まず基本的な注意点として口座と相続相手を特定できるように明記しなければなりません。
そして前述のように、預貯金を複数の相続人に分配して相続するときは割合を指定するのがおすすめです。
たとえば1,000万円の預金があるケースを考えてみましょう。
これを妻600万円、長男300万円、次男100万円に相続させたい場合、次の2つの書き方が考えられます。
具体的金額を記載する(妻600万円、長男300万円、次男100万円)
相続する割合を記載する(妻6/10、長男3/10、次男1/10)
預金額が1,000万円の場合、結果はどちらも同じなのでこれはどちらでもいいと思われるかもしれません。
しかし、この2つの書き方には明確な違いがあります。
そしてこのうち割合を記載する方がより適切であり、確実に遺言者の意思通りに相続させやすくなるのです。
金額を記載だと預金額に増減があったときトラブルになる可能性あり
遺言者が遺言書を作成した時点では、上記のケースでは預金が1,000万円でした。
でもこれが相続発生時、つまり遺言者が亡くなったときには預金額が変わっているかもしれません。
その場合、上記1のように単に相続する金額を記載していると問題となる可能性があります。
1,000万より増えた分、もしくは減った分についてはどうするのかという問題です。
たとえば預金額が500万円に半減していた場合、金融機関が残った500万円について遺言者の希望した割合で相続させるという保証はありません。
実務上1つの銀行はそのように扱ってくれても別の金融機関によっては扱いが異なる、ということも起こりうるわけです。
逆に預金額が1,500万円に増えていた場合はどうでしょうか。
この場合、上記1の記載方法では1,000万円分の金額しか指定していませんので残りの500万円については相続人全員の遺産分割協議が必要になります。
せっかく遺言書があるのに結局相続人全員が集まって協議する必要が生じ、手間がかかるうえに協議がうまくいかないこともあり得ます。
ですので、預貯金を複数人に分配する場合は割合を指定するのが適切といえるわけです。
万一の記載漏れに対しても対策しておく
しっかりと財産目録を作ってから遺言書を作成したので記載漏れなんてありえない、と思われるかもしれません。
でも、万一のために記載漏れに対しても対策しておいた方が良いでしょう。
遺言書を作成した後に、新たに預貯金口座を作るかもしれません。
遺言書の中で触れられていな財産については、亡くなったあと相続人全員で協議しなければなりません。
せっかく遺言書があっても手間がかかってしまいますし、いらぬトラブルを招く可能性もあります。
遺言を確実に残すなら公正証書遺言がおすすめ
遺言には主に以下の3つの種類があります。
・自筆証書遺言(全文を自筆で書く)
・公正証書遺言(公証人が作成)
・秘密証書遺言(一般にはあまり用いられない)
このうち公正証書遺言で遺言書を作成するのがおすすめです。
他の方法にくらべて安全かつ確実に遺言内容を実行できます。
主なメリットは下記の通りです。
・法律のプロである公証人が作成するので要式不備で無効になる恐れがない
・公証人と証人2人が立ち会うので信ぴょう性が高くトラブルになりにくい
・原本は公証役場に保管されるので紛失・偽造・隠匿のリスクがない
・死後の検認の手続きが必要無いので相続手続きがスムーズ
費用はかかるが後々のトラブルを防止できる
公正証書遺言のデメリットとしては下記の点が挙げられます。
・費用がかかる
・遺言の内容が証人に知られてしまうのが困る場合がある
手数料は相続人数や相続財産の価額によってことなります。
たとえば、相続人3人にそれぞれ2,000万円ずつ相続する内容の遺言書だと作成手数料は80,000円となります。
立ち合ってもらう証人については信頼できる友人や守秘義務のある弁護士などに依頼すると安心でしょう。
確かに公正証書遺言を作成するにはいくらか費用がかかりますが、そのメリットはデメリットを上回ります。
せっかく遺族のことを考えて遺言書を作成しても、その遺言書がトラブルの原因になってしまっては元も子もありません。
また、死後見つけられなかったり要式不備で無効になってしまったりすると大変残念です。
公正証書遺言はこうしたリスクがないので安心なのです。