前の記事では、2021年度(令和3年度)の相続税の税制改正のポイントをみていきました。
近年の相続税改正がどのようなものであったか、特に影響が大きいものをおさらいしてみましょう。
2015年1月の税制改正は「相続税の大増税」とも呼ばれ、申告件数は改正前の約2倍に増えました。
富裕層以外にも相続税がかかることになり、一部の相続税率も引き上げられましたが、一方では改正により有利になった特例や控除もあります
基礎控除額の引き下げ
相続税には基礎控除があり、一定額を相続財産から差し引いて計算します。
大多数の人は課税財産が基礎控除内に収まっていますが、2015年(平成27年)の法改正では以下のような引き下げが行なわれています。
- 2014年12月31日までの基礎控除:5,000万円+(1,000万円×法定相続人の数)
- 2015年1月1日以降の基礎控除:3,000万円+(600万円×法定相続人の数)
法定相続人を1人で計算すると、改正前は6,000万円、改正後は3,600万円が最小値ですから、2015年1月以降の相続税申告件数はそれまでの2倍近くになりました。
相続税率の一部引き上げ
2015年1月の税制改正では相続税率も一部変更となりました。
改正前の税率は、課税財産1億円超~3億円以下の場合が40%、3億円超は50%となっていましたが、2015年1月以降は以下のように改正されています。
- 2億円超~3億円以下:改正前40%(控除額1,700万円)、改正後45%(控除額2,700万円)
- 3億円超~6億円以下:改正前50%(控除額4,700万円)、改正後50%(控除額4,200万円)
- 6億円超:改正前50%(控除額4,700万円)、改正後55%(控除額7,200万円)
従来の相続税率は6段階でしたが、改正により8段階となり、新たに設定された税率も高くなっています。
未成年者控除や障害者控除の引き上げ
控除額が引き上げられた制度もあり、未成年者控除や障害者控除は1年あたりの控除額が6万円から10万円に引き上げられています。
特別障害者控除についても12万円から20万円に引き上げられました。
小規模宅地等の条件変更
相続時に小規模宅地等の特例を使うと、被相続人の自宅を相続した場合、一定条件を満たせば土地(敷地)の評価額が8割引きになります。
対象となる宅地面積には上限があり、法改正によって以下のように拡大されました。
- 改正前の条件:240㎡まで
- 改正後の条件:330㎡まで
上限値を超える部分は一般的な評価額になりますが、約100坪の居住用宅地が8割引きになるため、主な財産が自宅の場合には課税遺産総額が大幅減となります。
贈与税率の一部変更
2015年1月の税制改正では贈与税率にも変更があり、従来の6段階から8段階へ変更されています。
一般税率の場合、1,000万円を超える贈与税は一律50%の税率でしたが、現在は以下のように細分化されています。
- 1,000万円超~1,500万円以下:改正前50%(控除額225万円)、改正後45%(控除額175万円)
- 1,500万円超~3,000万円以下:改正前50%(控除額225万円)、改正後50%(控除額250万円)
- 3,000万円超:改正前50%(控除額225万円)、改正後55%(控除額400万円)
今回は近年の相続税の改正内容を詳しくみていきました。
次回は改正後の相続税対策の注意点や、相続税の計算方法の内容をお届けしたいと思います。