不動産の所有者が亡くなった場合は、早めの相続手続きがおすすめです。
亡くなった方名義のままにしておくと、相続関係が複雑化すれば登記手続きが難航し、売買や賃貸など不動産の有効活用に支障が生じます。
亡くなった方名義の不動産を相続する場合は、戸籍などの必要書類をそろえて、所有権移転登記申請手続きを行います。
この手続きは司法書士に依頼することが一般的ですが、登記所に何度か足を運ぶ覚悟があれば、自分でもできます。
必要な書類は法務局のホームページから確認でき、ダウンロードした申請書は、記入例を確認しながら作成できます。
今回のブログでは、相続した不動産の所有権移転登記手続きを、相続人自身で行った事例について紹介します。
財産放棄には遺産分割協議書が有効
「父親が亡くなり、自宅や農地、山林などの遺産があるものの、婚姻で実家を離れた姉妹は、遺産を放棄すると言ってくれています。」
「でも、どんな手続きをすれば良いのか分からないので相談したい」との依頼で始まりました。
遺産の放棄には、相続放棄と財産放棄がありますが、相続放棄を行うには、相続発生から3カ月以内に手続きが必要です。
亡くなったのは7カ月前で、相続放棄の期限には間に合いません。
ここで問題になるのは遺産に負債が多い場合で、相続放棄しなければ相続人が返済義務を負ってしまいます。
しかしながら、亡くなった方に負債はなかったため、姉妹は相続放棄の必要はなく、財産放棄の手続きで問題ないことが判明しました。
相続人のうち一人に相続させたい場合は、残りの相続人が財産放棄をすれば良く、このようなケースでは、遺産分割協議書が有効な解決策です。
遺産分割協議書で、「相続人である長男〇〇 〇〇がすべての不動産を相続する」のように整理すれば、姉妹は財産放棄したことになるのです。
所有権移転登記に必要な書類と手続きの方法
不動産を相続する場合、亡くなった方の単独名義であれば、所有権移転登記の申請手続きを行います。
ちなみに、共有名義の場合は「持分全部移転登記」を申請することになります。
登記申請の手続きについては、法務局のホームページで詳しく紹介されていて、必要書類や申請書、申請書の書き方も解説があります。
必要書類や書き方は、遺言がある場合や遺産分割による場合、法定の割合で相続する場合などで異なるため、利用の際は注意が必要です。
なお、このブログでは、遺産分割協議による登記申請手続きとして紹介します。
必要書類
遺産分割協議によって相続した場合、登記手続きに必要な書類は以下のとおりです。
1 登記申請書
2 申請書に添付する書類として、以下が必要です。
- 被相続人の出生から死亡までの戸籍謄本や除籍謄本、住民票除票など戸籍書類
- 相続人全員の現在の戸籍謄本
- 遺産分割協議書
- 相続人全員の印鑑証明書
- 不動産を相続する方の住民票の写し
- 代理人が申請する場合は委任状
- 登録免許税(通常は収入印紙)
登記申請手続き
遺産を相続する方が全員で申請する必要がありますが、委任状によって、相続人のうちの一人に手続きを委任することができます。
登記申請書の提出先は、土地や建物を管轄する登記所(法務局や支局)ですが、書類一式が揃った段階で相談しておくことがポイントです。
事前の相談は予約制で、揃えた書類をチェックしてもらうことができるため、必ず利用したい手続きです。
申請は、直接窓口へ持参する方法のほか、郵送する方法やオンラインで申請する方法もあります。
所有権移転登記申請書の書き方
所有権移転登記申請書は、法務局のホームページからダウンロードできます。
遺産分割協議書によって、相続人の一人が相続する所有権移転登記の書き方を、具体的に記載例で紹介します。
申請書の書き方では、登記の目的を「所有権移転」とすることが、重要なポイントです。
申請書への記入自体はそれほど難しくはありませんが、記載例の「⇦」で記載したような、記入の際に気を付けたい事項があります。
特に注意したい点は、登録免許税の計算と不動産の表示の書き方です。
登録免許税の計算方法は、法務局のホームページで詳しく説明されていますので、説明にしたがって計算しましょう。
また、不動産の表示については、登記簿謄本または登記情報を入手して、申請書に正確に転記することが重要です。
なお、登記情報提供サービスを利用して登記情報を入手する場合は、PDFファイルが提供されます。
このため、不動産の情報を、登記情報ファイルからコピーして申請書に貼り付ければ、入力間違いを減らすことができます。
まとめ
依頼者に、所有権移転登記の手続きや必要書類を説明したところ、自分で登記手続きしてみたいとのご希望でした。
このため、遺産分割協議書などの作成をお手伝いしたものの、申請書の作成や事前相談、窓口申請など、手続き全般を依頼者ご自身で行いました。
登記所へは、事前の相談と申請時、登記識別情報通知書の受取時と、合計3回足を運ぶ必要があったものの、難なく登記が完了できました。
大切な遺産の登記をご自身でできたという喜びと、子孫に財産を繋ぐことができるとの安心感が得られ、費用面でも満足いただく結果となりました。