袋地は、農地でも宅地でも、公道との往来ができなければ利用できなくなってしまうため、所有者には通行権が認められます。
ただし、通路の広さは、車が出入りするほどの幅が当然認められるわけではなく、農業を営むにしても宅地化するにしても、難しい問題を抱えることになります。
袋地になるような分割は避けることが賢明ですが、袋地になってしまった農地を利用する場合の解決策を紹介しましょう。
袋地とは
「袋地」は、ほかの土地に囲まれて公道との間を往来できない土地のことで、河川や沼などに遮られている場合は「準袋地」と呼ばれます。
使い勝手が良くないため、土地の評価が大幅にダウンし、買い手が現れないことも珍しくありません。
袋地になるとどうなる
準袋地も含め、袋地には建物を建築することができず、農業を続けることも簡単ではありません。
農地の場合は、農作業用の機械や運搬用の車が出入りできなければ、事実上、農業を営むことは困難になってしまいます。
特に、農地は袋地が多いと言われ、相続などの際の分割や、道路に面した部分の宅地化や売却などによって、一層袋地が発生しやすい状況にありますす。
今後は、2022年の生産緑地の指定期限切れを迎えることから、固定資産税のアップ前に手放す動きも加速しそうな気配です。
一方、宅地の場合は、建築基準法により、公道に2m以上の間口の広さで接していない土地には、建物を建築することができないとされています。
公道に接していなければ、火災や地震などの際に非難が困難で、消防車や救急車などの緊急自動車がたどり着くことができない危険も伴います。
このような土地を売却しようと思っても、一般的な買い手が現れることは滅多になく、価格も近隣土地の半値以下になってしまうかもしれません。
袋地の囲繞地通行権
袋地が利用できない土地となってしまわないように、袋地の所有者には、民法で必要最低限の通行権が認められています。
これは「公道に至るための他の土地の通行権」と呼ばれるもので、登記の必要もなく、袋地の所有者に「当然認められる」のです。
なお、この通行権は、一般的に「囲繞地通行権」として知られています。
この通行権は、袋地や囲繞地の所有者が変わっても消滅することはなく、いずれが売却された場合も、通行権が承継されます。
ただし、この通行権は、通行する土地(囲繞地)所有者の犠牲によって成立するため、袋地所有者の通行にとって必要で、かつ、損害が最も少ない範囲に限定されます。
また、囲繞地の所有者に損害が発生する場合は、袋地の所有者は、賠償金に当たる「償金」を支払う必要があります。
なお、「償金」については、囲繞地と分割した結果で生じた袋地の場合、支払が不要とも定められています。
建物を建てることができる?
民法によって、公道までの通行が認められるなら、人や自転車、自動車、トラクターなども通行でき、建築基準法の接道義務は無関係ではないかとも思われます。
しかしながら、この通行権は、無制限に認められるものではなく、通常は人や自転車の通行程度と解されています。
なぜなら、通り抜けする土地の所有者にしてみれば、ただでさえ犠牲を払わなければならないわけですから、損害を被るような通行までは認められないのです。
最高裁の判決でも、囲繞地通行権が与えられるにしても、建築基準法の接道要件を満たさなければならないような通行権が「当然に認められると解することはできない」とされています。
つまり、建築基準法の接道義務要件を満たすことができるとは限らないのです。
道路側を売却したら袋地になってしまった農地を利用したい場合の解決策
ここまで見てきたように、囲繞地通行権があるからと言って、袋地にハンディキャップがあることは確かです。
この囲繞地通行権を巡る判例は多く、裏返せば、トラブルに発展するケースが多いことの証拠でもあります。
では、相続した農地が袋地であった場合や、公道側を分割して売却したら袋地が発生してしまう場合など、袋地を利用できるようにする解決策はあるのでしょうか。
通行地役権
袋地と囲繞地の所有者の話し合いで合意すれば、「通行地役権」契約を結んで、通行する場所や道路幅を設定することができます。
契約は、有償でも無償でも両者の合意があれば成立し、囲繞地通行権のような必要最低限の場所や通路幅に限らず、両者の合意で設定できます。
ただし、通行地役権は通行できる権利であって、駐車はできないため、その必要があれば「賃借権」を設定することで解決可能です。
この権利については、「当然認められる」囲繞地の通行権とは異なり、第三者に対抗するためには共同での登記が必要になります。
この場合は、できるだけ登記しておくことをおすすすめします。
等価交換や通路部分の購入
袋地を解決する方法として、通路部分と袋地の一部を交換する方法や、通路部分を購入する方法があります。
囲繞地所有者の合意が必要なほか、分筆を行うための測量、所有権移転登記手続きなどが必要で、かなりの労力や費用、期間がかかりますが、確実な方法ではあります。
ただし、農地の場合は、交換するにしても購入するにしても、農地法の許可が必要となるため、決して安易に考えないことが大切です。
まとめ
袋地は、いずれにしても利用しにくく、相続や売買などをきっかけとして、土地の維持管理が難しくなることが少なくありません。
このような土地の分割や分筆、売買、賃貸などに際しては、自動車や中大型の農機具などの通行や、建築基準法の接道義務要件などについて、しっかり確認しておくことが重要です。