相続登記の申請書を自分で作成する場合は、気を付けるべき点がいくつかありますが、不動産の書き方には特に注意が必要です。
記載した不動産の情報が登記されている内容と異なれば、不動産を特定できないため、手続きを進めることができません。
また、不動産が複数ある場合に記載に漏れがあれば、漏れた不動産については、別に手続きを行わなければなりません。
登記申請書に不動産を記載する場合は、記載事項の不足やミス、漏れをなくすことが重要です。
今回のブログでは、相続登記を行う場合の登記申請書での不動産の書き方について、技術的な面から紹介します。
相続登記申請書での不動産の書き方
不動産の相続登記でも、遺言によって相続する場合、遺産分割協議によって相続する場合、法定相続分で相続する場合には、それぞれ登記申請書の書き方が異なります。
以下では、遺産分割協議によって相続する場合を想定していますのでご注意ください。
登記申請書には、登記の目的や原因、相続人、相続する不動産の課税価格、登録免許税などを記載します。
これらを記載した後には、「不動産の表示」として、相続登記の対象となる不動産を個別に記載していくことになります。
建物は5つの要素、土地は4つの要素を記入
不動産を表示するために必要な要素は、建物では、所在、家屋番号、種類、構造、床面積の5つです。
一方、土地については、所在、地番、地目、地積の4つで、建物と土地では不動産の区別の仕方が異なっています。
登記申請書には、登記の目的とする不動産を特定できるように、登記簿などからこれらの要素を間違いなく転記しなければなりません。
(例)「登記申請書の不動産の表示」
建物
所 在: ○○郡○○町○○番地
家屋番号: 20番
種 類: 居宅
構 造: 木造瓦葺2階建
床 面 積: 1階 32平方メートル
2階 28平方メートル
土地
所 在: ○○郡○○町○○字○○
地 番: 22番
地 目: 宅地
地 積: 120・00平方メートル
不動産の表示を間違いなく書く方法
登記申請書には、対象とする不動産を、登記簿(登記事項証明書)に記録されているとおり間違いなく転記しなければなりません。
以下では、相続する不動産が多数あるような場合に、転記ミスや転記漏れの防止に役立つ方法を紹介します。
不動産番号を記入する
先に紹介した建物と土地の登記(例)を見ていただくと、どちらも「不動産番号」が記されています。
不動産を表示する場合、この不動産番号を記載すると、細かな不動産の要素を記入しなくてもすむメリットがあります。
不動産番号を記載すれば、土地についての所在や地番、地目、地積、また、建物についての所在や家屋番号、種類、構造、床面積を省略してもかまいません。
このため、相続する不動産の数が多い場合などは、不動産番号だけを列挙すると、間違いや漏れなどを確認しやすく、間違いを防ぐことにつながります。
(例)
1 不動産番号 xxxxxxxxxxxxx
2 不動産番号 xxxxyxxxxzxxx
3 不動産番号 axxyxxxzxxxxb
登記情報提供サービスの利用
いわゆる登記簿と呼ばれる、不動産の全部事項証明書は紙に印刷された状態で入手しますが、登記情報提供サービスを利用すると電子ファイル(PDF)が入手できます。
特に、相続する不動産の数が多い場合は、このPDFファイルを利用してコピーすると、文字や数字を間違いなく転記できます。
なお、登記情報提供サービスは、登記所にある登記情報を、インターネットを経由してダウンロードし、パソコンで確認できる有料サービスです。
一般財団法人「民事法務協会」が運営しています。
登記事項証明書とは異なり証明文や公印などはありませんが、簡単な手続きで、登記されている情報をPDFファイルで入手できます。
相続した土地がたくさんある場合の書き方
とても細かい、技術的な話になりますが、相続した不動産の数が多い場合は、登記申請書が2ページ、3ページにわたってしまうことになります。
このような場合に、不動産を確認しやすく、申請書の枚数を減らす方法を紹介します。
登記申請書は、法務局で提供している「一太郎ファイル」か「Wordファイル」をダウンロードして利用する方法が簡単です。
申請書の様式は、受付シールを貼るスペースも設けられていて、1ページの行数や文字数を自由に変えることは困難です。
このため、建物の場合は無理ですが、土地の場合は、4つの要素を一行に収めて記入すると、コンパクトにスッキリ書くことができます。
不動産番号だけを列挙する場合に比べ、地番や地目などの具体的な情報があるため、見落とすなどの漏れが防ぎやすくなります。
このように、相続する土地が多い場合に、転記ミスを見つけやすく、申請書も少ないページ数で済むメリットがあります。
土地を一行に収める書き方の例
相続した土地が複数ある場合の一般的な書き方は、次のとおりです。
1 所在 ○○郡○○町○○字○○
地番 ○○番
地目 ○○
地積 ○○.○○㎡
2 所在 ○○郡○○町○○字○○
地番 ○○番
地目 ○○
地積 ○○.○○㎡
3 所在 ・・・
一方、土地1筆は、次のように一行に収める書き方も可能です。
1 所在:○○郡○○町○○字○○ 地番:○○番 地目:○○ 地積:○○.○○㎡
2 所在:○○郡○○町○○字○○ 地番:○○番 地目:○○ 地積:○○.○○㎡
3 所在:・・・
まとめ
今回の記事は、自分で申請書を作成する場合に、間違いや漏れをなくす方法として利用できることを念頭に紹介しています。
自分で登記申請書を作成する場合に、記入した内容の確認を第三者に依頼できれば安心ですが、このような方がいないことも少なくありません。
登記申請前には、登記所に予約して事前の相談を受けることができる仕組みがありますので、利用をおすすめします。
ただし、限られた相談時間を有効に利用するためにも、正確な不動産の記載が大切です。