多くの方が自分の死後も、先祖から受け継いだ財産や自分が築いた財産を、有効に活かしてほしいと願っています。
そんな思いを叶えるためには、相続に自分の意思を反映させることができ、親族間のトラブルを避けることもできる遺言書を作成しておくことがおすすめです。
自分一人で完結できる自筆証書遺言は、作成や保管のデメリットが改善され、利用しやすくなっています。
遺言で思い通りに指定でき、自筆証書遺言なら負担が少ない
遺言では、相続人それぞれの財産割合や相続させる財産など、自分が望む財産の分け方を指定できます。
遺言によって、必要とする方が必要な財産を相続できれば、事業の承継、自宅の登記や居住なども円滑・円満に進めることができます。
なかでも自筆証書遺言なら、自分一人で手軽に作成できるうえに、作成した遺言書を役所に保管してもらうこともできるようになりました。
自筆証書遺言は、費用がかからず、他人を煩わすこともなく自分一人で完結できるうえに、書き直しも自由なことが大きな特徴です。
ただし、何を書いても良いわけではなく、形式や、相続人に認められる「遺留分」など法的な有効性についての注意が必要です。
また、すべてを自筆で書く必要がありましたが、2019年からは、一部をパソコンで作成することなどが認められ、自筆負担を少なくできます。
さらに、作成した自筆証書遺言は、法務局に保管を依頼できる選択肢ができたために、より利用しやすくなっています。
民法改正で手書きが少なくて済む
2019年から一部をパソコンで作成することができるようになったと書きましたが、もう少し詳しく紹介しましょう。
新たにパソコンで作成することなどが認められたのは、財産の明細書である「財産目録」です。
パソコンを利用すれば、土地や建物などの不動産、預貯金などの明細を手軽に整理でき、修正も容易です。
また、パソコンによる作成だけでなく、家族が代筆で作成しても問題なく、既存資料のコピーで代用も可能です。
既存資料としては、不動産の全部事項証明書や、金融機関の通帳のコピーなどを利用できます。
ただし、自筆以外で作成した財産目録には、1枚1枚に遺言者自身の署名と押印が必要です。
法務局に保管を依頼できる
パソコンの利用と同様、民法改正によって、作成した自筆証書遺言を法務局に保管してもらうことができるようになっています。
それまでは、遺言を自分で保管しなければならず、死後に発見されにくいことや、隠ぺいや改ざんされやすいことなどが問題視されてきました。
民法改正では、これらのデメリットを解消できる仕組みとして、法務局に保管を依頼できる選択肢が新たに加わることになりました。
この制度は、2020年7月10日から始まったもので、法務局が、自筆証書遺言としての形式を審査し、保管してくれるものです。
法務局からは、保管していることについての証明書を発行してもらうことができ、遺言書の画像情報は全国の法務局で共有されます。
相続人が遺言書の開示を請求すれば、全国にある地方法務局で閲覧が可能になります。
また、相続人の一部が遺言内容を閲覧した場合は、他の相続人にも遺言書の内容が知らされるため、相続人どうしの公平性も保たれます。
遺言者自身が保管する場合とは違い、開封するための家庭裁判所への検認手続きも必要ありません。
まとめ
遺言を作成しておけば、相続に自分の意思を反映させることができ、親族間のトラブルを避けることもできます。
遺言には3種類ありますが、その中でも自筆証書遺言なら、自分一人で完結でき、あとで書き直すことも自由にできます。
2019年からは、財産目録をパソコンで作成して自筆部分を減らすことが認められるなど、全文自筆の負担も軽減されています。
最近では「終活」が注目され、財産の整理やエンディングノートを始める方も増え始めています。
遺言書の作成は、終活で行うべきことの一つに挙げられているように、相続を円滑にするための意思表示です。
子孫に自分の人生を伝えるためにも、自筆証書遺言を作成してみてはいかがでしょうか。