不動産の相続登記で利用できる登録免許税の免税制度

不動産を相続する場合、相続税がかかるかどうかは心配になるものの、登記でかかる税金まで思いが巡らないことが一般的です。

 

税率としては高くないものの、決して無視できる金額ではないため、相続登記の際に慌てないように把握しておくことが大切です。

 

今回のブログでは、不動産を相続する場合に、登録免許税が期間限定で免税になる制度を紹介します。

そのままにしてきた相続登記があれば、実行する良い機会にもなりそうです。

 

相続登記に関する免税措置は2種類

 

平成30(2018)年の税制改正によって、相続による不動産の所有権の移転登記については、期間限定で2種類の免税措置が設けられました。

 

数次相続に関する登録免許税

 

一つ目は、相続した方が、相続登記をしないまま亡くなってしまっている場合について、相続登記の登録免許税を免税する措置です。

たとえば、祖父名義の土地を孫が相続するような2次相続の場合に、登録免許税の負担が減ることになります。

 

少額の土地に関する登録免許税

 

二つ目は、一定の場所にある土地を相続する場合に、固定資産税評価額が10万円以下の土地なら、登録免許税が免除される措置です。

 

1次相続分の登録免許税の免税

 

たとえば、祖父A名義の土地を父Bが相続したものの、Bが相続登記をしなかった場合、孫Cが相続する際の所有者は祖父Aのままです。

 

このような場合、孫Cは祖父Aから直接の名義変更手続きを行うことができず、まず、祖父Aから父Bへ所有者を変更しなければなりません。

 

つまり、2段階の相続登記が必要になるため、、2回分の登録免許税を支払わなければならないことになってしまいます。

 

この場合の登録免許税については、期間限定で、祖父Aから死亡した父Bへの相続登記分が免税になる措置が設けられました。

 

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1次相続分の免税イメージ

免税の対象

 

平成30年4月1日から令和3年3月31日までに登記申請した場合が、免税の対象です。

通常であれば、相続による所有権の移転登記には、固定資産税評価額に対して0.4%の登録免許税が課されます。

 

少額の土地に関する登録免許税の免税

 

相続した土地について相続登記を行う場合、つまり、所有権の移転登記を行う場合に、一定の条件に当てはまる土地の登録免許税が免税となります。

 

一定の条件としては以下の3つがあり、すべての条件に該当する場合は、相続登記の登録免許税がかかりません

 

・指定されている地域にあること

・市街化区域以外であること

・土地の固定資産税評価額が10万円以下であること

 

なお、市町村の行政目的のために、相続登記の促進を特に図る必要がある土地が対象とされています。

 

具体的な地域については、それぞれの法務局や地方法務局ホームページに掲載されていますが、該当する登記所に確認することをおすすめします。

 

たとえば、東京都の場合、23区では、荒川区や江戸川区、北区、墨田区、台東区などの一部地域が指定されています。

 

また、23区以外では、青ヶ島村や大島町、奥多摩町などの全部、狛江市や昭島市、あきる野市、稲城市、青梅市、国立市など広範な地域が指定されています。

 

免税の対象

 

平成30年11月15日から令和3年3月31日までの登記申請が対象です。

なお、通常であれば、相続による土地の所有権の移転登記には、固定資産税評価額に対して0.4%の登録免許税が課されます。

 

免税になるための登記申請書の書き方

 

2種類の免税措置は、登記申請書に免税の根拠となる法律の条項を記載すれば、適用されます。

 

1次相続分の免税については、「租税特別措置法第84条の2の3第1項により非課税」と記載します。

また、少額土地の免税については、「租税特別措置法第84条の2の3第2項により⾮課税」と記載します。

 

この記載がないと、免税とならないため注意が必要です。

 

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【登記申請書の記載例】登録免許税の免税

まとめ

 

今回紹介した免税制度は、所有者不明土地が社会問題化した背景にある、相続登記を促進することが大きな目的です。

 

特に、地方にある実家で代々引き継がれてきた、農地や林地、原野といった固定資産税評価額が低い土地を相続した場合に利用価値が高い制度です。

 

期間限定の免税となっているため、これまで未登記の相続不動産がある場合に、所有者名義を変える良い機会と言えそうです。

自分で行う相続登記の登録免許税はいくらかかる?

不動産を相続して登記をする際には、登録免許税と呼ばれる税金を、現金で支払わなければなりません。

この登録免許税は、それぞれの不動産評価額によって異なるとともに、登記の種類によって税率が異なります。

 

都市部など不動産の評価額が高額な場合に、相続税を心配する方は多いのですが、登録免許税については気づかれにくい傾向があります。

 

相続の場合は、売買や贈与に比べて税率が低く設定されているものの、登録免許税が計算できれば、準備もしやすいといえます。

 

今回のブログでは、相続した不動産を登記する際にかかる、登録免許税の計算方法について紹介します。

 

登録免許税とは?

 

不動産について、所有権の保存や移転、抵当権の設定など登記に関する申請を行う場合は、法律に基づいて税金を納めなければなりません。

 

これが登録免許税と呼ばれるもので、売買や相続などによる所有権を移転する登記、建物の新築など所有権を保存する登記などが該当します。

 

原則として、登録免許税額は以下の式で計算します。

「登録免許税額」 = 「課税標準」 × 「税率」

 

課税標準

 

課税標準は、登記の種類によって「不動産の価額」「債権金額」「不動産の個数」のうち、いずれかが指定されています。.

 

相続や贈与、財産分与などによる所有権の移転登記の場合では、課税標準として、固定資産税の評価額を使用します。

 

固定資産税評価額は、固定資産税を計算する基準になる不動産ごとの金額で、それぞれの市区町村で管理されています。

 

この評価額は、市区町村の固定資産課税台帳に記載され、市区町村から毎年5月頃に送付される「納税通知書」で確認できます。

 

固定資産税評価額は、この通知書の「課税資産明細」に、「本年度価格」「○年度価格」「評価額」のような表現で記載されている金額です。

 

納税通知書が見当たらない場合は、市区町村の税務課などで、固定資産評価証明書を取得すれば確認できます。

 

なお、発行手数料として、1通あたり300円程度かかることが一般的です。

 

計算する際は、固定資産税評価額の1,000円未満の端数を切り捨てた額を当てはめます。

評価額が1,000円未満の場合は、1,000円として計算します。

 

ただし、複数の不動産を同じ申請書で申請する場合は、それぞれの評価額を合計した後で、その合計額の1,000 円に満たない額を切り捨てます。

 

なお、「固定資産税課税標準額」の記載もあり、混同しやすいため注意が必要です。

 

また、固定資産税評価額がない場合は、登記所が認定した金額になるため、不動産を管轄する登記所への確認が必要です。

 

税率

 

登録免許税の税率は、土地と建物では別々に設定されているものの、相続を原因とする登記については、いずれも1000分の4(0.4%)です。

 

ちなみに、売買や贈与などよる所有権移転の場合は、1000 分の 20(2%)ですから、相続は低率であることが分かります。

 

なお、相続による土地の所有権の移転登記の登録免許税については、平成30年度の税制改正によって免税措置が設けられています。

 

令和3年3月31日までの間に申請するもので、この免税の要件に該当する場合は、一定の割合が免税となります。

 

この免税制度については、次のブログで紹介する予定です。

 

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登録免許税の税率

税額

 

すでに確認した計算式によって計算すると、登録免許税額を計算できます。

計算式を再確認しましょう。

 

「登録免許税額」 = 「課税標準」     × 「税率」

         = 固定資産税評価額   ×  4/1000

 

たとえば、自宅を相続して、建物の評価額が1,200万円、土地の評価額が1,500万円だとすると、10万8,000円と計算できます。

 

なお、計算した結果で100円未満の端数があれば切り捨てます。

また、計算した税額が1,000円未満のときは1,000円が税額になります。

 

登録免許税の納付

 

登録免許税は、登記所に現金を納めるのではなく、税務署に収めた領収証書、または、事前に購入した税額分の収入印紙を、申請書に貼って提出します。

 

また、領収証書や収入印紙は、直接申請書に貼るのではなく、別に貼付用の白紙を用意して貼りつけ、ホチキス止めなどのうえ、契印を押します。

 

なお、収入印紙には割印や消印を押してはいけません。

 

登録免許税の額が、3万円以下や特別な場合は、収入印紙を貼って提出すれば良いこととされていますが、提出前に確認すると良いでしょう。

 

収入印紙は、登記所の庁舎内で販売していることが一般的ですが、金額によっては最寄りの郵便局などで購入する場合もあります。

 

また、収入印紙の貼付が可能な金額の上限も、登記所によって違いがあるようです。

 

まとめ

 

相続登記は、所有権移転登記、または、亡くなった方の共有持分についての持分全部移転登記を行うことになります。

 

一般的な申請手続きでは、申請書の作成や登記所に足を運ぶ手間はかかるものの、相続人自身で行うことができます。

 

司法書士に登記手続きを依頼する場合でも、自身で手続きを行う場合でも、登録免許税は不動産の評価額に応じた額がかかります。

 

いずれの方法で手続きを行うかは状況次第ですが、登録免許税が計算できれば、費用の目安がつけやすくなるのは間違いありません。

自分でできた。相続した共有不動産の持分全部移転登記

一般的に、不動産を相続する場合は所有権移転登記を行うことになりますが、共有名義の不動産については、少し異なります。

 

共有名義の不動産を相続する場合は、亡くなった方の所有権の持ち分を移転する手続きになります。

 

なお、共有名義の不動産を相続する場合は、将来的な売却処分などで共有者の承諾が必要なため、共有者の確認が不可欠でしょう。

 

先日、父親と共有名義になっていた自宅を相続することになった方から、自分で手続きできないかと相談がありました。

 

事情を伺ったところ、単純な手続きで済むと判断できたため、手続きや提出書類の入手方法などを紹介したところ、無事に登記が終わったと連絡が入りました。

 

今回のブログでは、このような共有名義の不動産を相続する方々の参考に、自分で行う場合の手続き方法について紹介します。

 

共有とは?

 

不動産を所有する方法として、単独で所有する方法のほか、夫婦や兄弟、知人同士などが共同で所有する方法があります。

 

たとえば、夫婦や兄弟で、それぞれが資金を出し合って自宅を新築する場合や、友人同士で別荘を購入する場合などが、良くあるケースです。

 

このような場合は、出した資金に応じて所有権を分け合うことが多く、分け合う所有権の割合は共有持分と呼ばれます。

 

たとえば、夫婦で半分ずつ資金を出し合った場合などは、それぞれの持分を2分の1として不動産の所有権を登記することになります。

 

この状態を共有名義の不動産と呼び、売却など不動産を処分したい場合には、共有者の承諾がないと実行できません。

 

共有者が亡くなった場合、相続人はその方の持分を相続することになるため、単独で所有している不動産とは相続登記の手続きが異なります。

 

不動産の共有持分を相続した場合は持分全部移転登記

 

相続登記は、不動産ごとに行うのではなく、亡くなった共有者一人一人について行う必要があります。

 

共有者がいる不動産でも、遺言書での指定がなければ、遺産分割協議を行って相続人が引き継ぎます。

この場合、相続登記の手続きを行うのは、共有持分を相続した相続人ということになります。

 

基本的な手続きは、所有権移転登記手続きと変わりませんが、登録免許税は、持分の割合に応じた額になるとの違いがあります。

 

また、登記申請書に記載する「登記の目的」については、「所有権移転」ではなく「〇〇持分全部移転」と記載します。

 

このとき、〇〇は亡くなった方の氏名を意味します。

 

持分全部移転登記の記載例

 

亡くなった父親の共有持分が2分の1、相談者である子の持分も2分の1として、父の持分全てを子が相続する場合の例を、図で確認しましょう。

所有権移転登記手続きと異なる部分については、黄色のマーカーで表示してあります。

 

登記の目的は、「(被相続人の氏名)持分全部移転」と記載することに注意します。

 

申請人については、相続する持分を先に記し、相続する方の氏名を記載します。

ちなみに、2名以上で相続する場合は、それぞれの共有持分を氏名の前に記入します。

 

なお、添付書類は、所有権移転登記手続きと同様の書類を準備すれば良く、共有不動産について特別なものはありません。

 

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持分全部移転登記の記載例

 

所有権移転と持分全部移転を一括で申請する方法

 

亡くなった方が単独で所有していた場合の所有権移転登記と、共有不動産の持分全部移転登記は、同じ登記申請書にまとめて記載することもできます。

 

たとえば、建物は父子で2分の1ずつ共有、土地は父親の単独で所有していた不動産を相続する場合も、申請書が1枚で済む方法です。

 

具体的な記載例を、図で確認しておきましょう。

注意すべき部分は、黄色マーカーで記したとおりで、登記の目的は「所有権移転及び(被相続人の氏名)持分全部移転」と記載します。

 

また、相続人の氏名の前には、「持分後記記載のとおり」と書いておき、不動産の表示部分で、相続する土地の持分を記載します。

 

また、建物と土地の課税価格は、それぞれ不動産の表示部分に記載し、課税価格としては合計額だけを記載します。

 

なお、土地の価格は、評価額の総額ではなく、持分割合に応じた評価額を記載します。

 

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一括申請の記載例

 

 まとめ

 

不動産を相続する場合は、一般的に所有権移転登記、また、共有不動産であれば持分全部移転登記を行います。

 

相続人の合意が得られている一般的な相続なら、それぞれの必要書類が準備できれば、自分で登記申請手続きを行うこともそれほど難しくはありません。

 

ただし、司法書士のような専門家ではありませんから、記載ミスも生じやすいため、登記申請前に法務局への相談をおすすめします。

 

申請手続きに時間や労力はかかるものの、費用を抑えることができ、亡くなった方の財産を登記できた達成感もあることでしょう。

 

なお、不安や疑問がある場合、複雑な状況などの場合は、専門家に相談することをおすすめします。

自分でできた。相続不動産の所有権移転登記

不動産の所有者が亡くなった場合は、早めの相続手続きがおすすめです。

亡くなった方名義のままにしておくと、相続関係が複雑化すれば登記手続きが難航し、売買や賃貸など不動産の有効活用に支障が生じます。

 

亡くなった方名義の不動産を相続する場合は、戸籍などの必要書類をそろえて、所有権移転登記申請手続きを行います。

 

この手続きは司法書士に依頼することが一般的ですが、登記所に何度か足を運ぶ覚悟があれば、自分でもできます。

 

必要な書類は法務局のホームページから確認でき、ダウンロードした申請書は、記入例を確認しながら作成できます。

 

今回のブログでは、相続した不動産の所有権移転登記手続きを、相続人自身で行った事例について紹介します。

 

財産放棄には遺産分割協議書が有効

 

「父親が亡くなり、自宅や農地、山林などの遺産があるものの、婚姻で実家を離れた姉妹は、遺産を放棄すると言ってくれています。」

 

「でも、どんな手続きをすれば良いのか分からないので相談したい」との依頼で始まりました。

 

 

遺産の放棄には、相続放棄と財産放棄がありますが、相続放棄を行うには、相続発生から3カ月以内に手続きが必要です。

 

亡くなったのは7カ月前で、相続放棄の期限には間に合いません。

ここで問題になるのは遺産に負債が多い場合で、相続放棄しなければ相続人が返済義務を負ってしまいます。

 

しかしながら、亡くなった方に負債はなかったため、姉妹は相続放棄の必要はなく、財産放棄の手続きで問題ないことが判明しました。

 

相続人のうち一人に相続させたい場合は、残りの相続人が財産放棄をすれば良く、このようなケースでは、遺産分割協議書が有効な解決策です。

 

遺産分割協議書で、「相続人である長男〇〇 〇〇がすべての不動産を相続する」のように整理すれば、姉妹は財産放棄したことになるのです。

 

所有権移転登記に必要な書類と手続きの方法

 

不動産を相続する場合、亡くなった方の単独名義であれば、所有権移転登記の申請手続きを行います。

ちなみに、共有名義の場合は「持分全部移転登記」を申請することになります。

 

登記申請の手続きについては、法務局のホームページで詳しく紹介されていて、必要書類や申請書、申請書の書き方も解説があります。

 

必要書類や書き方は、遺言がある場合や遺産分割による場合、法定の割合で相続する場合などで異なるため、利用の際は注意が必要です。

 

なお、このブログでは、遺産分割協議による登記申請手続きとして紹介します。

 

必要書類

 

遺産分割協議によって相続した場合、登記手続きに必要な書類は以下のとおりです。

 

1 登記申請書

2 申請書に添付する書類として、以下が必要です。

  • 被相続人の出生から死亡までの戸籍謄本や除籍謄本、住民票除票など戸籍書類
  • 相続人全員の現在の戸籍謄本
  • 遺産分割協議書
  • 相続人全員の印鑑証明書
  • 不動産を相続する方の住民票の写し
  • 代理人が申請する場合は委任状
  • 登録免許税(通常は収入印紙)

 

登記申請手続き

 

遺産を相続する方が全員で申請する必要がありますが、委任状によって、相続人のうちの一人に手続きを委任することができます。

 

登記申請書の提出先は、土地や建物を管轄する登記所(法務局や支局)ですが、書類一式が揃った段階で相談しておくことがポイントです。

 

事前の相談は予約制で、揃えた書類をチェックしてもらうことができるため、必ず利用したい手続きです。

 

申請は、直接窓口へ持参する方法のほか、郵送する方法やオンラインで申請する方法もあります。

 

所有権移転登記申請書の書き方

 

所有権移転登記申請書は、法務局のホームページからダウンロードできます。

 

遺産分割協議書によって、相続人の一人が相続する所有権移転登記の書き方を、具体的に記載例で紹介します。

 

申請書の書き方では、登記の目的を「所有権移転」とすることが、重要なポイントです。

 

申請書への記入自体はそれほど難しくはありませんが、記載例の「⇦」で記載したような、記入の際に気を付けたい事項があります。

 

特に注意したい点は、登録免許税の計算と不動産の表示の書き方です。

登録免許税の計算方法は、法務局のホームページで詳しく説明されていますので、説明にしたがって計算しましょう。

 

また、不動産の表示については、登記簿謄本または登記情報を入手して、申請書に正確に転記することが重要です。

 

なお、登記情報提供サービスを利用して登記情報を入手する場合は、PDFファイルが提供されます。

 

このため、不動産の情報を、登記情報ファイルからコピーして申請書に貼り付ければ、入力間違いを減らすことができます。

 

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所有権移転登記の記載例

 まとめ

 

依頼者に、所有権移転登記の手続きや必要書類を説明したところ、自分で登記手続きしてみたいとのご希望でした。

 

このため、遺産分割協議書などの作成をお手伝いしたものの、申請書の作成や事前相談、窓口申請など、手続き全般を依頼者ご自身で行いました。

 

登記所へは、事前の相談と申請時、登記識別情報通知書の受取時と、合計3回足を運ぶ必要があったものの、難なく登記が完了できました。

 

大切な遺産の登記をご自身でできたという喜びと、子孫に財産を繋ぐことができるとの安心感が得られ、費用面でも満足いただく結果となりました。

相続した不動産の抵当権を抹消する手続き

一般的な不動産取引では、抵当権の付いている不動産は、通常、処分に債権者の同意が必要とされ、売買の対象となりません。

 

しかしながら、相続では、抵当権の付いていない不動産と同様、債権者の同意や承諾が必要なく、そのまま相続人に引き継がれます。

 

というのも、相続は被相続人の権利義務を包括的に承継するに過ぎず、一般的な処分とは異なることが、その理由です。

 

このため、2代あるいは3代前など古い借金についての抵当権が、設定されたまま相続されている不動産も、決して珍しくはありません。

 

しかしながら、このような場合、借金の事実や返済などはあいまいなままで、遠い将来に渡ってその不動産を活用することができません。

 

今回のブログでは、このような抵当権付きの相続不動産が抱える問題や、比較的簡単に抵当権が抹消できるケース、時間がかかるケースを紹介します。

 

抵当権のある不動産は何が問題?

 

抵当権は、借入れた金銭の担保として不動産に設定されるもので、債権者が代金回収のために、競売にかけることができる権利です。

 

不動産を相続する場合、2代・3代前に借入れた金銭の抵当権がそのまま残されているケースがありますが、相続登記手続きでは問題になりません。

 

しかしながら、このような不動産を活用したい場合に、たとえ昔に金銭が完済されている場合でも、障害になり得ることが問題です。

 

たとえば、抵当権のある不動産は、住宅ローンなど、新たに抵当権を設定するような融資を利用することができません。

 

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そのまま相続された2代・3代前の抵当権

 

融資を申し込んでも、新たに抵当権を設定することになる金融機関からは、既存の抵当権の抹消を要求されることが一般的です。

 

このため買い手がつかず、一般的な不動産取引の対象とすることが難しい状態が発生します。

 

また、相続した建物を解体して滅失登記を行いたい場合にも、抵当権があれば、債権者の同意が必要となることが一般的です。

 

相続した人の判断で勝手に滅失登記手続きを進めると、抵当権設定の契約違反に該当する恐れがあるため注意が必要です。

 

このように、抵当権付きの不動産は、処分したい場合に債権者の同意が必要で、相続人が有効活用しにくいデメリットがあるのです。

 

比較的簡単に抵当権が抹消できるケース

 

抵当権付きで相続した不動産も、売却など処分するためには、抵当権を抹消しておかなければなりません。

 

また、抵当権は、所有者が死亡しても消滅するわけではなく、不動産に付いたまま相続の対象となってしまいます。

このため、将来的な利用を考えれば、抵当権の抹消登記を済ませておく必要があります。

 

完済が証明できれば共同で抹消

 

抵当権を抹消するためには、借金を完済していることが前提条件ですが、証明できれば、抵当権者と共同で抵当権を抹消できます。

 

たとえば、住宅ローンや不動産担保ローンが完済されると、金融機関からは、弁済済証や登記識別情報、委任状など、抵当権の抹消に必要の書類が債務者に送付されます。

 

これらの書類があれば、所有者は、抵当権の抹消登記申請手続きをスムーズに行うことができるのです。

 

また、このような書類を紛失した場合でも、金融機関であれば、窓口に相談することで解決する場合が多いと言えます。

 

特別な条件に該当すれば単独で抹消できる

 

休眠抵当権と呼ばれる、明治や大正時代に設定されたまま残っているような抵当権を抹消したいときに、特例が利用できる場合があります。

 

これは、特別な条件に該当する場合について、不動産の所有者が、単独で抵当権を抹消できる制度です。

 

この特別な条件とは、抵当権者が行方不明であることが前提となり、完済の証明書がない場合は、弁済期から20年以上経過している条件が加わります。

 

また、登記されている借金額について、利息や損害金を含めて供託するとの条件を満たさなければなりません。

 

これらの条件を満たしているときは、相続人が単独で、抵当権の抹消登記を申請できます。

 

ただし、行方不明については、不在籍不在住証明書や、宛先不明で返送された封筒などの証拠が必要で、単に分からないでは認められません。

 

なお、通常は相続人を追跡できるケースが多く、相続人の調査を行い、抵当権の解除に同意を取り付ける方向で進められることが一般的です。

 

抵当権の抹消に時間がかかるケース

 

借金が完済されている場合でも、抵当権の抹消手続きを放置したまま長い年月が過ぎると、簡単に手続きができない事態が発生します。

 

また、古い抵当権についての確認や、亡くなっている抵当権者の相続人から同意を得る手続きなどが必要な場合は、かなりの時間を要します。

 

さらに、相続人からの同意が得られずに訴訟に発展するようなケースでは、時間がかかるだけでなく、かなりの費用もかかってしまいます。

 

金融機関の合併や名称変更などが発生しているケース

 

借金が完済されている場合でも、金融機関の合併や移転、代表者の変更、書類の紛失など、抵当権の抹消に必要な書類が揃わない事態も発生します。

 

このような場合は、証明などの抵当権の抹消手続きに必要な書類を新たに発行してもらわなければなりません。

 

登記簿謄本を用意して、早めに金融機関に相談することをお薦めします。

 

実際に受けた相談でも、送付された書類を紛失したケースや、合併で金融機関の名称が変わったケースがありました。

 

必要書類の発行手続きに多少の時間を要したものの、先に相続登記を終えていたことなどから、手続きは比較的スムーズに進みました。

 

個人の金銭貸借で完済の書類が発行されていないケース

 

個人間での金銭貸借で抵当権を設定している場合は、完済後に抵当権の抹消登記に必要な書類が発行されないケースもあります。

 

このような場合は、抵当権者に必要書類を作成してもらうことができれば、抵当権の抹消登記手続きを行うことができます。

 

貸主も死亡して金銭貸借の事実が確認できないケース

 

金銭貸借した当時の所有者も抵当権者も亡くなっていて、相続人からは貸借の事実さえ確認できないケースも存在します。

 

このようなケースでは、抵当権の抹消登記手続きに最も時間がかかります。

 

本来なら抵当権を相続した方に書類を作成してもらいますが、2代・3代前の抵当権者の相続人を確認することから始めるとなれば、容易なことではありません。

 

また、相続人が判明しても、借金の完済を確認するのはほぼ不可能で、抵当権の抹消に同意してもらえるかどうかが焦点になります。

 

相続人の同意が得られなければ、訴訟といった手続きを踏まなければならないケースも生じます。

 

実際に受けた相談では、相続人を探し当て、全員から抵当権の抹消に同意を得ることができたため、半年程度で抹消登記手続きを終えることができました。

 

なお、個人間の抵当権については、相続人調査や同意の取り付けなどで難航することが多いため、専門家への相談がおすすめです。

 

まとめ

 

トラブルを回避するためには、抵当権の抹消登記を忘れないことが重要で、借金を完済したら速やかに抵当権抹消登記をおすすめします。

 

また、抵当権の抹消登記をすぐに申請できないような場合は、領収書など借金を完済したことを証明する書類を大切に保管しておきましょう。

 

休眠抵当権と呼ばれるような、かなり以前の抵当権があっても、完済の証明があれば、抹消登記手続きは進めやすくなります。

 

完済の証明が残っていない抵当権を抹消したい場合や、行方の分からない抵当権者を確認したい場合などは、専門家に相談することをおすすめします。

戸籍の見方(郵送請求)

身近な方が亡くなって相続が始まると、故人や相続人の戸籍が必要になります。

 

現在の相続で一般的に見られる戸籍は、大正4年式戸籍から始まるケースが多く、その後に戸籍制度が複数回改正されています。

 

このため、昭和32年頃までに出生した方の場合は、出生から死亡までを確認するためには、4種類から5種類になるケースが多いと言えます。

 

すべて近くの市区町村で取得できれば良いのですが、他県への転居や転籍などがあれば、複数の自治体から戸籍を取得しなければなりません。

 

このような場合に役立つのが、戸籍の郵送請求です。

 

各市区町村によって異なる部分もありますが、ほぼ同様の郵送請求手続きによって、1週間から10日程度で戸籍が取得できます。

 

一般的には利用する機会が少ないものの、相続手続きなどで戸籍が必要な場合には、とても便利な方法です。

 

請求できる人

 

戸籍には、最新の戸籍以外に、除籍や改正原戸籍、戸籍の附票などがあり、それぞれに請求できる人が定められています。

 

故人のプライバシーに関わる請求ですから、請求できる人は厳格に定められているものの、委任状があれば第三者でも取得可能です。

 

単純に言えば、請求者からみて、配偶者や子、孫、父母、祖父母が記載されている戸籍や附票であれば、「本人など」として請求できます

 

戸籍

 

最新の戸籍や除籍、改製原戸籍については、次のように定められています。

 

本人など

 

戸籍法第10条による「本人等」からの請求です。

本人以外では、戸籍に記載されている配偶者や親(直系尊属)、子、孫(直系卑属)が請求できます。

 

なお、兄弟姉妹は、婚姻などで戸籍が別の場合は請求できず、第三者としての請求手続きが必要で、通常、委任状が必要となります。

 

また、取得しようとする戸籍から、このような親族関係が確認できない場合は、別途、すでに取得している戸籍などの写しを提出する必要があります。

 

第三者

 

戸籍上の配偶者、親や子孫などの「本人など」に該当しない場合は、すべて第三者として請求する手続きが必要です。

 

プライバシー保護のため、第三者からの請求については厳格な審査があり、適切な請求理由を明らかにする必要があります。

 

戸籍の附票の写し

 

戸籍の附票の写し、または戸籍の附票の除票の写しを請求できる方は、次のように定められています。

 

それぞれに記載されている本人以外では、そこに記載されている配偶者や直系尊属、直系尊属に限られます。

 

なお、取得しようとする写しで、このような親族関係が確認できない場合は、別途、すでに取得している戸籍の写しなどを提出する必要があります。

 

また、代理人も請求できますが、この場合は委任状が必要で、戸籍の第三者請求と同様、適切な請求理由を明らかにする必要があります。

 

使いみち

 

この記述は、戸籍などを過不足がないように返送してもらうために、とても重要な部分です。 

 

自己の権利行使または自己の義務履行の場合

 

この場合は、権利または義務の発生原因に加え、その内容や、戸籍の記載事項を確認する必要がある理由を明らかにしなければなりません。

 

国または地方公共団体の機関に提出する必要がある場合

 

この場合は、戸籍謄本などを提出する具体的な理由を、明らかにしなければなりません。

   

請求方法

 

市区町村それぞれのホームページで、郵送による請求方法について紹介されていますが、一般的なやり方について紹介します。

 

なお、送付先住所や、市区町村独自の規定など、詳細についてはそれぞれのホームページを確認してください。

 

必要書類を同封して郵送

 

請求時には、封筒に「請求書」「本人確認(返送先確認)書類の写し」「手数料」「切手を貼付した返信用封筒」の4種類を同封して、各市区町村の郵送請求窓口に郵送します。

 

一般的に、郵便局に依頼するか、ポストに投函してから戸籍が届くまでに、1週間から10日程度かかります。

 

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郵送による請求方法

 

 請求書

 

郵送用の「戸籍証明書等請求書」がPDFなどで提供されていることが一般的ですが、ダウンロードできない場合は、以下の内容を便せんなどに明記します。

 

1 本籍

2 筆頭者の氏名、生年月日

3 証明書の種類(個人事項証明書、抄本、身分証明書、附票が必要な場合は、必要な方の名前)

4 通数

5 使いみち(請求理由)

5 請求者の住所、氏名、筆頭者との関係、昼間連絡の取れる電話番号

 

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戸籍証明書等請求書(郵送用)

 

本人確認(兼・返送先確認)書類の写し

 

請求者の本人確認用と、返送先の確認用を兼ねて、運転免許証やマイナンバーカード、健康保険証などのコピーを同封します。

 

なお、コピーの際に、現住所と氏名の記載のある部分が含まれている必要があることに注意が必要です。

 

手数料

 

郵送請求に必要な手数料の合計金額分を、郵便局で「定額小為替」を購入して同封します。

 

なお、定額小為替には、住所や氏名の記載欄などがありますが、何も記入してはいけません。

 

また、定額小為替1枚について100円の手数料がかかり、発行日から6ヶ月以内のものでなければなりません。

 

市区町村によっては、定額小為替以外にも、普通為替や現金書留による納付を受け付けていることもあります。

 

・一般的な1通当たり「手数料」

 

一般的に、戸籍謄本などの1通あたり手数料は、全部事項証明書(戸籍謄本)や個人事項証明書(戸籍抄本)では450円です。

 

また、除籍全部事項証明書(除籍謄本)や除籍個人事項証明書(除籍抄本)、改製原戸籍謄本、改製原戸籍抄本では、750円です。

 

一方、戸籍の附票の写しや戸籍の附票の除票の写しなどは、300円です。

 

ちなみに、一般的な相続で必要な戸籍を1セット請求する場合は、手数料で4,000円から5,000円程度かかります。

 

切手を貼付した返信用封筒

 

封筒に記入する返送先は、原則として請求者の住所登録地(現住所)を記入しておきます。

 

戸籍などが返信される時の重さを考慮して、重さ制限までに少しゆとりがあるような金額の返信用切手を貼付した、返信用封筒を同封します。

 

返信用の切手代が料金不足の場合は、あらためて不足額が請求されることになり、それまで発送されないことになってしまいます。

 

なお、利用できるかどうか、事前に市区町村に確認する必要がありますが、特定記録郵便やレターパックを利用すると、配達状況が確認でき安心です。

 

その他、必要に応じて必要な書類

 

第三者からの申請の場合は、委任状が必要です。

 

なお、委任状をパソコンで作成する場合でも、本籍や筆頭者名、委任者の氏名については、必ず委任者が自署しなければなりません。

 

全文をパソコンで作成した委任状は、受付されないことがあるため注意が必要です。

 

また、請求先の市区町村で、戸籍請求者と対象者の親族関係が分かる戸籍がない場合は、あらかじめ戸籍謄本を取得して、提出する必要があります。

 

郵送請求の注意点

 

死亡届を本籍地以外の市区町村に提出した場合、亡くなった方の戸籍に反映されるまで、長い場合でおよそ2週間程度かかります。

 

このため、その期間内に郵送請求する場合は、請求書に、死亡日と届出日、届けた市区町村名を記入しておくと、スムーズな事務処理が期待できます。

 

また、金融機関での相続手続きなどの場合は、金融機関に提出する書類も同封しておくと、取得する戸籍などに過不足が生じにくくなります。

 

いずれにしても、同封する「請求書」に、できるかぎり具体的に記入しておくことがおすすめです。

 

まとめ

 

戸籍を偽りや不正な手段によって取得した場合は、30万円以下の罰金が科される刑罰がありますから、適正に請求することが重要です。

 

なお、戦時の空襲や震災などによって戸籍が消失しているような場合は、「告知書」を取得することができます。

 

告知書は、このような状況で連続する戸籍が取得できない場合に、消失が証明されることによって、間接的に戸籍が連続するであろうことが証明されるものです。

 

郵送請求は相続に係る労力や期間を短縮でき、たいへん便利な制度ですが、不安がある場合は、最寄りの市区町村や専門家などに相談することをおすすすめします。

戸籍の見方(大正4年式戸籍)

戸籍は、時代とともに制度が変わり、そのたびに戸籍に記載する内容や様式、項目などが変化してきました。

 

現在の戸籍はコンピュータ化されているため、シンプルで読みやすいのに対し、一般的な相続で見る機会が多い大正4年式戸籍は、ある程度の知識や経験が必要です。

 

なぜなら、当時は「家」を単位とする戸籍であり、戸籍に書かれる内容が現在とは異なっていたからです。

 

また、小さな手書き文字で書かれていたこともあって、毛筆文字がかすれていたり、読み取りにくい状態になっていることも、その原因です。

 

手書き文字の読み取り方は別として、大正4年式戸籍の見方を知っておくと、相続で取り寄せた戸籍を読む際に役立ちます。

 

戸籍には何が書かれている?

 

戸籍は、被相続人や相続人との関係を証明することができ、相続には不可欠な書類ですが、何が書かれているのでしょうか?

 

戸籍には、「本籍」「戸籍の筆頭者の氏名」「戸籍事項」「戸籍に記録されている者」「身分事項」が記載されています。

 

「戸籍事項」は、戸籍を作った理由や転籍先、戸籍の閉鎖(消除)などが、日付と共に記録され、いつからいつまでの戸籍か分かります。

 

「戸籍に記録されている者」には、氏名や生年月日、父母や養父母の氏名、父母や養父母との続柄が記載されています。

 

「身分事項」には、それぞれの出生や養子縁組、婚姻、離婚、認知、死亡などの身分関係の変化が記録されています。

 

この身分事項を確認すると、その戸籍にいつからいつまで在籍していたかを知ることができます。

 

戸籍制度の変遷

 

戸籍制度は、本籍や、夫婦や親子など親族の身分関係、婚姻、離婚、縁組、離縁など、人との身分関係の形成や消滅を記録して、証明する制度です

 

現代の戸籍制度は、明治5年に始まり、その後、明治19年、同31年、大正4年、昭和23年、平成6年と制度が変わり、6種類の戸籍があります。

 

なお、昭和23頃までに生まれた方は、大正4年式戸籍がスタートとなるため、現在の一般的な相続では、この戸籍を見る機会が多くなります。

 

一方、出生が記録された戸籍は、一般的に、死亡までの間に婚姻や転籍などによって除籍や消除され、その都度、新たな戸籍が編成されます。

 

また、婚姻や転籍など、本人に新たな戸籍を作る原因がない場合でも、制度改正があれば、新たな戸籍が「編成」されます。

 

したがって、相続で出生から死亡までの戸籍を揃える場合は、このような戸籍の編成や消除があるため、数種類の戸籍を取得することになるのです。

 

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戸籍制度の変遷

 

大正4年式戸籍の特徴

 

この時代の戸籍は、現在のような夫婦単位ではなく、戸主を筆頭者とする「家」単位で作られていました。

 

このため、現在の戸籍には記載されない、オジやオバ、その配偶者、従兄弟、孫などが1つの戸籍に記載されていたのです。

 

また、先に紹介した「戸籍事項」には、以前の戸籍に書かれていた「戸籍の編成要因」すべてが転記されていたことも、大きな特徴です。

 

このため、戸籍を編成した理由が複数記載されていることが珍しくなく、いつ作られた戸籍か見誤る原因となりがちです。

 

戸籍事項に書いてあること

 

「戸籍事項」には、戸籍の編製や消除の原因と、その日付が記載されています。

 

大正4年式戸籍の編成と消除の原因には、「家」を単位とする戸籍特有のものもあるため、確認しておきましょう。

 

この「家」は、戸主と親族で構成され、戸主は、家督相続によって親から子へ引き継がれ、新たな戸籍が編製されました。

 

新たに戸籍を編製する原因としては、ほかに「分家」「創立」「廃家または絶家の再興」、「転籍」、「戸籍の改製」などがあります。

 

ちなみに、現在は、婚姻すれば新たな戸籍が編製されますが、大正4年式戸籍では、当然に新たな戸籍が作られるわけではありませんでした。

 

一方、戸籍を消除する原因としては、「家督相続」「廃家」「絶家」「他市町村への転籍」「戸籍の改製」などがあります。

 

まとめ

 

一般的に、戸籍を見る機会は少ないものの、相続が発生すると、往々にして、手書きで書かれた制度改正以前の戸籍を目にする傾向にあります。

 

最新の戸籍は、コンピュータ化されているため、非常に分かりやすくなっています。

 

また、それ以前の戸籍でも、夫婦単位になった昭和23年式戸籍までは、比較的分かりやすいと言えます。

 

しかしながら、大正4年式戸籍やそれ以前の戸籍になると、手書きの文字を読み取ることが難しいことに加え、書かれている事項が異なります。

 

相続で、被相続人の出生から死亡までの戸籍を取得する際には、この大正4年式戸籍を読み取ることがカギになるかもしれません。

 

不明な点や不安がある場合などは、市区町村役場や専門家などに相談することがおすすめです。

一部売却で袋地になってしまう農地をどうする

袋地は、農地でも宅地でも、公道との往来ができなければ利用できなくなってしまうため、所有者には通行権が認められます。

 

ただし、通路の広さは、車が出入りするほどの幅が当然認められるわけではなく、農業を営むにしても宅地化するにしても、難しい問題を抱えることになります。

 

袋地になるような分割は避けることが賢明ですが、袋地になってしまった農地を利用する場合の解決策を紹介しましょう。

 

袋地とは

 

「袋地」は、ほかの土地に囲まれて公道との間を往来できない土地のことで、河川や沼などに遮られている場合は「準袋地」と呼ばれます。

 

使い勝手が良くないため、土地の評価が大幅にダウンし、買い手が現れないことも珍しくありません。

 

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袋地

 

袋地になるとどうなる

 

準袋地も含め、袋地には建物を建築することができず、農業を続けることも簡単ではありません。

 

農地の場合は、農作業用の機械や運搬用の車が出入りできなければ、事実上、農業を営むことは困難になってしまいます。

 

特に、農地は袋地が多いと言われ、相続などの際の分割や、道路に面した部分の宅地化や売却などによって、一層袋地が発生しやすい状況にありますす。

 

今後は、2022年の生産緑地の指定期限切れを迎えることから、固定資産税のアップ前に手放す動きも加速しそうな気配です。

 

一方、宅地の場合は、建築基準法により、公道に2m以上の間口の広さで接していない土地には、建物を建築することができないとされています。

 

公道に接していなければ、火災や地震などの際に非難が困難で、消防車や救急車などの緊急自動車がたどり着くことができない危険も伴います。

 

このような土地を売却しようと思っても、一般的な買い手が現れることは滅多になく、価格も近隣土地の半値以下になってしまうかもしれません。

 

袋地の囲繞地通行権

 

袋地が利用できない土地となってしまわないように袋地の所有者には、民法で必要最低限の通行権が認められています。

 

これは「公道に至るための他の土地の通行権」と呼ばれるもので、登記の必要もなく、袋地の所有者に「当然認められる」のです。

 

なお、この通行権は、一般的に「囲繞地通行権」として知られています。

 

この通行権は、袋地や囲繞地の所有者が変わっても消滅することはなく、いずれが売却された場合も、通行権が承継されます。

 

ただし、この通行権は、通行する土地(囲繞地)所有者の犠牲によって成立するため、袋地所有者の通行にとって必要で、かつ、損害が最も少ない範囲に限定されます。

 

また、囲繞地の所有者に損害が発生する場合は、袋地の所有者は、賠償金に当たる「償金」を支払う必要があります。

 

なお、「償金」については、囲繞地と分割した結果で生じた袋地の場合、支払が不要とも定められています。

 

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囲繞地通行権

 

建物を建てることができる?

 

民法によって、公道までの通行が認められるなら、人や自転車、自動車、トラクターなども通行でき、建築基準法の接道義務は無関係ではないかとも思われます。

 

しかしながら、この通行権は、無制限に認められるものではなく、通常は人や自転車の通行程度と解されています。

 

なぜなら、通り抜けする土地の所有者にしてみれば、ただでさえ犠牲を払わなければならないわけですから、損害を被るような通行までは認められないのです。

 

最高裁の判決でも、囲繞地通行権が与えられるにしても、建築基準法の接道要件を満たさなければならないような通行権が「当然に認められると解することはできない」とされています。

 

つまり、建築基準法の接道義務要件を満たすことができるとは限らないのです。

 

道路側を売却したら袋地になってしまった農地を利用したい場合の解決策

 

ここまで見てきたように、囲繞地通行権があるからと言って、袋地にハンディキャップがあることは確かです。

 

この囲繞地通行権を巡る判例は多く、裏返せば、トラブルに発展するケースが多いことの証拠でもあります。

 

では、相続した農地が袋地であった場合や、公道側を分割して売却したら袋地が発生してしまう場合など、袋地を利用できるようにする解決策はあるのでしょうか。

 

通行地役権

 

袋地と囲繞地の所有者の話し合いで合意すれば、「通行地役権」契約を結んで、通行する場所や道路幅を設定することができます。

 

契約は、有償でも無償でも両者の合意があれば成立し、囲繞地通行権のような必要最低限の場所や通路幅に限らず、両者の合意で設定できます。

 

ただし、通行地役権は通行できる権利であって、駐車はできないため、その必要があれば「賃借権」を設定することで解決可能です。

 

この権利については、「当然認められる」囲繞地の通行権とは異なり、第三者に対抗するためには共同での登記が必要になります。

 

この場合は、できるだけ登記しておくことをおすすすめします。

 

等価交換や通路部分の購入

 

袋地を解決する方法として、通路部分と袋地の一部を交換する方法や、通路部分を購入する方法があります。

 

囲繞地所有者の合意が必要なほか、分筆を行うための測量、所有権移転登記手続きなどが必要で、かなりの労力や費用、期間がかかりますが、確実な方法ではあります。

 

ただし、農地の場合は、交換するにしても購入するにしても、農地法の許可が必要となるため、決して安易に考えないことが大切です。

 

まとめ

 

袋地は、いずれにしても利用しにくく、相続や売買などをきっかけとして、土地の維持管理が難しくなることが少なくありません。

 

このような土地の分割や分筆、売買、賃貸などに際しては、自動車や中大型の農機具などの通行や、建築基準法の接道義務要件などについて、しっかり確認しておくことが重要です。

「相続分の譲渡」揉める協議からの離脱や相続不動産の放棄

親の兄弟仲が悪く、疎遠になってしまった祖父が亡くなり、伯父から代襲相続人としての相続について連絡がありました。

 

山里奥深いところにある親の実家には、幼いころに数回行ったことがあるものの、場所や親せきの人たちの顔も記憶にありません。

 

主な遺産は、山林や原野、山間の農地などで、ほとんど魅力を感じていません。

むしろ、伯父や伯母が遺産分割協議で揉めているようで、関わりたくないと考えています。

 

相続放棄できることは知っていますが、家庭裁判所が遠いうえに、なにかと手間がかかると躊躇しているうちに、3カ月以上過ぎてしまいました。

 

このような場合に、遺産や遺産分割協議に関わらないで済む方法として、「相続分の譲渡」があります。

 

相続分の譲渡とは?

 

相続人になると、法定相続分を取得する権利が与えられますが、自分の相続分を他人に譲渡することを「相続分の譲渡」と呼びます。

 

相続分は、配偶者や子、親、兄弟姉妹などの相続人に与えられる、遺産の割合です。

 

図の例では、遺産を4人の子で均等に分けることになり、代襲相続人は、二男の相続分となった4分の1が相続分です。

 

なお、相続の連絡が来た時点では明らかではありませんでしたが、もし負債があれば、それも代襲相続人が受け継ぐことになってしまいます。

 

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揉める遺産分割協議からの離脱

 

譲渡の条件や相手

 

相続分の譲渡は、譲渡人と譲受人の合意があれば成立し、他の相続人の同意は不要です。

 

譲渡する相手方は、相続人でも第三者でも良く、複数の方に譲渡することもできるなど、配分は自由に決めることができます。

 

なお、第三者に譲渡された場合は、残りの相続人全員で行う遺産分割協議に、譲渡を受けた方が加わる必要があります。

 

また、譲渡は贈与とみなされ、有償・無償のどちらでもかまいませんが、有償の場合は、譲り受けた方によって相続税や贈与税などの課税対象になります。

 

負債も一緒に譲渡される

 

相続分を譲渡すると、プラスの遺産だけでなく、同時に相続債務も譲り渡されます

 

したがって、代襲相続人がオジやオバなどに譲渡すれば、負債があってもオジやオバなどが負うことになります。

 

ただし、これは当事者間の合意にとどまり、債権者には対抗できないことに注意が必要です。

 

つまり、譲渡された方が返済すれば問題ありませんが、債権者から請求された場合には応じなければならない可能性があります。

 

相続分の譲渡による相続債務については、相続放棄とは異なり、必ず取り立てや返済から免れるとは限りません。

 

譲渡できないケース

 

相続放棄のような3カ月といった期限はありませんが、譲渡できない場合もあります。

 

基本的に、遺産分割の前でなければ譲渡できず遺言で分割方法が指定された財産については、相続分の譲渡の対象とすることはできません

 

なお、相続人全員の同意があるなら、遺言や遺産分割後でも譲渡することが可能です。

 

揉めてしまった遺産分割協議からの離脱

 

譲渡してしまえば、相続する財産がなくなります。

 

このため、本来は相続人全員で行う必要がある遺産分割協議に、相続放棄と同様、譲渡した方は加わる必要がありません

 

一般的に、相続分の譲渡は、相続放棄や遺産分割協議の代わりに、共同相続人などの当事者を整理するために利用される方法です。

 

特に、相続分を取得したくない場合や、遺産分割協議やその調停手続などに関わりたくない場合に、離脱するための手段となります。

 

なお、相続分を譲渡したことを証明するためには、「相続分譲渡証書」を作成して署名と押印の上、印鑑登録証明書を添付すれば、家庭裁判所にも認められます。

 

相続放棄の熟慮期間を過ぎてからも不動産を相続放棄できる

 

相続分の譲渡は、相続分を特定の人に譲渡でき、後順位の相続人が相続権を取得しないことや、一部の相続分に限って譲渡できるメリットがあります。

 

これに加えて、期限や手続きについて、相続放棄にはないメリットがあります。

 

遺産分割前なら、いつでもできる

 

相続放棄であれば、3カ月の熟慮期間が過ぎると認められないのに対し、相続分の譲渡には特別な期限がありません

 

相続発生や相続を知ったときからの経過期間とは関係なく、遺産分割前なら、いつでも譲渡できます。

 

また、相続人の間で決めるだけで済み、相続放棄のような家庭裁判所での面倒な手続きが必要ありません。

 

つまり、他の相続人などへの相続分の譲渡は、遺産を取得しない、つまり、単純に表現すれば、放棄することになるのです。

 

相続分譲渡証明書

 

譲渡は、口頭でも成立するものの、「相続分譲渡証明書」あるいは「相続分譲渡証書」として、証明書を作成することが一般的です。

 

証明書を作成しておけば、後のトラブルを防ぐことができ、かりに遺産分割調停や遺産分割審判になった場合でも、これらに参加する必要がなくなります。

 

なお、この相続分譲渡証書があれば、相続した方が不動産を登記する際に、登記原因証明情報として利用することもできます。

 

まとめ

 

このように、相続分の譲渡は、相続人の間では相続放棄と同様の役割を果たしてくれます。

 

ただし、譲渡に負債がある場合は、あくまでも相続人間での取り決めと扱われることから、注意しなければなりません。

 

このため、遺産に債務がある場合は、相続分の譲渡ではなく、相続放棄を検討することをおすすめします。

 

不動産を相続や贈与されたときの所有権移転登記の登録免許税

遺言で不動産を譲り受けたら、所有者の名義を変えるために「所有権移転登記」の申請手続きを行います。

 

名義を変更しておかなければ、将来的に売買や相続などでトラブルが発生する恐れがあります。

 

この手続きを行う際は、登録免許税と呼ばれる税金がかかりますが、「相続」と、遺言で贈与する「遺贈」で異なることをご存知でしょうか。

 

相続では、登録免許税率が低く、相続未登記に対応するための免税措置も設けられているのに対し、遺贈による登録免許税は割高になります。

 

また、「相続させる」場合は、単独で登記できるのに対し、「遺贈する」場合は他の相続人と共同で登記を行わなければならない制約もあります。

 

遺言の作成や執行の際には、このような不動産特有の登記についても把握しておくことが大切です。

 

「相続させる」と「遺贈する」の違い

 

遺言では、だれにどれだけの財産を与えるかなどを指定できます。

 

法定相続人には、相続の発生と同時に法定相続分の権利が与えられる一方、内縁関係にある配偶者や面倒を見てくれた義理の娘などは相続人になりません。

 

しかしながら、遺言で指定しておけば、特定の相続人に相続させることや、相続人にはなれない方に財産を譲ることができます

 

このような指定を行う場合、通常、相続人に対しては「相続させる」、相続人以外の方には「遺贈する」と表現します。

 

なお、「遺贈」は、遺言で特定の財産を無償で与える「贈与」を意味し、だれに対しても遺贈できますが、ここでは第三者に対する贈与に限定して話を進めます。

 

では、「相続させる」と、第三者に「遺贈する」場合とでは、どのような違いがあるのでしょうか。

 

「相続させる」

 

「相続させる」遺言は、「特定財産承継遺言」と呼ばれ、複数の相続人のうち特定の相続人に、特定の財産を相続させる場合に使う表現です。

 

遺言は、通常相続開始時に効力が発生し、書かれたとおり、指定した相続人が指定した財産を受け継ぐ効果が発生します。

 

「遺贈する」不動産の登記は、相続人の反対があるとできない

 

一方、「遺贈する」遺言で、特定の第三者に、特定の財産を無償で与えることができますが、不動産の場合は「相続させる」とは法的効果が異なります。

 

「相続させる」場合は、譲り受けた方が単独で登記できるのに対し、「遺贈する」場合の登記は、相続人と共同で行わなければなりません。

 

つまり、単独では登記できず、相続人の反対があると、所有権移転の登記ができなくなってしまう恐れもあるのです。

 

「相続させる」と「遺贈する」では登録免許税額が異なる

 

以前は、相続人であっても、「相続」と「遺贈」では登録免許税が異なり、遺贈による場合の税額が高く設定されていました。

 

現在では、相続人に対する登録免許税は、相続でも遺贈でも同額ですが、相続人ではない方が遺贈を受ける場合は現在も割高になっています。

 

登録免許税とは?

 

相続や遺贈で不動産を譲り受けると、所有者を亡くなった方から譲り受けた方に変更する登記が必要です。

 

この登記には税金がかかり、その税金は「登録免許税」と呼ばれます。

 

登記は、不動産の所有者がだれか分かるように、法務局で管理する「登記簿」に記録する手続きで、その際に登録免許税がかかります

 

登記簿には、土地や建物の所在や面積、所有者の住所や氏名などが記録され、だれでも閲覧することができます。

 

このような制度によって、他人に対して自分の所有物であることを主張でき、売買などもスムーズにできる仕組みになっています。

 

登録免許税の計算方法と税率

 

登録免許税の額は、土地や建物の「固定資産税評価額」に税率をかけて計算します。

 

税率は、新築した自宅の所有権保存、中古住宅の売買や相続、贈与などによる所有権移転、住宅ローンなどの担保とする抵当権設定などで異なります。

 

相続や贈与の登記手続きは「所有権移転登記」と呼ばれるもので、「相続」の税率は0.4%ですが、「贈与」の場合は2%です。

 

たとえば、固定資産税評価額が2,000万円の土地を譲り受けた場合に、相続では8万円で済むのに対し、贈与の場合は40万円の登録免許税がかかります。

 

免税

 

田舎にある不動産を相続するような場合は、点在する農地や山林、原野などを多数譲り受けるケースも珍しくありません。

 

このような場合も、所有権移転登記には登録免許税がかかりますが、すべてに登録免許税がかかるわけではなくなりました。

 

というのも、平成30(2018)年の税制改正によって、相続登記を促進するために、登録免許税の免税措置が設けられたからです。

 

指定された地域にある10万円以下の土地は免税

 

法務局ごとに、相続登記の促進を特に図る必要があるとして、法務大臣が指定する市街化区域外の土地については、評価額が10万円以下なら免税です。

 

2021年3月までの限定ですが、筆者の住む県では、県庁所在地と人口の多い市などを除く市町村で、多くの土地が指定に該当しています。

 

相続未登記分を登記する場合は該当部分が免除

 

相続未登記の土地を相続した方は、所有権移転登記を行う際に、まず未登記の部分を解消しなければなりません。

 

たとえば、亡くなった父が相続したものの、相続登記をしなかった場合は、その相続人が自分の名義に変更する際に、まず亡き父親名義に変更しなければなりません。

 

こうなると、亡き父と自分の相続登記で、2回分の登録免許税がかかってしまいます。

 

2018年の改正により、このような相続登記では、2021年3月まで、未登記部分の登録免許税が免除されることになりました。

 

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登録免許税が免除


まとめ

 

遺言の作成や執行では、相続税に注意を奪われがちですが、そのほかの税金や手続きなどにも注意を払う必要があります。

 

不動産の相続や遺贈でも、将来的な賃借や売買、相続などに登記が欠かせず、登記の際は登録免許税や依頼する費用がかかります。

 

また、遺贈では、単独で登記ができず、登録免許税も割高になるとともに、相続では課されない不動産取得税がかかるなどの違いもあります。

 

今回は登録免許税について紹介しましたが、遺言の作成や執行時には、不動産特有の税金や手続きなどについて把握しておくことも大切です。

遺言のススメ

多くの方が自分の死後も、先祖から受け継いだ財産や自分が築いた財産を、有効に活かしてほしいと願っています。

 

そんな思いを叶えるためには、相続に自分の意思を反映させることができ、親族間のトラブルを避けることもできる遺言書を作成しておくことがおすすめです。

 

自分一人で完結できる自筆証書遺言は、作成や保管のデメリットが改善され、利用しやすくなっています。

 

遺言で思い通りに指定でき、自筆証書遺言なら負担が少ない

 

遺言では、相続人それぞれの財産割合や相続させる財産など、自分が望む財産の分け方を指定できます。

 

遺言によって、必要とする方が必要な財産を相続できれば、事業の承継、自宅の登記や居住なども円滑・円満に進めることができます。

 

なかでも自筆証書遺言なら、自分一人で手軽に作成できるうえに、作成した遺言書を役所に保管してもらうこともできるようになりました。

 

自筆証書遺言は、費用がかからず、他人を煩わすこともなく自分一人で完結できるうえに、書き直しも自由なことが大きな特徴です。

 

ただし、何を書いても良いわけではなく、形式や、相続人に認められる「遺留分」など法的な有効性についての注意が必要です。

 

また、すべてを自筆で書く必要がありましたが、2019年からは、一部をパソコンで作成することなどが認められ、自筆負担を少なくできます。

 

さらに、作成した自筆証書遺言は、法務局に保管を依頼できる選択肢ができたために、より利用しやすくなっています。

 

民法改正で手書きが少なくて済む

 

2019年から一部をパソコンで作成することができるようになったと書きましたが、もう少し詳しく紹介しましょう。

 

新たにパソコンで作成することなどが認められたのは、財産の明細書である「財産目録です。

 

パソコンを利用すれば、土地や建物などの不動産、預貯金などの明細を手軽に整理でき、修正も容易です。

 

また、パソコンによる作成だけでなく、家族が代筆で作成しても問題なく、既存資料のコピーで代用も可能です。

 

既存資料としては、不動産の全部事項証明書や、金融機関の通帳のコピーなどを利用できます。

 

ただし、自筆以外で作成した財産目録には、1枚1枚に遺言者自身の署名と押印が必要です。

 

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自筆証書遺言をパソコンで作成するイメージ

法務局に保管を依頼できる

 

パソコンの利用と同様、民法改正によって、作成した自筆証書遺言を法務局に保管してもらうことができるようになっています。

 

それまでは、遺言を自分で保管しなければならず、死後に発見されにくいことや、隠ぺいや改ざんされやすいことなどが問題視されてきました。

 

民法改正では、これらのデメリットを解消できる仕組みとして、法務局に保管を依頼できる選択肢が新たに加わることになりました。

 

この制度は、2020年7月10日から始まったもので、法務局が、自筆証書遺言としての形式を審査し、保管してくれるものです。

 

法務局からは、保管していることについての証明書を発行してもらうことができ、遺言書の画像情報は全国の法務局で共有されます。

 

相続人が遺言書の開示を請求すれば、全国にある地方法務局で閲覧が可能になります。

 

また、相続人の一部が遺言内容を閲覧した場合は、他の相続人にも遺言書の内容が知らされるため、相続人どうしの公平性も保たれます。

 

遺言者自身が保管する場合とは違い、開封するための家庭裁判所への検認手続きも必要ありません

 

まとめ

 

遺言を作成しておけば、相続に自分の意思を反映させることができ、親族間のトラブルを避けることもできます。

 

遺言には3種類ありますが、その中でも自筆証書遺言なら、自分一人で完結でき、あとで書き直すことも自由にできます。

 

2019年からは、財産目録をパソコンで作成して自筆部分を減らすことが認められるなど、全文自筆の負担も軽減されています。

 

最近では「終活」が注目され、財産の整理やエンディングノートを始める方も増え始めています。

 

遺言書の作成は、終活で行うべきことの一つに挙げられているように、相続を円滑にするための意思表示です。

 

子孫に自分の人生を伝えるためにも、自筆証書遺言を作成してみてはいかがでしょうか。