自分でできた。相続した共有不動産の持分全部移転登記

一般的に、不動産を相続する場合は所有権移転登記を行うことになりますが、共有名義の不動産については、少し異なります。

 

共有名義の不動産を相続する場合は、亡くなった方の所有権の持ち分を移転する手続きになります。

 

なお、共有名義の不動産を相続する場合は、将来的な売却処分などで共有者の承諾が必要なため、共有者の確認が不可欠でしょう。

 

先日、父親と共有名義になっていた自宅を相続することになった方から、自分で手続きできないかと相談がありました。

 

事情を伺ったところ、単純な手続きで済むと判断できたため、手続きや提出書類の入手方法などを紹介したところ、無事に登記が終わったと連絡が入りました。

 

今回のブログでは、このような共有名義の不動産を相続する方々の参考に、自分で行う場合の手続き方法について紹介します。

 

共有とは?

 

不動産を所有する方法として、単独で所有する方法のほか、夫婦や兄弟、知人同士などが共同で所有する方法があります。

 

たとえば、夫婦や兄弟で、それぞれが資金を出し合って自宅を新築する場合や、友人同士で別荘を購入する場合などが、良くあるケースです。

 

このような場合は、出した資金に応じて所有権を分け合うことが多く、分け合う所有権の割合は共有持分と呼ばれます。

 

たとえば、夫婦で半分ずつ資金を出し合った場合などは、それぞれの持分を2分の1として不動産の所有権を登記することになります。

 

この状態を共有名義の不動産と呼び、売却など不動産を処分したい場合には、共有者の承諾がないと実行できません。

 

共有者が亡くなった場合、相続人はその方の持分を相続することになるため、単独で所有している不動産とは相続登記の手続きが異なります。

 

不動産の共有持分を相続した場合は持分全部移転登記

 

相続登記は、不動産ごとに行うのではなく、亡くなった共有者一人一人について行う必要があります。

 

共有者がいる不動産でも、遺言書での指定がなければ、遺産分割協議を行って相続人が引き継ぎます。

この場合、相続登記の手続きを行うのは、共有持分を相続した相続人ということになります。

 

基本的な手続きは、所有権移転登記手続きと変わりませんが、登録免許税は、持分の割合に応じた額になるとの違いがあります。

 

また、登記申請書に記載する「登記の目的」については、「所有権移転」ではなく「〇〇持分全部移転」と記載します。

 

このとき、〇〇は亡くなった方の氏名を意味します。

 

持分全部移転登記の記載例

 

亡くなった父親の共有持分が2分の1、相談者である子の持分も2分の1として、父の持分全てを子が相続する場合の例を、図で確認しましょう。

所有権移転登記手続きと異なる部分については、黄色のマーカーで表示してあります。

 

登記の目的は、「(被相続人の氏名)持分全部移転」と記載することに注意します。

 

申請人については、相続する持分を先に記し、相続する方の氏名を記載します。

ちなみに、2名以上で相続する場合は、それぞれの共有持分を氏名の前に記入します。

 

なお、添付書類は、所有権移転登記手続きと同様の書類を準備すれば良く、共有不動産について特別なものはありません。

 

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持分全部移転登記の記載例

 

所有権移転と持分全部移転を一括で申請する方法

 

亡くなった方が単独で所有していた場合の所有権移転登記と、共有不動産の持分全部移転登記は、同じ登記申請書にまとめて記載することもできます。

 

たとえば、建物は父子で2分の1ずつ共有、土地は父親の単独で所有していた不動産を相続する場合も、申請書が1枚で済む方法です。

 

具体的な記載例を、図で確認しておきましょう。

注意すべき部分は、黄色マーカーで記したとおりで、登記の目的は「所有権移転及び(被相続人の氏名)持分全部移転」と記載します。

 

また、相続人の氏名の前には、「持分後記記載のとおり」と書いておき、不動産の表示部分で、相続する土地の持分を記載します。

 

また、建物と土地の課税価格は、それぞれ不動産の表示部分に記載し、課税価格としては合計額だけを記載します。

 

なお、土地の価格は、評価額の総額ではなく、持分割合に応じた評価額を記載します。

 

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一括申請の記載例

 

 まとめ

 

不動産を相続する場合は、一般的に所有権移転登記、また、共有不動産であれば持分全部移転登記を行います。

 

相続人の合意が得られている一般的な相続なら、それぞれの必要書類が準備できれば、自分で登記申請手続きを行うこともそれほど難しくはありません。

 

ただし、司法書士のような専門家ではありませんから、記載ミスも生じやすいため、登記申請前に法務局への相談をおすすめします。

 

申請手続きに時間や労力はかかるものの、費用を抑えることができ、亡くなった方の財産を登記できた達成感もあることでしょう。

 

なお、不安や疑問がある場合、複雑な状況などの場合は、専門家に相談することをおすすめします。