相続した土地に家を建てられない?公図を見たら敷地と道路の間に水路や昔の道

敷地は道路に接していなければ、家を建てることができません。

道路に接していなければ袋地で、建築基準法で定められている接道義務を満たすことができません。

袋地には通行権が認められるとはいえ、通常では徒歩など必要最小限の幅しか認められることはありません。

 

家を建てようとしたら、敷地と道路の間に昔の道や水路があることがわかり、このままだと工事ができないと言われてしまった。

農地を転用する場合などは、この例のように実際には見当たらないのに、公図上に道や水路の記載があることも珍しくありません。

このような道や水路は、法定外公共物として市町村が管理していることが一般的で、使用許可などを得ることによって解決できる可能性があります。

 

今回のブログでは、法定外公共物とは何かや使用の許可申請などについて紹介します。

 

法定外公共物とは

 

普段何気なく利用したり、お目にかかったりしている道路や用排水路、湖沼、池や沼などは公共物です。

これらの公共物も、管理の仕方で大別すると2種類に分けられます。

一つは、管理の方法などが道路法や河川法、下水道法など特別な法律によって定められている法定公共物です。

そして、もう一つは、これらの特別法の対象に該当しない、法定外公共物と呼ばれるものです。

 

法定外公共物としては、昔から生活道路などとして使われていた里道、田畑へ水を引くために掘られた水路や自然に発生した水路などがあります。

里道は、農道や山道、集落の中を結ぶ昔からの生活道路などだったもので、新道の開通や土砂崩れ、耕作放棄などに伴って、機能を失っているものもあります。

また、水路としては、灌漑用水路や農業排水路などが代表的です。

土地の境界がはっきりしないケースや流路が変わっているケース、実質的に機能を失っているケースも見受けられます。

 

所有者と管理者はだれ

 

以前は、法定外公共物の管理を国が行っていたものの、2000年の地方分権推進計画によって市町村に移譲されたため、基本的に所有者と管理者は市町村となっています。

 

どこにあるか確認する方法

 

法務局で入手できる公図や旧公図(和紙公図)を見ると、登記上の存在を確認することができます。

公図上では、「道」や「水」と記載され、登記された土地ではないため、地番がない無番地となっています。

また、公図を作成する元となっている旧公図を見ると、里道は赤、水路は青で着色されているため、容易にその存在を確認できます。

旧公図は、明治時代に和紙で作成されたもので、和紙公図とも呼ばれ、赤く塗られた里道は赤線、青で塗られた水路は青線などと呼ばれています。

 

 

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公図で見る里道や水路


現在も機能しているかどうかの確認方法

 

すでに紹介したとおり、法定外公共物のなかにも現在も機能しているものと、機能を喪失して公共の用途には用いられていないものがあります。

現在も機能しているかどうかは、隣地として接している場合の対策を考えるうえで重要です。

 

所有・管理を行っている市町村には図面が備え付けられているため、窓口に申し出れば閲覧や図面のコピー入手も可能です。

法定外公共物の有無や機能の有無などをまとめて知ることができるため、市町村での確認が最も確実です。

ただし、担当部署は市町村によって異なるため、それぞれの窓口を確認したうえで相談に行くことがおすすめです。

 

そのまま使用したい場合

 

現在も機能している法定外公共物については、その使用を申請することによって許可を受けることが可能な制度があります。

機能を確保するために構造物を設けたりして占有することは認められないものの、機能を妨げない範囲内であれば、基本的には使用が許可されることが一般的です。

それぞれの市町村ごとに、条例などによって要件や手続きなどが定められていますので、詳しくは窓口での確認が必要です。

なお、境界確定を行うことが前提のほか、区長や自治会長、水利組合や土地改良区など水利関係者、隣接地所有者、利害関係者などの同意が必要となります。

 

この許可を得ることができれば、所有地と公共道路との間に水路や里道がある場合でも、新築や建て替えが可能になります。

 

機能を失っている場合や別の場所に移し替えたい場合

 

一方、すでに法定外公共物としての機能を失っている場合は、用途廃止の申請を行う方法があります。

市町村によっては、廃止が認められた場合は払い下げを受けることができることもあります。

 

また、機能が残っている場合でも、同じ機能を保ったまま敷地内の他の場所に移動する、付替を申請する方法もあります。

付け替えた道や水路を市町村に寄付することによって、公図上の道や水路を譲り渡してもらえるケースもあります。

 

まとめ

 

所有地と公道との間に地番のない法定外公共物が存在する場合は、所有者や管理者の許可を得ることによって利用可能となることが一般的です。

法定外公共物については市町村が管理していることが一般的ですが、国や都道府県などが管理しているケースもあります。

この場合は、基本的には財務局や財務事務所が相談窓口になりますが、都道府県や国土交通省、農林水産省などが管理していることもあります。

少々手続きが面倒になるため、不安な場合や時間を割けない場合などは専門家に相談することをおすすめします。