戸籍の見方(郵送請求)

身近な方が亡くなって相続が始まると、故人や相続人の戸籍が必要になります。

 

現在の相続で一般的に見られる戸籍は、大正4年式戸籍から始まるケースが多く、その後に戸籍制度が複数回改正されています。

 

このため、昭和32年頃までに出生した方の場合は、出生から死亡までを確認するためには、4種類から5種類になるケースが多いと言えます。

 

すべて近くの市区町村で取得できれば良いのですが、他県への転居や転籍などがあれば、複数の自治体から戸籍を取得しなければなりません。

 

このような場合に役立つのが、戸籍の郵送請求です。

 

各市区町村によって異なる部分もありますが、ほぼ同様の郵送請求手続きによって、1週間から10日程度で戸籍が取得できます。

 

一般的には利用する機会が少ないものの、相続手続きなどで戸籍が必要な場合には、とても便利な方法です。

 

請求できる人

 

戸籍には、最新の戸籍以外に、除籍や改正原戸籍、戸籍の附票などがあり、それぞれに請求できる人が定められています。

 

故人のプライバシーに関わる請求ですから、請求できる人は厳格に定められているものの、委任状があれば第三者でも取得可能です。

 

単純に言えば、請求者からみて、配偶者や子、孫、父母、祖父母が記載されている戸籍や附票であれば、「本人など」として請求できます

 

戸籍

 

最新の戸籍や除籍、改製原戸籍については、次のように定められています。

 

本人など

 

戸籍法第10条による「本人等」からの請求です。

本人以外では、戸籍に記載されている配偶者や親(直系尊属)、子、孫(直系卑属)が請求できます。

 

なお、兄弟姉妹は、婚姻などで戸籍が別の場合は請求できず、第三者としての請求手続きが必要で、通常、委任状が必要となります。

 

また、取得しようとする戸籍から、このような親族関係が確認できない場合は、別途、すでに取得している戸籍などの写しを提出する必要があります。

 

第三者

 

戸籍上の配偶者、親や子孫などの「本人など」に該当しない場合は、すべて第三者として請求する手続きが必要です。

 

プライバシー保護のため、第三者からの請求については厳格な審査があり、適切な請求理由を明らかにする必要があります。

 

戸籍の附票の写し

 

戸籍の附票の写し、または戸籍の附票の除票の写しを請求できる方は、次のように定められています。

 

それぞれに記載されている本人以外では、そこに記載されている配偶者や直系尊属、直系尊属に限られます。

 

なお、取得しようとする写しで、このような親族関係が確認できない場合は、別途、すでに取得している戸籍の写しなどを提出する必要があります。

 

また、代理人も請求できますが、この場合は委任状が必要で、戸籍の第三者請求と同様、適切な請求理由を明らかにする必要があります。

 

使いみち

 

この記述は、戸籍などを過不足がないように返送してもらうために、とても重要な部分です。 

 

自己の権利行使または自己の義務履行の場合

 

この場合は、権利または義務の発生原因に加え、その内容や、戸籍の記載事項を確認する必要がある理由を明らかにしなければなりません。

 

国または地方公共団体の機関に提出する必要がある場合

 

この場合は、戸籍謄本などを提出する具体的な理由を、明らかにしなければなりません。

   

請求方法

 

市区町村それぞれのホームページで、郵送による請求方法について紹介されていますが、一般的なやり方について紹介します。

 

なお、送付先住所や、市区町村独自の規定など、詳細についてはそれぞれのホームページを確認してください。

 

必要書類を同封して郵送

 

請求時には、封筒に「請求書」「本人確認(返送先確認)書類の写し」「手数料」「切手を貼付した返信用封筒」の4種類を同封して、各市区町村の郵送請求窓口に郵送します。

 

一般的に、郵便局に依頼するか、ポストに投函してから戸籍が届くまでに、1週間から10日程度かかります。

 

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郵送による請求方法

 

 請求書

 

郵送用の「戸籍証明書等請求書」がPDFなどで提供されていることが一般的ですが、ダウンロードできない場合は、以下の内容を便せんなどに明記します。

 

1 本籍

2 筆頭者の氏名、生年月日

3 証明書の種類(個人事項証明書、抄本、身分証明書、附票が必要な場合は、必要な方の名前)

4 通数

5 使いみち(請求理由)

5 請求者の住所、氏名、筆頭者との関係、昼間連絡の取れる電話番号

 

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戸籍証明書等請求書(郵送用)

 

本人確認(兼・返送先確認)書類の写し

 

請求者の本人確認用と、返送先の確認用を兼ねて、運転免許証やマイナンバーカード、健康保険証などのコピーを同封します。

 

なお、コピーの際に、現住所と氏名の記載のある部分が含まれている必要があることに注意が必要です。

 

手数料

 

郵送請求に必要な手数料の合計金額分を、郵便局で「定額小為替」を購入して同封します。

 

なお、定額小為替には、住所や氏名の記載欄などがありますが、何も記入してはいけません。

 

また、定額小為替1枚について100円の手数料がかかり、発行日から6ヶ月以内のものでなければなりません。

 

市区町村によっては、定額小為替以外にも、普通為替や現金書留による納付を受け付けていることもあります。

 

・一般的な1通当たり「手数料」

 

一般的に、戸籍謄本などの1通あたり手数料は、全部事項証明書(戸籍謄本)や個人事項証明書(戸籍抄本)では450円です。

 

また、除籍全部事項証明書(除籍謄本)や除籍個人事項証明書(除籍抄本)、改製原戸籍謄本、改製原戸籍抄本では、750円です。

 

一方、戸籍の附票の写しや戸籍の附票の除票の写しなどは、300円です。

 

ちなみに、一般的な相続で必要な戸籍を1セット請求する場合は、手数料で4,000円から5,000円程度かかります。

 

切手を貼付した返信用封筒

 

封筒に記入する返送先は、原則として請求者の住所登録地(現住所)を記入しておきます。

 

戸籍などが返信される時の重さを考慮して、重さ制限までに少しゆとりがあるような金額の返信用切手を貼付した、返信用封筒を同封します。

 

返信用の切手代が料金不足の場合は、あらためて不足額が請求されることになり、それまで発送されないことになってしまいます。

 

なお、利用できるかどうか、事前に市区町村に確認する必要がありますが、特定記録郵便やレターパックを利用すると、配達状況が確認でき安心です。

 

その他、必要に応じて必要な書類

 

第三者からの申請の場合は、委任状が必要です。

 

なお、委任状をパソコンで作成する場合でも、本籍や筆頭者名、委任者の氏名については、必ず委任者が自署しなければなりません。

 

全文をパソコンで作成した委任状は、受付されないことがあるため注意が必要です。

 

また、請求先の市区町村で、戸籍請求者と対象者の親族関係が分かる戸籍がない場合は、あらかじめ戸籍謄本を取得して、提出する必要があります。

 

郵送請求の注意点

 

死亡届を本籍地以外の市区町村に提出した場合、亡くなった方の戸籍に反映されるまで、長い場合でおよそ2週間程度かかります。

 

このため、その期間内に郵送請求する場合は、請求書に、死亡日と届出日、届けた市区町村名を記入しておくと、スムーズな事務処理が期待できます。

 

また、金融機関での相続手続きなどの場合は、金融機関に提出する書類も同封しておくと、取得する戸籍などに過不足が生じにくくなります。

 

いずれにしても、同封する「請求書」に、できるかぎり具体的に記入しておくことがおすすめです。

 

まとめ

 

戸籍を偽りや不正な手段によって取得した場合は、30万円以下の罰金が科される刑罰がありますから、適正に請求することが重要です。

 

なお、戦時の空襲や震災などによって戸籍が消失しているような場合は、「告知書」を取得することができます。

 

告知書は、このような状況で連続する戸籍が取得できない場合に、消失が証明されることによって、間接的に戸籍が連続するであろうことが証明されるものです。

 

郵送請求は相続に係る労力や期間を短縮でき、たいへん便利な制度ですが、不安がある場合は、最寄りの市区町村や専門家などに相談することをおすすすめします。