相続税の税制改正について2記事を更新してきました。
今回は改正後の相続税対策の注意点と相続税の計算方法にフォーカスした内容をお届けします。
改正後の相続税対策の注意点
2021年度の相続税改正はそれほど大きなものではありませんでしたが、近年の改正内容まで含めると、相続税の対象者は確実に増えています。
わずかな金額差で相続税の対象とならないよう、また高い税率が適用されないように、改正後の相続税対策は次の点に注意してください。
生前贈与を活用する
相続財産を減らせば相続税も低くなるため、生前贈与は有効な相続税対策になります。
1年間の贈与額は110万円まで非課税になり、毎年繰り返せば1,000万円以上の非課税贈与も十分可能です。
他にも家族間の贈与に使える特例があるため、詳しい条件は税理士に尋ねてみるとよいでしょう。
生命保険を活用する
死亡保険金には「500万円×法定相続人の数」で計算される非課税枠があるため、現金や預貯金を相続するより相続税は安くなります。
一定額の貯蓄があれば、生命保険に回すことも検討してください。
小規模宅地等の特例が使える状況にする
自宅敷地の評価額が8割引きになるため、小規模宅地等の特例は強力な相続税対策になります。
ただし、基本的に同居親族が相続して住み続けることが条件になるため、自宅相続については家族同士で話し合っておく必要があるでしょう。
条件によっては別居する相続人でも特例を使えるため、自宅の評価額計算とともに税理士への相談をおすすめします。
遺言書を作成する
相続発生後にできる相続税対策もいくつかありますが、家族が詳しくなければ重い相続税が課されてしまう可能性もあります。
相続税がもっとも安くなる遺産分割方法を検討し、遺言書として残すことも有効な相続税対策になります。
相続人同士のトラブル回避にもなるため、確実な遺言書となるよう公正証書遺言にしておくとよいでしょう。
相続税をシミュレーションしておく
相続税は財産の内容や分け方、家族構成などに影響されるため、どのパターンがもっとも安くなるか、何度もシミュレーションしておく必要があります。
相続税を計算できるサイトなどを活用し、概算だけでも把握するようにしてください。
相続税の計算方法
相続税の計算はそれほど難しくないため、以下の手順で計算すれば自分で相続税を算出できるようになります。
- 正味の遺産総額の計算
- 課税遺産総額の計算
- 相続税の総額を計算
- 実際の相続割合に従った各人の相続税を計算
まず現金や預貯金などのプラス財産から借金などのマイナス財産、非課税財産などを差し引いて正味の遺産総額を計算します。
次に基礎控除を差し引いて課税遺産総額を計算し、一旦法定相続分どおりに分割したとみなして、「相続税の速算表」から各人の課税額に対する税率を適用させます。
各人の税額を合計すると相続税の総額がわかるので、最後に「相続税の総額×実際の相続割合」を計算して相続人それぞれの相続税額を算出します。
なお、相続税の速算表は国税庁ホームページを参照してください。
2021年度の税制改正には新型コロナウイルスの影響などもあり、極端な増税にはならなかったようです。
ただし、一部には減税と呼べる措置があるものの、特例期間の延長などが多く、コロナ禍の収束とともに打ち切られる可能性もあります。
2015年以降の状況をみても増税傾向にあるといえるため、相続税や贈与税の改正には敏感になっておくべきかもしれません。
特に相続税対策は各種特例や控除との関連が強いため、古い情報のまま対策すると却って増税になるケースもあるでしょう。
近い将来の税制にもやや不安が残るため、今後の相続税対策は税理士を交えてのプランニングをおすすめします。