借入や、最悪の場合は物納も検討しなければなりません。

 

このように、路線価上昇は、相続時だけでなく、相続後にも影響することになります。

 

まとめ

 

路線価が上昇したというニュースなどを耳にすると、評価額が上がって嬉しい気持ちにもなりますが、相続税に直接跳ね返る影響があります。
また、相続税率への影響も忘れてはいけません。

 

さらに、相続税は現金で納付しなければなりません。
相続時に納税資金が不足して、銀行融資や物納を考えなければいけないような、相続トラブルを防止するための生前対策にも、配慮が必要ですね。

 

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