2021年度(令和3年度)の相続税の税制改正のポイント

相続税や贈与税の改正には常日頃からアンテナを張るわけにもいかないため、数年前の税制改正に気付いていないケースもあります。


また最近の税制改正といえば、2021年度の改正法案が賛成多数で成立したところであり、相続と関連深い贈与税にいくつかの改正点がありました。

 

生前贈与は有効な相続税対策になるため、改正内容はぜひ押さえておくべきですが、過去の税制改正もおさらいしておく必要があるでしょう。

 

今回は数記事に分けて、相続税対策を検討中の方や遺産相続した方の参考になるよう、相続税の改正内容や注意点をわかりやすく解説します。

 

2021年度(令和3年度)の相続税の税制改正のポイント

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2021年度の税制改正を全体的にみると、減税措置の期間延長や適用条件の緩和などが多く、税負担を軽くする改正内容となっています。

 

当初は特例などの非課税枠を引き下げる予定もありましたが、前年度からの据え置きもあるため、お得な期間はもうしばらく続きそうですね。

 

コロナ禍の影響も考慮されているようですが、贈与関連の改正にも有利な条件があり、2021年で終了予定だった特例などが延長され、適用条件も緩和されています。

 

では主な改正内容について、要チェックとなるポイントをわかりやすく解説します。

 

住宅資金贈与の非課税措置

親族間で住宅取得資金を贈与する場合、以下の条件を満たせば最大1,500万円まで非課税贈与できる制度です。

 

  • 父母や祖父母(直系尊属)子供や孫(直系卑属)への贈与
  • 贈与年の1月1日時点において受贈者の年齢が20歳以上
  • 贈与年の受贈者の合計所得が2,000万円以下
  • 贈与年の翌年3月15日までに新築、取得、または増改築して居住している

 

2021年12月31日までの新築契約などを対象とし、当初は非課税枠引き下げの予定でしたが、前年度からの据え置きとなっています。

なお、以下は消費税10%の場合です。

 

  • 一般住宅の非課税枠:予定額800万円、据え置き額1,000万円
  • 省エネ・バリアフリー住宅:予定額1,200万円、据え置き額1,500万円

 

また、贈与年の受贈者の年収が1,000万円以下の場合、対象住宅の床面積の下限が50㎡から40㎡へ引き下げられています。

 

教育資金の一括贈与の特例

子や孫へ教育資金を一括贈与する場合、最大1,500万円までが非課税となります。
条件は以下のとおりですが、事前に教育資金口座(信託契約)を開設する必要があります。

 

  • 教育用の資金贈与
  • 父母や祖父母(直系尊属)からの贈与
  • 受贈者は30歳未満の子や孫(直系卑属)
  • 贈与年の前年の受贈者の所得が1,000万円以下

 

贈与者の死亡時に使い切れていない残額がある場合、従来は死亡前3年以内の贈与分のみ相続財産に加算していまいた。

 

また、孫やひ孫の相続税は2割加算されるところ、従来制度では2割加算の対象外としていました。

 

ところが今回の改正で3年以内の期限がなくなり、孫やひ孫の2割加算も適用されることになっています。

 

結婚・子育て資金贈与の特例

以下の条件で結婚資金や子育て資金を贈与する場合、1,000万円までの贈与額が非課税になります。

 

  • 父母や祖父母(直系尊属)から子や孫(直系卑属)への贈与
  • 受贈者が20歳以上50歳未満
  • 贈与年の前年の受贈者の所得が1,000万円以下

 

2021年3月31日までの特例でしたが、今回の改正で2023年(令和3年)3月31まで2年間の延長となりました。

 

また、結婚・子育て資金贈与の特例も銀行に専用口座を開設しますが、贈与者が死亡した場合の残額は相続財産となるため、相続税の課税対象になります。

従来制度に相続税の2割加算はありませんでしたが、今回の改正で孫やひ孫は2割算の対象となりました。

 

なお、受贈者の年齢は20歳~50歳まででしたが、改正後は18歳~50歳へ拡大されています。

 

外国人の贈与および相続

日本に短期居住する外国人が国内で死亡した場合、あるいは贈与があった場合は、従来は国内財産、国外財産ともに相続税や贈与税の課税対象でした。

 

今回の改正では居住期間に関係なく、日本滞在中の外国人に相続が発生した場合や贈与があった場合、国外財産には相続税や贈与税を課税しないこととなりました。

 

 

本記事では、2021年度(令和3年度)の相続税の税制改正のポイントについてご紹介しました。

次回は近年の相続税の改正内容をみていきたいと思います。