不動産の相続登記で利用できる登録免許税の免税制度

不動産を相続する場合、相続税がかかるかどうかは心配になるものの、登記でかかる税金まで思いが巡らないことが一般的です。

 

税率としては高くないものの、決して無視できる金額ではないため、相続登記の際に慌てないように把握しておくことが大切です。

 

今回のブログでは、不動産を相続する場合に、登録免許税が期間限定で免税になる制度を紹介します。

そのままにしてきた相続登記があれば、実行する良い機会にもなりそうです。

 

相続登記に関する免税措置は2種類

 

平成30(2018)年の税制改正によって、相続による不動産の所有権の移転登記については、期間限定で2種類の免税措置が設けられました。

 

数次相続に関する登録免許税

 

一つ目は、相続した方が、相続登記をしないまま亡くなってしまっている場合について、相続登記の登録免許税を免税する措置です。

たとえば、祖父名義の土地を孫が相続するような2次相続の場合に、登録免許税の負担が減ることになります。

 

少額の土地に関する登録免許税

 

二つ目は、一定の場所にある土地を相続する場合に、固定資産税評価額が10万円以下の土地なら、登録免許税が免除される措置です。

 

1次相続分の登録免許税の免税

 

たとえば、祖父A名義の土地を父Bが相続したものの、Bが相続登記をしなかった場合、孫Cが相続する際の所有者は祖父Aのままです。

 

このような場合、孫Cは祖父Aから直接の名義変更手続きを行うことができず、まず、祖父Aから父Bへ所有者を変更しなければなりません。

 

つまり、2段階の相続登記が必要になるため、、2回分の登録免許税を支払わなければならないことになってしまいます。

 

この場合の登録免許税については、期間限定で、祖父Aから死亡した父Bへの相続登記分が免税になる措置が設けられました。

 

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1次相続分の免税イメージ

免税の対象

 

平成30年4月1日から令和3年3月31日までに登記申請した場合が、免税の対象です。

通常であれば、相続による所有権の移転登記には、固定資産税評価額に対して0.4%の登録免許税が課されます。

 

少額の土地に関する登録免許税の免税

 

相続した土地について相続登記を行う場合、つまり、所有権の移転登記を行う場合に、一定の条件に当てはまる土地の登録免許税が免税となります。

 

一定の条件としては以下の3つがあり、すべての条件に該当する場合は、相続登記の登録免許税がかかりません

 

・指定されている地域にあること

・市街化区域以外であること

・土地の固定資産税評価額が10万円以下であること

 

なお、市町村の行政目的のために、相続登記の促進を特に図る必要がある土地が対象とされています。

 

具体的な地域については、それぞれの法務局や地方法務局ホームページに掲載されていますが、該当する登記所に確認することをおすすめします。

 

たとえば、東京都の場合、23区では、荒川区や江戸川区、北区、墨田区、台東区などの一部地域が指定されています。

 

また、23区以外では、青ヶ島村や大島町、奥多摩町などの全部、狛江市や昭島市、あきる野市、稲城市、青梅市、国立市など広範な地域が指定されています。

 

免税の対象

 

平成30年11月15日から令和3年3月31日までの登記申請が対象です。

なお、通常であれば、相続による土地の所有権の移転登記には、固定資産税評価額に対して0.4%の登録免許税が課されます。

 

免税になるための登記申請書の書き方

 

2種類の免税措置は、登記申請書に免税の根拠となる法律の条項を記載すれば、適用されます。

 

1次相続分の免税については、「租税特別措置法第84条の2の3第1項により非課税」と記載します。

また、少額土地の免税については、「租税特別措置法第84条の2の3第2項により⾮課税」と記載します。

 

この記載がないと、免税とならないため注意が必要です。

 

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【登記申請書の記載例】登録免許税の免税

まとめ

 

今回紹介した免税制度は、所有者不明土地が社会問題化した背景にある、相続登記を促進することが大きな目的です。

 

特に、地方にある実家で代々引き継がれてきた、農地や林地、原野といった固定資産税評価額が低い土地を相続した場合に利用価値が高い制度です。

 

期間限定の免税となっているため、これまで未登記の相続不動産がある場合に、所有者名義を変える良い機会と言えそうです。