戸籍の見方(編成要因が2つ以上ある戸籍)

戸籍は、見方のポイントが分かれば、相続人を見落としたり、証明できる期間が途切れていたりといった失敗を防ぐことができます。

 

相続人を確定するためには、被相続人の出生から死亡までを、連続して証明できる戸籍を取得して、確認しなければなりません。

 

このため、戸籍がいつ作られ、いつ消除(閉鎖)されたか、また、被相続人がいつ入籍し、いつ除籍されたかなど、戸籍の見方を知っておくことが必須です。

 

特に、昭和30年前後まで使われていた古い戸籍は、現在使われている戸籍とは、記載様式や記載方法が異なっています。

 

なかでも、戸籍を編成した要因が2つ以上記載されていることがあり、いつ作られたかを見間違うことも珍しくありません。

 

今回のブログでは、出生から死亡までの連続戸籍を揃える際のポイントを、特に、2つ以上の編成要因がある戸籍に焦点を当てながら、紹介します。

 

連続する戸籍が必要な理由

 

相続が発生すると、相続人を確定するために、必ず、被相続人の出生から死亡までの連続する戸籍を揃える必要があります。

 

一般的に、出生が記録された戸籍は、死亡までの間に婚姻や転籍などによって除籍や消除され、その都度、新たな戸籍が編成されていきます。

 

基本的に、新しく編成された戸籍には、両親や兄弟・姉妹が記載されません

また、以前の戸籍で死亡や婚姻などによって除籍された方、認知した記録も、新しい戸籍には転記されません

 

このため、本籍地の市区町村役場で死亡直前の戸籍を取得できるものの、通常、その戸籍だけでは、相続人の全てを確認することができません。

 

新たに戸籍ができる要因

 

戸籍上、人の一生は、出生による「入籍」に始まり、「死亡」により「除籍」されて終わります。

 

婚姻や本籍地の移動、分籍、離婚で以前の苗字に戻るための戸籍がなくなっている場合などは、その都度、新たな戸籍が作られます。

 

また、現在の戸籍は、夫婦と同姓の未婚の子どもが1単位のため、一つの戸籍に三世代が含まれてしまうような場合に、新たな戸籍が編成されます。

 

「一つの戸籍に三世代」は、子が非嫡出子を出生した場合や、子が養子をもらった場合などが該当します。

 

一方、現在の戸籍になる前は、「家」が戸籍の1単位であったため、家督相続や分家のような、時代劇でしか聞いたことのない要因も存在していました。

 

法律改正など制度の改正でも新たに戸籍が作られる

 

現代の戸籍制度は、明治5年に始まり、その後、明治19年、同31年、大正4年、昭和23年、平成6年と制度が変わり、そのたびに新しい様式に改められています。

 

したがって、本人に新たな戸籍を作る要因がない場合でも、制度改正があれば、それまでの戸籍が「消除」され、新たな戸籍が「編成」されます。

 

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戸籍編成の流れ

連続しているかは、いつからいつまでの戸籍かを確認

 

相続人を確定するには、出生から死亡までの「連続する戸籍」が必要です。

つまり、出生時の戸籍から、その後に編成された戸籍すべてを取得する必要があります。

 

除籍日や消除日から、新たな戸籍の編成日までの間が、たとえ数日でも途切れていれば、途切れた期間を証明できません。

 

つまり、出生届が受理され、死亡届が受理されて除籍となるまでの、1日も欠けることなく連続する、一連の戸籍が「連続する戸籍」です。

 

このため、戸籍を確認する際は、それぞれの戸籍が、いつ・どんな要因で編成され、いつ除籍または消除(閉鎖)されたか「読み解く」ことが重要です。

 

「読み解く」と表現したのは、現在のコンピュータ化された戸籍と違い、以前の戸籍は手書きで書かれているため、非常に読み取りづらいのです。

 

また、詳しくはあとで紹介しますが、古い戸籍では、過去に戸籍を編成した要因を、新しい戸籍にも転記していました。

このため、戸籍を編成した理由が複数記載されていることも珍しくなく、見誤りの原因となりがちです。

 

【メモ】改正原戸籍と除籍謄本

 

連続した戸籍を集める際に、改正原戸籍と除籍謄本という用語を知っておくと、混乱せずに済みます。

どちらも閉鎖された戸籍ですが、制度が変わって改製された場合は「改製原戸籍」、全員が除籍された場合は「除籍謄本」として保管されます。

 

本人がいつからいつまで在籍していたかも見落とさない

 

それぞれの戸籍が、いつ編成され、いつ消除されたかだけでなく、被相続人が、いつからいつまで在籍したかも重要なチェックポイントです。

 

たとえば、昭和2年2月1日生まれの方の出生届が受理され、初めて入籍した時の戸籍は、2月1日以前に編成されているはずです。

 

しかしながら、出生の記録は、新たな戸籍でも記載されるため、戸籍の編製日を確認しないと、その後の転籍などで編成された戸籍を見ている可能性もあります。

 

また、養子縁組によって入籍した、養子が被相続人となっている場合は、出生時の戸籍は実親の戸籍をたどらなければなりません。

 

したがって、出生時の戸籍からの連続を確かめるためには、戸籍がいつできたかだけでなく、いつ養子となって入籍したかを確認することが重要なのです。

 

複数の編成要因が記載されているときは、いつ作られた戸籍か要注意

 

昭和26年に制度が改正される前の戸籍では、新たな戸籍を編製するときに、以前の戸籍に書かれていた戸籍の編成要因すべてが転記されました。

 

このため、見ている戸籍がどの編成要因によって新たに作られたのか、分かりにくい状態が発生します。

 

このような記載方式は、現在でも取得する機会の多い大正4年式戸籍まで見られ、昭和30年代前半ころまで使用されていました。

 

複数の編成要因が記載されている具体例を、確認してみましょう。

編成要因は、「戸籍事項欄」と呼ばれる、本籍欄のすぐ左側に記載されます。

 

 

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大正4年式「戸籍事」項の具体例

この例では、①出生、②婚姻、③家督相続、④転籍、⑤死亡、⑥戸籍の消除について記載があります。

このうち、②婚姻、③家督相続、④転籍は、いずれも戸籍の編成要因です。

 

つまり、連続する戸籍としては、出生により入籍した戸籍、婚姻で編成された戸籍、家督相続で編成された戸籍、転籍で編成された戸籍の4種類あることになります。

 

この例に記載されている戸籍の編成要因のうち、②と③は、過去に戸籍が編成されたときのものであって、この戸籍の編成要因ではありません。

 

最後の④転籍が、最も新しい戸籍の編成要因となるため、この戸籍で証明できる期間は転籍日以降だけです。

 

したがって、かりに婚姻が戸籍の編成要因と読み違うと、転籍日前日までの、婚姻や家督相続で編成された戸籍を取得し損なう恐れがあります。

 

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戸籍が新しく編成される要因と連続する戸籍の種類

このように、古い戸籍を読み解く場合は、特に、戸籍の編製要因を取り違えないようにしなければなりません。

 

まとめ

 

戸籍は、見る機会も少なく、見方に慣れていない方が圧倒的に多いと言えます。

市区町村役場で大正4年式戸籍を取得しても、どこをどう見れば良いか、手書きの文字は小さく、判読しにくいこともあって、見誤る事態も起こりがちです。

 

相続人を確定する際は、出生から死亡まで、戸籍の日付が連続しているか、被相続人が連続して在籍しているかが確認のポイントです。

 

また、読み間違えないためには、戸籍の編成要因や編製日、消除日、除籍日などを、じっくり「読み解く」ことが大切です。