【親名義の家の相続】相続時の注意点・対策方法と相続税の計算方法(1)

 

親が亡くなって相続が発生する場合、相続財産のメインが親名義の家というケースは非常に多いです。
基本的に親の家を相続すると、相続税が課税されることになります。

 

そこで今回は2つの記事に分けて、親名義の家を相続するときの注意点・対策方法と相続税の計算方法について解説したいと思います。

では、まず親名義の家を相続する際に注意すべき点とその対策について説明していきましょう。

 

 

親名義の家を相続する場合の注意点と対策について

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親名義の家を相続する場合、現金や預貯金の相続と違って注意すべき点がありますので説明します。

 

共有相続は避ける

親名義の家が共有相続となってしまうと、後々問題が発生します。

家は相続財産の中でも金額の大きい財産ですから、相続人が複数いると、現金のようにきっちり分割することができません

 

そのため、複数の相続人の共有名義となることがあります。
しかし、共有名義となった場合、共有者全員の同意がなければ家を売却することができません。
また時間が経過すると、共有名義者が亡くなることもあります。
そうなると共有名義者の共有持分の相続が発生し、共有名義者がどんどん増えていきますので要注意です。

 

このような事態にならないように、家を相続する相続人が他の相続人に相当分の代償金を支払って単独所有とする「代償分割」の検討をおすすめします。

 

 

親が認知症になる前に

親名義の家の相続には共有相続のような問題がつきものですから、親が元気なうちに相続について話し合っておくことをおすすめします。

特定の相続人に家を継がせたい場合は、親が遺言書を残しておくという方法をとることができます。

 

ただし、親が認知症になってしまった場合は、判断能力が十分ではないとして有効な遺言書を作成することができません。
親名義の家に長男家族が同居しており親亡き後もそのまま住み続けたいというような場合は特に、親が認知症になってしまう前に相続について話し合いをしておきましょう。

 

 

配偶者居住権の検討

2020年4月1日施行の改正民法によって、配偶者居住権という権利が新設されました

この権利により、家の「所有権」と「居住権」を分割することが可能になりました。

この権利を利用することで、被相続人が亡くなった後も配偶者は自宅に住み続けることができ、分割した所有権を子が相続することができます。

この場合、配偶者が亡くなった後、「居住権」は消滅しますが、相続人である子は既に自宅の「所有権」を持っていますから、これに関して相続税が発生することはありません。

相続税節税のためには、どちらが得かという問題はケースによって異なりますので、利用を検討する場合は、相続に詳しい税理士や弁護士などの専門家に相談しましょう。

 

 

自宅の建物と土地の評価方法

相続税は、相続する財産ごとに計算していくものではありません。
相続するすべての財産の価額に対して、相続税率を乗じて算出します。

 

相続税の対象となる財産が、現金や預貯金の場合は特に時価評価する必要はありませんから、そのままの金額となります。
ですが、対象となる財産が家(建物と土地)の場合は、評価額を算定しなければなりません。

 

建物と土地では評価方法が異なりますので、ここでは建物と土地の評価方法について個別に説明します。

 

建物の評価方法

建物の評価方法は、この後説明する土地の評価方法に比べてとても簡単です。
相続税課税対象となる評価額は、以下の通りです。

 

課税評価額=固定資産税評価額

 

固定資産税評価額とは、市区町村の役場で入手することができる「固定資産税評価証明書」に記載された金額です。
また新たに申請しなくても、毎年4月に市区町村から送られてくる「固定資産税納税通知書」に記載されていますし、この書類を証明書の代用とすることもできます。
ただし、「固定資産税納税通知書」を利用する場合は、最新の書類でなければなりませんので、ご注意ください。

 

土地の評価方法

続いて土地の評価方法です。
土地の評価方法には、路線価方式と倍率方式の2種類があります。

どちらの方式で評価するのかは、対象となる土地によって異なります。
路線価が設定されている土地(宅地等)の場合は、路線価方式で評価し、路線価が設定されていない土地(田畑や山林など)の場合は、倍率方式で評価します。

具体的に対象となる土地の路線価は、国税庁のホームページ内にある「路線価図・評価倍率表」で住所から検索して調べることができます。
該当する住所を評価倍率表で確認し、「路線価」となっている場合は路線価方式で、「路線価」となっておらず代わりに「1.3」などの数字が入っている場合は、倍率方式となります。

 

国税庁は、年度ごとに「路線価図・評価倍率表」を公表していますので、相続が発生した年度の路線価を調査しましょう。

 

www.rosenka.nta.go.jp

 

路線価方式

路線価とは、公道ごとに付けられた値段です。

路線価方式では、対象となる土地が接している道路の「路線価」を使って相続税の評価額を計算します。

 

国税庁のホームページの「路線価図」を見ると地図になっています。
対象となる土地が接している道路上に「125D」「80F」といった数字が記載されていますが、これが路線価です。

 

路線価が分かれば、以下のような計算式で相続税評価額を求めます。

 

課税評価額=路線価×土地の面積(㎡)

 

たとえば、200㎡の面積を持つ土地で、路線価が「80F」となっていた場合の課税評価額を計算してみましょう。
路線価「80F」と記載されている場合、1㎡あたりの路線価が80千円ということになります。
アルファベットの「F」は借地権割合を示しており、「F」の場合、借地権割合40%を意味します。
しかし借地権ではない場合は、無視して大丈夫です。

 

課税評価額=路線価(80千円)×土地の面積(200㎡)=1,600万円

 

路線価方式での土地評価は基本的にここまでとなりますが、宅地が特殊な場合は、評価額が増減します。

宅地が特殊な場合とは、土地の間口が狭く奥行きが長い、土地の形がいびつ、近隣に騒音や悪臭の問題があるなどの場合です。
このような土地の場合、売却しようとしたとき、売値も下がりますから評価が低いということなります。
ですから、相続税の評価額も減額することが可能です。

ただし、この減額要因を適用させるためには専門的な知識が必要ですから、困ったときには、相続や不動産に精通している税理士に相談してみましょう。

 

倍率方式

国税庁の評価倍率表で対象となる土地の住所を確認し、「路線価」ではなく「1.3」などの数字が入っていた場合は、倍率方式で評価額を計算します。

計算方法は簡単です。

 

課税評価額=固定資産税評価額×評価倍率

 

固定資産税評価額は、建物の評価方法で説明した通り、「固定資産税評価証明書」に記載されている土地の固定資産税評価額です。

たとえば、土地の固定資産税評価額が3,000万円となっていて、対象となる土地の評価倍率が1.3の場合は、下記のような評価額になります。

 

課税評価額=固定資産税評価額3,000万円×評価倍率1.3=3,900万円

 

まとめ

次回は、今回はご説明した親名義の家を相続した場合の家(建物と土地)の評価額をもとに、全体の相続税額を出してから各相続人が支払う相続税の計算方法について解説します。