土地の所有権を放棄できる法律が成立!相続した田舎の土地を手放せる?

所有者がわからないまま売買や利用もできない土地が急激に増え、社会的な問題となっています。

隣地がそのような土地であれば、工事での立ち入りや配管なども承諾が得られず、建物の老朽化や草木の繁茂など迷惑を被ることにもつながります。

 

以前のブログ「相続した不動産の相続登記が義務化される?所有権放棄なども検討中」では、この問題解決のための検討状況について紹介しました。

今回のブログは、一連の見直しの結果、2021年4月21日に成立した所有者不明土地関連の法律の概要を紹介します。

その中でも特に、所有権を放棄できる法律について焦点を当て、相続した不要な土地を手放せるようになるかを検証します。

 

制度を変える背景

 

国土交通省が行った2017年の調査によれば、土地全体に占める所有者が不明な土地の割合は、全国で22%にも上っています。

不動産登記簿には所有者の氏名と住所が記録されているため、本来なら登記簿から所有者を探し当てることができる仕組みとなっています。

しかしながら、相続登記がなされていないことや住所が変わっても登記簿の住所を変更していないことが原因で、所有者に連絡をとれなくなっているのです。

全国で22%もある不明土地のうち、なんと66%が相続登記の未了が原因で、残りの34%が住所変更登記の未了が原因です。

 

所有者が亡くなっていれば戸籍をたどる必要があるものの、時間が経てば相続人の数が膨大になることも珍しくなく、全員に連絡を取ることは容易ではありません。

それに、戸籍はだれでも入手できるわけではありません。

また、所有者が転居などによって記録された住所に住んでいない場合も、住民票や戸籍の附表を入手できなければ、その先を調べようがないのです。

 

このような状況が生まれる背景としては、相続登記が義務ではないことが大きな要因の一つであるとして、制度を変える検討が進められてきました。

わざわざ登記しなくても相続人に不都合はなく、土地に対する執着も薄れてきているため、先祖が残した土地を相続するという意識も希薄化しつつあるようです。

このまま放置すれば、相続されないまま取り残された土地がねずみ算式に増え、今後ますます深刻化する懸念から制度改正に至ったというわけです。

 

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相続した田舎の不動産は維持管理が課題

 

新しい制度のあらまし

 

2021年4月21日には「民法等の一部を改正する法律」と「相続等により取得した土地所有権の国庫への帰属に関する法律」が成立し、同28日に公布されました。

二つの法律は、所有者不明土地の発生予防と利用円滑化の2つの面から、民事基本法制を総合的に見直すものとなっています。

 

一つ目の発生予防の観点からは不動産登記法が改正され、現行では任意の相続登記や住所などの変更登記の申請が義務化されます。

ただし、このような手続きについては簡素化や合理化する方策がパッケージで盛り込まれます。

また、このブログのテーマである所有権の放棄についても新たな制度が定められます。

相続などによって土地の所有権を取得した方は、法務大臣の承認が得られれば土地の所有権を国庫に帰属させることができる制度です。

詳しくは後段で紹介します。

 

二つ目の利用円滑化の観点からは、所有者が不明な土地の管理制度を新設するとともに、共有者が不明な場合にも共有地を利用しやすい仕組みが整備されます。

また、相続開始から10年が経過した後の遺産分割については、画一的な法定相続分で簡明に行うことができる仕組みが新たに整備されることになります。

また、隣地を通過してライフラインを引き込む場合については、所有者が不明な状態でも対応できる仕組みが整備されます。

 

所有者不明土地の発生を予防する相続土地国庫帰属法

 

土地を相続することを望まない方が増えていることなどを背景として、相続した土地を手放したいと考えている方が増えています。

望まない土地を相続した方にしてみれば、所有者としての負担感だけが大きくなってしまうことが背景にあります。

このため、相続または相続人に対する遺贈に限定して、取得した土地を国に帰属させることを可能とする制度が新たに作られました。

 

しかしながら、管理コストを国に転嫁させるためや土地の管理をおろそかにするといったモラルハザードの発生が問題になります。

これを防止するため、手放すことができる要件を定め、法務大臣が妥当かどうかを審査する仕組みが作られることになっています。

また、費用として、審査手数料と10年分の土地管理費用を納めなければなりません。

10年分の土地管理費用としては、原野で約20万円、市街地の宅地200平方メートルで約80万円が想定されています。

 

つまり、この新たな制度では、手放すことができる土地に該当するかを法務大臣が審査し、承認されて費用を払えば所有権を国に渡すことができることになるのです。

 

手放すことできる土地の要件

 

土地の要件や費用の詳細については、政省令で規定するとされているものの、まだ具体的に示されるには至っていない段階です。

 

現在決まっている土地の一般的な要件について、例示されているものを列挙してみましょう。

・建物や通常の管理または処分を阻害する工作物などがない

・土壌汚染や埋設物がない

・崖地ではない

・権利関係に争いがない

・担保権などが設定されていない

・通路など他人によって使用されていない

なお、共有地の場合、共有者全員で申請する必要があるとされています。

 

これらの要件は、一般論ですが、容易に売買や賃借などの対象になりそうな条件ばかりが列挙されているようにも思われます。

つまり、買い手や借り手が容易に見つかるような土地であれば、手放したいと思うことも少ないでしょう。

また、老朽化した空き家が現存していれば除却して更地にしなければならないことも想定されます。

したがって、現在示されている土地の要件だけから考えると、不要な土地を手放すという観点からはハードルが高そうです。

 

まとめ

 

新たな法律の施行日は、公布から2年以内に政令で定めるとされています。

また、相続登記を義務化する改正については公布後3年以内、住所変更登記を義務化する改正については、5年以内に政令で定めるとされています。

ただし、現在のところ政令は定められていないため、実際の施行がいつになるか決まっているわけではありません。

このため、制度の利用を検討したい場合は、今後の政令による具体化を見守る必要があります。

詳しく知りたい方は、法務省のホームページでご確認ください。

相続した田畑の価値は?

相続や贈与によって田畑を取得することになると、どれほどの価値があるのか想像しにくいため、相続税や贈与税を心配する声が多く聞かれます。

宅地なら、路線価や固定資産税評価額をもとに評価することをご存じの方も多いことでしょう。

また、全国を対象とした公示地価が毎年公表されてメディアでも取り上げられるため、宅地価格の動向を知る機会は多いかもしれません。

 

一方、農地の評価額は、宅地と同様、路線価または固定資産税評価額をもとに土地の評価額を計算することになるのですが、宅地と同じではありません。

また、農地の売買事例は少ないために実勢価格を知ることは難しく、メディアでも農地価格の動向が取り上げられることは稀と言えます。

 

今回のブログでは、あまり知られていない、農地を評価する方法や農地価格についての最新の調査結果について紹介します。

 

宅地の評価

 

農地の評価や価格動向を紹介する前に、まず宅地の評価方法について確認しておきましょう。

宅地の評価は、路線価が設定されている地域では路線価方式、それ以外の地域では倍率方式によって計算します。

 

路線価方式

 

路線価は、相続や贈与によって取得した土地を評価する場合に基準となる価格で、毎年1月1日現在の価格として、国税庁から公表されています。

土地に面する道路ごとに、1平方メートル当たりの土地価格が決められています。

公示地価との比較では、路線価は公示価格の概ね8割程度になるよう設定されることになっています。

 

それぞれの宅地評価額については、路線価に土地の面積を乗じて求めることになります。

「路線価方式による土地評価額」=「路線価」×「土地の面積」

 

倍率方式

 

路線価が決められていない地域では、固定資産税評価額に一定の倍率を乗じて評価する方法で計算します。

倍率については、国税庁によって地域ごと土地の種類ごとに定められています。

「倍率方式による土地評価額」

=「固定資産税評価額」×(地域や土地の種類ごとに定められた)「倍率」

 

固定資産税評価額は、市町村が定める土地の評価額です。

1月1日現在の価格として定められ、3年ごとに見直されています。

この価格は、固定資産税や都市計画税、不動産取得税、登録免許税などの税金を計算するための基準として利用されています。

公示地価との比較では、固定資産税評価額は公示地価の概ね7割程度になるように設定されることになっています。

 

農地の評価

 

農地を評価する場合は、市街地や市街地の周辺にあるか、それ以外の地域にあるかによって、評価方法が異なります。

 

市街地や市街地の周辺にある農地とは?

 

税務上、農地は純農地、中間農地、市街地周辺農地、市街地農地の4種類に区分されています。

都市計画法や農地法によつ区分で分け直してみると、市街化区域内にある農地は市街地農地ということになります。

また、市街地周辺農地は、市街化調整区域内にある農地のうち第3種農地に該当しています。

つまり、単純に表現すれば、農地以外への転用が可能な農地に分類されている場合は、市街地や市街地の周辺にある農地として、特別な方法で評価することになります。

 

市街地にある農地の評価方法

 

このような農地については、宅地批准方式または倍率方式によって評価額を求めます。

宅地批准方式は、宅地として造成された農地と仮定して、宅地の価格から造成費を差引いて求める方法です。

「市街地にある農地の評価額」=「宅地の価格」―「造成費」

 

宅地の価格は、路線価が設定されている地域では路線価を用い、路線価の設定がない倍率方式の地域では近隣宅地の評価額を基に計算します。

近隣宅地の評価額は「宅地としての固定資産税評価額×宅地としての評価倍率」によって計算することになります。

なお、造成費については、地域ごとに定められた標準的な額が国税庁のホームページで公表されています。

 

市街地以外にある農地

 

市街地の周辺にある農地については、市街地農地として評価した額の80%として評価します。

一方、それ以外の地域については、倍率方式によって評価することになります。

 

農地価格の動向

 

農地価格については、(一社)全国農業会議所が毎年「田畑売買価格等に関する調査」を行って、公表しています。

この調査は、1956年以降毎年、全国で約1万1千地区を対象として、耕作目的の売買価格と転用目的の売買価格を調べているものです。

以下では、2021年3月26日に公表された、2020年の調査結果を紹介します。

 

価格と動向

 

市街地やその周辺を除く、純粋な農業地域における2020年の10当たり全国平均の農地価格は、標準的な田で113 万3千円、畑では83 万8千円でした。

農地の価格は、ピークとなった1994年を境に26年連続で低下しています。

ちなみに、2020年の農地価格を最高となった1994年と比べると、田は43.4%、畑は39.2%も下がったことになります。

 

地域別にみると、低下の幅には違いがあるものの全ての地域で低下し、特に農業が盛んな東北や九州などで低下の幅が大きくなっていることが明らかになっています。

 

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田畑価格の推移

 

低下の要因

 

宅地や商業地などと異なり、農地の価格は立地条件や経済状況、人気などに影響されにくいと言われているものの、需要が少ないことが低下要因となっているようです。

主な要因として、買い手の減少や買い控え、農産物価格の低迷、後継者不足、労働力不足などがあげられています。

少子高齢化や都市圏への集中が進み続けている現状では、農地価格の低下に歯止めをかけるのは難しいのかもしれません。

 

まとめ

 

市街地や周辺にある農地の評価額は、造成費分を差し引くことになるものの、宅地並みに路線価で評価することにはなることを覚えておきましょう。

一方、倍率方式の場合、農地の固定資産税評価額は低めに抑えられているものの、農地の倍率は思っているより高く設定されているかもしれません。

5倍、10倍前後の倍率が設定されている地域も珍しくありません。

気になる方は、国税庁ホームページの評価倍率表(一般の土地等用)を調べておくことをおすすめします。

 

相続した農地を宅地化したいときに必要な書類

相続した農地,、つまり所有する農地を宅地として利用するためには、農地法4条の許可が必要です。

許可の権限を持っているのは、4ha以下の場合は基本的に都道府県知事で、農地のある市町村の農業委員会経由で申請を行います。

許可を受けるためには、2つの基準をクリアする必要があり、申請書に添付する様々な書類でそれらを証明しなければなりません。

 

今回のブログでは、2つの基準と農地法4条許可申請請を行うときに添付が必要な書類について紹介します。

 

2つの基準

 許可を得るために必要な基準は大別して、立地基準と一般基準があり、両方を満たさなければなりません。

 

立地基準

原則として、市町村ごとに定められている農用地区域内農地、いわゆる青地については、転用が認められません。

ただし、不定期に農用地区域の見直しが行われることもあり、申請によって除外される可能性もあるため、農業委員会に確認することが大切です。

 

青地に指定されていない場合、農地の区分によって許可されるかどうかが決まることになります。

農地区分には、甲種、第1種、第2種、第3種の4種類あり、甲種または第1種に該当する場合は、原則として許可されません。

これらの区分は、集団的に存在しているかどうか、土地改良事業など公共投資の対象として農業を振興すべき地域であるかどうかなどによって分けられています。

 

許可が得られるのは、基本的に市街地区域や市街化の傾向が顕著な地域にある、第3種農地です。

ただし、第2種農地でも、ほかの土地を選定できない事情が認められる場合は許可されることもあります。

 

一般基準

立地条件を満たしていることに加え、確実に転用でき、周辺農地や営農に支障がないことを証明できなければ、許可を受けることができません。

 

一つ目の視点は、個人住宅の新築など、申請する用途に利用されることが確実かどうかです。

たとえば、住宅を新築するために必要な資金について、住宅ローンの融資を受ける場合は、融資の見込みが立たたなければ確実とはみなされません。

また、転用する面積が適正かどうかも審査の対象です。

転用する農地は、申請どおりに利用することが基本です。

 

二つ目の視点は、周辺の農地での営農に支障を及ぼさないかどうかです。

宅地などとして利用することによって、周辺の農地に日照や通風などの悪影響がないことが求められます。

また、土砂の流出や崩壊など災害を発生させる恐れがないことも重要な審査のポイントとなります。

 

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相続した農地の宅地転用

農地法第4条許可申請の添付書類

相続した農地を宅地に転用し、住宅を建設することを前提として、申請者が個人の場合に必要とされている添付書類について紹介します。

許可申請書と添付書類を提出するによって、主に一般基準を満たしていることを証明することになります。

具体的な添付書類については、ケースごとに異なることが考えられるため、それぞれの農業委員会で確認して準備するようにしてください。

 

土地に関する添付書類

土地に関しては、所有関係や位置を明らかにするために、登記事項証明書(全部事項証明書)、公図、案内図を添付します。

隣接して農地がある場合は、所有者の同意書を提出しなければなりません。

ただし、地上権や小作権、賃借権などに基づく耕作者がいる場合は、隣接する農地の耕作者について同意があることを証明できる書類が必要です。

 

工事と資金に関する添付書類

転用後の土地に建てる住宅については、平面図や立面図のほか、接する道路や用排水施設の位置を明記した配置図が必要です。

資金については、金融機関が発行する残高証明書や通帳のコピー、融資を利用する場合は融資決定通知書など融資が確実であることが証明できる書類を添付します。

 

その他の添付書類

所有者であることを証明するために、印鑑証明書のほか、必要に応じて住民票や戸籍謄本などを提出します。

また、それぞれの土地の状況に応じ、他の法令の許可を得る必要がある場合などは、その書面を添付します。

たとえば、土地改良区内にある場合は土地改良区の意見書などが必要です。

このような書類が必要になるかどうかは、それぞれの農地ごとに異なるため、農業委員会などでの確認が必要になります。

 

まとめ

農地法の許可に違反した場合や許可を得ずに転用した場合は、農地法第51条、第64条、第67条の罰則が適用される恐れがあります。

許可後の違反では、許可の取消しや条件変更、工事の停止命令、原状回復命令などの行政処分が下される恐れがあります。

許可を得ない転用については、3年以下の懲役または300万円以下の罰金もあります。

また、許可なしで住宅を建築しても、保存登記が認められないこともあり得ます。

手続きなどで不明や不安な点があれば、農地のある農業委員会や専門家に相談することをおすすめします。

グリーン住宅ポイントは相続した空き家の売却に有利!?

世界的な新型コロナウイルス蔓延のなか、リスクを避けるためにテレワークなどによる在宅勤務も定着の様相を見せています。

そのような流れの中で、首都圏から近隣の自治体や他県への転居や移住が注目を集め、メディアでも頻繁に取り上げられています。

地方にある不動産を相続した場合は、自ら利用する方法のほか、第三者に譲り渡すことができるチャンスとなるかもしれません。

 

今回のブログでは、2020年12月に創設されたグリーン住宅ポイント制度によって、空き家の購入にもポイントが付与されることなどを紹介します。

 

グリーン住宅ポイント制度

 

この制度は、経済回復を図るための一環として、一定の性能がある住宅の新築やリフォームに対してポイントが与えられるものです。

2020年12月15日から2021年10月31日までの、住宅の新築やリフォーム、既存住宅の購入契約が対象となります。

 

新築では最大40万円相当が、リフォームでは最大30万円相当のポイントがもらえ、一定要件を満たす新築住宅なら、最大100万円相当のポイントが手に入ります。。

ポイントは、商品や追加工事と交換できる金銭価値を持っています。

 

「既存住宅の購入」は空き家も対象になる

 

2019年12月14日以前に建築された住宅を、この制度の期間中に購入し、購入者が自ら居住するなら、基本的に30万ポイントがもらえます。

ただし、売買代金が税込みで100万円以上でなければ対象とならないことに注意が必要です。

 

住宅の要件は4つ。

いずれかに該当していればポイントの対象です。

☑ 空き家バンクの登録物件

☑ 東京圏の対象地域からの移住用

☑ 災害リスクが高い区域からの移住用

☑ 住宅の除却に伴って購入する住宅

 

住宅の除却に伴って住宅を購入した場合は15万ポイントもらえて、購入する住宅が4つの要件のどれかに当てはまれば、合計45万ポイントになります。

 

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グリーン住宅ポイント制度では空き家購入もポイントの対象

ポイントの利用

 

発行されたポイントは、商品と交換したり、工事や販売の事業者が行うリフォームやグレードアップの追加工事代金として利用できます。

ポイントは1ポイントが1円相当で、利用は1,000ポイント単位となります。

 

商品としては、家電やインテリア、雑貨・日用品、地場産品、食料品・飲料、福祉・介護用品など、様々なものが対象となっています。

また、追加工事としては、ワークスペースや防音設備の設置、換気や空気浄化製品の設置、菌・ウイルス対策、停電・断水対策などの防災対策などが選択できます。

 

空き家バンク

 

所有している空き家を、制度を利用して売却したい場合は、市区町村が主体となって運営している空き家バンクに登録しておく必要があります。

制度を利用する際に、空き家バンクに登録されているかどうかは、自治体が発行する証明書によって確認されることになります。

現在は登録していない空き家でも、売買契約の時点までに登録してあれば制度を利用できるため、まだ間に合います。

ただし、空き家バンクを運営していない自治体もあるため、確認しておきましょう。

 

まとめ

 

相続などで空き家を所有している場合、自身で利用する選択肢もあります。

この場合も、このグリーン住宅ポイント制度のうち、リフォームに対するポイント付与が利用できます。

要件はあるものの、基本的に最大で30万ポイントがもらえ、若者世帯や子育て世帯なら、最大で60万ポイントもらうことも可能です。

 

一方、空き家バンクに登録すると、自治体によっては空き家のリフォームや家財処分費用などに対する補助を受けられるケースもあります。

利用していない空き家を所有しているなら、この機会に利用や売却を検討してみると良いかもしれません。

 

預貯金の相続に関する遺言での注意点

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まず基本的な注意点として口座と相続相手を特定できるように明記しなければなりません

 

そして前述のように、預貯金を複数の相続人に分配して相続するときは割合を指定するのがおすすめです。

 

たとえば1,000万円の預金があるケースを考えてみましょう。
これを妻600万円、長男300万円、次男100万円に相続させたい場合、次の2つの書き方が考えられます。

 

具体的金額を記載する(妻600万円、長男300万円、次男100万円)
相続する割合を記載する(妻6/10、長男3/10、次男1/10)

預金額が1,000万円の場合、結果はどちらも同じなのでこれはどちらでもいいと思われるかもしれません。

しかし、この2つの書き方には明確な違いがあります。

そしてこのうち割合を記載する方がより適切であり、確実に遺言者の意思通りに相続させやすくなるのです。

 

金額を記載だと預金額に増減があったときトラブルになる可能性あり

遺言者が遺言書を作成した時点では、上記のケースでは預金が1,000万円でした。

でもこれが相続発生時、つまり遺言者が亡くなったときには預金額が変わっているかもしれません。

 

その場合、上記1のように単に相続する金額を記載していると問題となる可能性があります。


1,000万より増えた分、もしくは減った分についてはどうするのかという問題です。

たとえば預金額が500万円に半減していた場合、金融機関が残った500万円について遺言者の希望した割合で相続させるという保証はありません。

 

実務上1つの銀行はそのように扱ってくれても別の金融機関によっては扱いが異なる、ということも起こりうるわけです。

 

逆に預金額が1,500万円に増えていた場合はどうでしょうか。

この場合、上記1の記載方法では1,000万円分の金額しか指定していませんので残りの500万円については相続人全員の遺産分割協議が必要になります。

 

せっかく遺言書があるのに結局相続人全員が集まって協議する必要が生じ、手間がかかるうえに協議がうまくいかないこともあり得ます。

ですので、預貯金を複数人に分配する場合は割合を指定するのが適切といえるわけです

 

万一の記載漏れに対しても対策しておく

しっかりと財産目録を作ってから遺言書を作成したので記載漏れなんてありえない、と思われるかもしれません。

でも、万一のために記載漏れに対しても対策しておいた方が良いでしょう。

 

遺言書を作成した後に、新たに預貯金口座を作るかもしれません。

遺言書の中で触れられていな財産については、亡くなったあと相続人全員で協議しなければなりません

せっかく遺言書があっても手間がかかってしまいますし、いらぬトラブルを招く可能性もあります。


遺言を確実に残すなら公正証書遺言がおすすめ

遺言には主に以下の3つの種類があります。

自筆証書遺言(全文を自筆で書く)
公正証書遺言(公証人が作成)
秘密証書遺言(一般にはあまり用いられない)

このうち公正証書遺言で遺言書を作成するのがおすすめです。
他の方法にくらべて安全かつ確実に遺言内容を実行できます。

 

主なメリットは下記の通りです。

・法律のプロである公証人が作成するので要式不備で無効になる恐れがない
・公証人と証人2人が立ち会うので信ぴょう性が高くトラブルになりにくい
・原本は公証役場に保管されるので紛失・偽造・隠匿のリスクがない
・死後の検認の手続きが必要無いので相続手続きがスムーズ


費用はかかるが後々のトラブルを防止できる

公正証書遺言のデメリットとしては下記の点が挙げられます。

・費用がかかる
・遺言の内容が証人に知られてしまうのが困る場合がある

 

手数料は相続人数や相続財産の価額によってことなります。
たとえば、相続人3人にそれぞれ2,000万円ずつ相続する内容の遺言書だと作成手数料は80,000円となります。

立ち合ってもらう証人については信頼できる友人や守秘義務のある弁護士などに依頼すると安心でしょう。

 

確かに公正証書遺言を作成するにはいくらか費用がかかりますが、そのメリットはデメリットを上回ります。

せっかく遺族のことを考えて遺言書を作成しても、その遺言書がトラブルの原因になってしまっては元も子もありません。


また、死後見つけられなかったり要式不備で無効になってしまったりすると大変残念です。

公正証書遺言はこうしたリスクがないので安心なのです。

 

預貯金を特定の相続人に相続させる遺言書

相続財産は預貯金くらいなので遺言書を自分で作成してみよう。

こんなふうに思われる方も少なくないと思います。

 

とはいえ預貯金を相続するときの遺言書の書き方にもテクニックがあるのです。

遺言書の書き方によってはトラブルを防止することもできますし、逆にトラブルを招いてしまうこともあります。

それでここでは預貯金を相続する際の遺言書の書き方について解説していきます。

 

預貯金の相続をする際のトラブル

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よく知られていますが、相続が発生すると預金口座が凍結されてしまいます。

これは金融機関として被相続人の財産を守るために必要な対応です。
権利のない人への払い戻しや相続人間のトラブルに巻き込まれるのを防ぐために預貯金を凍結するわけです。

 

そうなるとお金の引き出しだけでなく預け入れ、自動引き落としもできなくなります。
相続手続きをして誰がその預貯金を相続するか確定するまで口座凍結を解除することはできません。

 

早々に凍結解除したいと思っても、そのためには遺言書や遺産分割協議書などが必要になります。

もし遺言書がない場合は遺産分割協議のために相続人全員の協力が必要になります。

とはいえ、この遺産分割協議がスムーズに進むとは限りません。
遺産の分割方法について相続人全員の合意がすんなり得られるとは限らないからです。

 

この協力が得られないとなると預貯金の凍結解除は大変難しくなってしまうわけです。

こうした事態を防ぐためにも、あらかじめ遺言書を作成し預貯金を誰にどのように相続させるのか特定しておくことが大切です。
そうすることで亡くなったあとの相続手続きを簡略してスピーディにすすめることができるのです。


預貯金を特定の相続人に相続させる遺言書の文例

では、預貯金の相続についてどのように書けばいいのか、遺言書の文例を具体的に解説していきたいと思います。

まず特定の相続人に相続させる場合の遺言書についてです。

 

預貯金を渡す場合は口座が特定できるように明記しなければいけません。

銀行であれば「銀行、支店名、口座の種類、口座番号」、ゆうちょ銀行であれば「ゆうちょ銀行、貯金の種類、記号、口座番号」を書きます。

 

そして特定の相続人に相続させる場合は金額も明記します。
すべてを相続させる場合は「全額」「すべて」などと書くといいでしょう。
利子についての記載にも注意が必要でしょう。

そして当然ながら誰に相続させるかもしっかりと相手を特定できるように書きます。

 

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預貯金を相続人たちに分配したい場合の遺言書の文例

では、預貯金を複数の相続人に分配したい場合はどうでしょうか。

この場合は少し複雑になりますが、書き方にテクニックが必要です。

 

理由はあとで説明しますが、下の文例のように、各相続人に分配する金額ではなく割合を指示するといいでしょう。

もちろん金額を指定した場合の遺言書も有効です。
とはいえ、下記のように割合を指定した方が遺言者の意思通りに相続しやすくなります。

 

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相続放棄や限定承認の期限と子どもに遺産相続をさせたくない場合の対処法とは?

今回は相続放棄や限定承認の手続きの期限や、子どもに遺産相続をさせたくない場合の対処法をご紹介します。

 

相続放棄や限定承認は期限に注意

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相続財産は資産と同時に負債も含まれます。
資産より負債の方が多いこともあり得ます。

 

この場合、そのまま相続をすると、相続人が負債を返済しなければなりません。

 

しかし、相続人が相続放棄や限定承認をすることによって、負債の返済を逃れることができます

 

ただし、相続放棄も限定承認も、決められた期限までに裁判所に申述しなければなりません。

 

期限を過ぎてしまった場合は、負債も含めて相続したものとみなされますので、注意しましょう。

 

いずれの手続きも相続が開始するまではできないので、相続が開始したら速やかに手続きができるように、元気なうちに相続人とよく話をしておきましょう。

 

 

相続放棄

家庭裁判所に相続放棄の申述をすることにより、はじめから相続人でなかったものとして扱われます

従って、負債は連帯保証も含めてすべて無関係になります。

ただし、資産についてもすべて無関係になるので、注意してください。

 

相続放棄の注意点

先順位の法定相続人が相続放棄をすると、後順位の法定相続人に相続権が移ります。

 

つまり、子どもが相続放棄をすると、直系尊属・兄弟姉妹などの後順位の人が、負債があった場合には抱え込むことになってしまうのです。

 

同様に、子どもが複数名いる場合に1人だけが相続放棄をすると、他の子どもが負債を抱え込むことになります。

 

相続放棄をするときには、自分だけではなく、順番に全員が放棄できるように他の相続人とよく相談をして、連絡をとりながら手続きをすすめましょう。

 

相続放棄の期限

相続放棄の申述は「自分に相続する財産があると判明した時点から3か月以内」にしなければなりません。

先順位の人が相続放棄をしたら、その時点から後順位の人が相続人になります。

 

後順位の人は、先順位の人が相続放棄をしてから3か月以内に、自分も相続放棄をしなければいけませんので、気をつけてください。

 

限定承認

遺産に負債が含まれていた場合に、残された資産で清算をしてしまって、プラスとなる財産が残ったらそれを相続するという方法を、限定承認といいます。

限定承認も相続放棄と同様に、家庭裁判所に申述して手続きをします。

 

限定承認の注意点

限定承認の手続きは相続人全員で行わなければなりません

 

相続人が複数いる場合に、1人でも単純承認(普通の相続)をしたい人がいると、限定承認はできなくなります。

 

また、そのつもりはなくても、相続人のうちの誰かが相続財産を一部でも処分してしまうと、単純承認をしたことになってしまいます。

 

限定承認をしたい場合は、前もって相続人全員でよく話し合っておくことをお勧めします。

 

限定承認の期限

限定承認の期限も「自分に相続する財産があると判明した時点から3か月以内」と定められています。

 

子どもに遺産相続をさせたくない場合の対処法

子どもに遺産相続をさせたくない場合、理由は2とおり考えられます。

 

1つは、子どもから暴力や侮辱を受けたとか、子どもに著しい非行があったなど、子どもに問題がある場合です。

 

もう1つは、負債が多いために、子どもが相続をすると苦労をかけてしまう場合です。

 

理由によって対処法も違うものになります。

 

子どもに問題がある場合

子どもに問題があるために相続させたくない場合は「遺言」「廃除」などの方法があります。

 

遺言

遺言書によってあらかじめ相続分を指定し、相続させたくない子どもには、相続させない旨の内容にしておく方法です。

 

子どもには遺留分があるので、もし子どもが遺留分侵害の請求を行った場合は、遺留分は子どもにわたってしまいますが、遺留分の請求がされなければ、子どもに遺産がわたることはありません。

 

廃除

廃除は民法に定められている制度で、遺留分を含む相続権をはく奪することができます。

 

家庭裁判所に推定相続人の廃除について申立をして、認められる必要があります。

 

廃除について遺言をする方法もありますが、やはり家庭裁判所に認められなければなりません。

 

 

負債が多くて子どもに迷惑をかけたくない場合

相続開始後に、子どもに相続放棄や限定承認をしてもらいましょう

自分の負債で迷惑をかけることを防げます。

 

しかし、子どもだけが相続放棄をすれば、配偶者や後順位の相続人に迷惑がかかることになります。

 

限定承認の場合は、相続人全員が揃って一緒に行う必要があります。

 

相続人は子どもだけではないことが多いので、子どもだけでなく、相続人全員と事前によく話をしておきましょう

 

まとめ

遺産相続については、人それぞれに事情も違えば心配も違うものです。

お子さまの将来が心配な方もいらっしゃることでしょう。

 

ご自分の負債が相続人の方々に降りかかるのではないかと、気がかりな方もいらっしゃるかもしれません。

 

専門家に相談してみることや、お子さまをはじめ相続人の方々とよくお話をしておくことが大切といえるでしょう。

 

【相続順位】遺産相続で子どもが受け取れる割合は?

相続について考えるとき、まず気になるのは「誰がどのくらいの割合で相続するのだろう」ということではないでしょうか。
お子さまがいらっしゃる場合には、お子さまの将来について気になることでしょう。

 

この記事では、子どもを中心に他の相続人も含めて相続順位について解説していきます。

 

それぞれのご事情にあわせて、参考にしてください。

 

 

遺産相続において子どもが受け取れる割合

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法定相続人の相続順位と相続分については、民法で定められています。
相続順位において、子は第1順位です。

 

ただし、被相続人に配偶者がいる場合は相続順位とは関係なく、配偶者は最優先で必ず相続人になります。

 

被相続人に配偶者がいる場合

被相続人に配偶者と子がいる場合は、まず配偶者が2分の1を相続します。
ですから、子の相続分は2分の1となります。

 

子が複数名いる場合は、2分の1を人数で等分します。

 

被相続人よりも子の方が先に亡くなっていた場合に、孫がいれば、子に代わって孫が相続をします。
これを代襲相続といいます。

 

配偶者がいない場合

被相続人に配偶者がいない場合とは、被相続人よりも先に配偶者が亡くなっているとか、被相続人が離婚をしていて、相続発生時に配偶者がいない場合などです。

 

配偶者はいなくて子がいる場合、子は相続財産のすべてを相続し、子が複数名いる場合は人数で等分します。

 

子が先に亡くなっていても孫がいる場合には、亡くなった子に代わって、孫が代襲相続をします。

 

 

遺産相続の相続順位

民法で定められた相続人のことを法定相続人といいます。

法定相続人は、配偶者、子、直系尊属、兄弟姉妹です。

 

遺産相続にあたっては、配偶者を除いて、法定相続人に相続順位が定められていて、上位の法定相続人がいない場合に、下位の法定相続人が相続することになります。

 

第1順位の相続人がいれば、第2順位、第3順位の相続人には相続権はありません。

第1順位の相続人がいない場合は、第2順位の相続人が相続します。

 

第1順位も第2順位も相続人がいない場合に、第3順位の相続人が相続します。

 

配偶者

配偶者は、相続順位の枠外の存在で、常に相続人になります。

遺産相続は、配偶者と上位の法定相続人で行い、それぞれの相続割合が定められています。

 

子(第1順位)

被相続人に子がいれば、子が相続人になります。

配偶者がいれば配偶者と子が相続人になり、配偶者がいなければ子だけが相続人です。

 

相続割合

配偶者がいる場合の相続割合は、配偶者が2分の1、子が2分の1になります。

子が複数名いる場合は、子の人数で等分します。

 

子が亡くなっている場合

前述したように、被相続人よりも子の方が先に亡くなっている場合でも、孫がいれば、孫が子に代わって相続人になります(代襲相続)。


孫がいなくてもひ孫がいれば、再代襲相続により、ひ孫が相続します。

 

直系尊属(第2順位)

被相続人に子(及び子の代襲相続人)がいないときは、第2順位の直系尊属が相続人になります。

直系尊属とは、被相続人の親、祖父母、曾祖父母のように、被相続人の血族関係をさかのぼった人をさします。

親が他界していれば祖父母、というように順にさかのぼって、健在の人がいれば相続人になります。

被相続人に配偶者がいれば、配偶者が3分の2、直系尊属が3分の1を相続します。

 

兄弟姉妹(第3順位)

被相続人に、第1順位の子(及び代襲相続人)も第2順位の直系尊属もいない場合、被相続人の兄弟姉妹が相続人になります。

兄弟姉妹が先に亡くなっている場合には、代襲相続はありますが、再代襲相続はありません。

被相続人に配偶者がいれば、配偶者が4分の3、兄弟姉妹が4分の1を相続します。

兄弟姉妹が複数名いる場合は、人数で等分します。

 

まとめ

今回は遺産相続で子どもが受け取れる割合についてみていきました。

なにかご自分に当てはまるケースなどありましたでしょうか?

 

ご参考になれば幸いです。 

【親名義の家の相続】相続時の注意点・対策方法と相続税の計算方法(2)

前回から親名義の家の相続について解説をしています。
家の評価方法や相続時の注意点・対策方法については前回の記事をご覧いただき、今回は実際の相続税の計算方法について詳しく紹介していきます。

 

家の相続税を計算する方法

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相続税を具体的に計算するためには、すべての相続財産の総額が必要だと説明しました。
また不動産の評価方法についても説明しましたので、相続財産の総額は算出できるのではないでしょうか。

 

なお、この相続財産の総額には、現金や預貯金、不動産といったプラスの財産だけでなく借金や住宅ローンなどのマイナスの財産も含まれます。
ですから、マイナスの財産があった場合は相続財産の総額が少なくなります。

 

相続税は、相続した家(不動産)単体で計算されるものではありませんが、相続税の総額を求めて、比率によって家にかかる相続税を算出することは可能です。

 

ここでは、最終的に家にかかる相続税を出すために必要な計算を順に説明していきます。

 

  1. 課税対象となる財産総額を計算する
  2. 相続税の総額を計算する
  3. 家にかかる相続税を計算する

 

(1)課税対象となる財産総額を計算する

課税対象となる財産総額は、以下の計算式で求めます。

 

課税財産総額=相続財産の総額-基礎控除額(3,000万円+600万円×法定相続人の人数)

 

基礎控除額は、法定相続人の人数によって異なります。

たとえば、被相続人が亡くなって、法定相続人となるのが配偶者と3人の子どもという場合、法定相続人の人数は4人となりますから、基礎控除額は以下のようになります。

 

基礎控除額=3,000万円+600万円×法定相続人4人=5,400万円

 

このようなケースの場合、基礎控除額が5,400万円ありますから、相続財産の総額が5,400万円以下だった場合は、課税財産総額がゼロとなりますから、相続税はかかりません。
つまり、基礎控除額を超えた相続財産額に対してのみ、相続税が課税されるということです。

(2)相続税の総額を計算する

課税財産総額が算出できたら、次は相続税の総額を計算します。

 

相続税は、相続によって財産を得た人に対して課税されるものですから、財産総額に対して相続税を計算するのではなく、各相続人の取得分を基準に計算します。

 

そのためには、まず法定相続分に応じて各相続人が取得する金額を算出します。

 

各相続人の取得金額=課税財産総額×法定相続分

 

法定相続分は、被相続人との続柄によって法律で定められた相続財産の取り分の割合です。

 

たとえば被相続人の配偶者と子ども3人が法定相続人となった場合、法定相続分は配偶者1/2、子1/2(1人当たり1/6)となります。

 

各相続人の取得金額が計算できたら、「相続税の速算表」に応じて、各相続人の相続税額を算出します。
なお、ここで算出する各相続人の相続税額は、相続税の総額を求めるための算出で使用するだけで、実際に各相続人に課税される相続税とは異なりますので、ご注意ください。

 

各相続人の相続税額=各相続人の取得金額×相続税率-控除額

 

「相続税の速算表」に関しては、以下の表をご参照ください。

 

www.nta.go.jp



たとえば、取得金額が2,000万円の相続人に対する相続税額は以下のようになります。

 

各相続人の相続税額=取得金額2,000万円×相続税率15%-控除額50万円=250万円

 

以上のような方法で各相続人の相続税額を計算し、それらをすべて合計した金額が相続税の総額となります。

 

相続税の総額=各相続人の相続税額の合計

 

(3)家にかかる相続税を計算する

相続税の総額が算出できたら、最後に法定相続割合ではなく実際に相続した割合で、この相続税総額を按分します。

 

たとえば、法定相続割合が1/6の子の場合、実際に遺産分割協議などで決まった相続財産の取得割合が1/8だったときは、相続税の負担も1/8となります。

 

さらに、各相続人の相続税の計算で適用する特例などで控除がある場合は、その控除額も差し引いて最終の相続税となります。
控除の例としては、配偶者の税額軽減や小規模宅地等の特例などがあります。

 

各人の相続税額=相続税の総額×取得割合(取得金額÷課税財産総額)-各控除額

 

同じ要領で、家にかかる相続税を計算することもできます。

 

たとえば、課税財産総額が1億円、家(建物と土地)の評価額が3,000万円、法定相続人が子2人の場合、家にかかる相続税は以下のようになります。
なお、控除額はないものとします。

 

家にかかる相続税=相続税の総額770万円×家3,000万円÷課税財産総額1億円=231万円

 

まとめ

今回は2つの記事にわたり親名義の家を相続した場合の相続税について解説をさせていただきました。


家の相続では、相続税が大きくなることも多く、土地の評価や相続税の節税対策には専門知識が必要になります。
困ったときは早めに税理士等の専門家に相談するようにしましょう。

【親名義の家の相続】相続時の注意点・対策方法と相続税の計算方法(1)

 

親が亡くなって相続が発生する場合、相続財産のメインが親名義の家というケースは非常に多いです。
基本的に親の家を相続すると、相続税が課税されることになります。

 

そこで今回は2つの記事に分けて、親名義の家を相続するときの注意点・対策方法と相続税の計算方法について解説したいと思います。

では、まず親名義の家を相続する際に注意すべき点とその対策について説明していきましょう。

 

 

親名義の家を相続する場合の注意点と対策について

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親名義の家を相続する場合、現金や預貯金の相続と違って注意すべき点がありますので説明します。

 

共有相続は避ける

親名義の家が共有相続となってしまうと、後々問題が発生します。

家は相続財産の中でも金額の大きい財産ですから、相続人が複数いると、現金のようにきっちり分割することができません

 

そのため、複数の相続人の共有名義となることがあります。
しかし、共有名義となった場合、共有者全員の同意がなければ家を売却することができません。
また時間が経過すると、共有名義者が亡くなることもあります。
そうなると共有名義者の共有持分の相続が発生し、共有名義者がどんどん増えていきますので要注意です。

 

このような事態にならないように、家を相続する相続人が他の相続人に相当分の代償金を支払って単独所有とする「代償分割」の検討をおすすめします。

 

 

親が認知症になる前に

親名義の家の相続には共有相続のような問題がつきものですから、親が元気なうちに相続について話し合っておくことをおすすめします。

特定の相続人に家を継がせたい場合は、親が遺言書を残しておくという方法をとることができます。

 

ただし、親が認知症になってしまった場合は、判断能力が十分ではないとして有効な遺言書を作成することができません。
親名義の家に長男家族が同居しており親亡き後もそのまま住み続けたいというような場合は特に、親が認知症になってしまう前に相続について話し合いをしておきましょう。

 

 

配偶者居住権の検討

2020年4月1日施行の改正民法によって、配偶者居住権という権利が新設されました

この権利により、家の「所有権」と「居住権」を分割することが可能になりました。

この権利を利用することで、被相続人が亡くなった後も配偶者は自宅に住み続けることができ、分割した所有権を子が相続することができます。

この場合、配偶者が亡くなった後、「居住権」は消滅しますが、相続人である子は既に自宅の「所有権」を持っていますから、これに関して相続税が発生することはありません。

相続税節税のためには、どちらが得かという問題はケースによって異なりますので、利用を検討する場合は、相続に詳しい税理士や弁護士などの専門家に相談しましょう。

 

 

自宅の建物と土地の評価方法

相続税は、相続する財産ごとに計算していくものではありません。
相続するすべての財産の価額に対して、相続税率を乗じて算出します。

 

相続税の対象となる財産が、現金や預貯金の場合は特に時価評価する必要はありませんから、そのままの金額となります。
ですが、対象となる財産が家(建物と土地)の場合は、評価額を算定しなければなりません。

 

建物と土地では評価方法が異なりますので、ここでは建物と土地の評価方法について個別に説明します。

 

建物の評価方法

建物の評価方法は、この後説明する土地の評価方法に比べてとても簡単です。
相続税課税対象となる評価額は、以下の通りです。

 

課税評価額=固定資産税評価額

 

固定資産税評価額とは、市区町村の役場で入手することができる「固定資産税評価証明書」に記載された金額です。
また新たに申請しなくても、毎年4月に市区町村から送られてくる「固定資産税納税通知書」に記載されていますし、この書類を証明書の代用とすることもできます。
ただし、「固定資産税納税通知書」を利用する場合は、最新の書類でなければなりませんので、ご注意ください。

 

土地の評価方法

続いて土地の評価方法です。
土地の評価方法には、路線価方式と倍率方式の2種類があります。

どちらの方式で評価するのかは、対象となる土地によって異なります。
路線価が設定されている土地(宅地等)の場合は、路線価方式で評価し、路線価が設定されていない土地(田畑や山林など)の場合は、倍率方式で評価します。

具体的に対象となる土地の路線価は、国税庁のホームページ内にある「路線価図・評価倍率表」で住所から検索して調べることができます。
該当する住所を評価倍率表で確認し、「路線価」となっている場合は路線価方式で、「路線価」となっておらず代わりに「1.3」などの数字が入っている場合は、倍率方式となります。

 

国税庁は、年度ごとに「路線価図・評価倍率表」を公表していますので、相続が発生した年度の路線価を調査しましょう。

 

www.rosenka.nta.go.jp

 

路線価方式

路線価とは、公道ごとに付けられた値段です。

路線価方式では、対象となる土地が接している道路の「路線価」を使って相続税の評価額を計算します。

 

国税庁のホームページの「路線価図」を見ると地図になっています。
対象となる土地が接している道路上に「125D」「80F」といった数字が記載されていますが、これが路線価です。

 

路線価が分かれば、以下のような計算式で相続税評価額を求めます。

 

課税評価額=路線価×土地の面積(㎡)

 

たとえば、200㎡の面積を持つ土地で、路線価が「80F」となっていた場合の課税評価額を計算してみましょう。
路線価「80F」と記載されている場合、1㎡あたりの路線価が80千円ということになります。
アルファベットの「F」は借地権割合を示しており、「F」の場合、借地権割合40%を意味します。
しかし借地権ではない場合は、無視して大丈夫です。

 

課税評価額=路線価(80千円)×土地の面積(200㎡)=1,600万円

 

路線価方式での土地評価は基本的にここまでとなりますが、宅地が特殊な場合は、評価額が増減します。

宅地が特殊な場合とは、土地の間口が狭く奥行きが長い、土地の形がいびつ、近隣に騒音や悪臭の問題があるなどの場合です。
このような土地の場合、売却しようとしたとき、売値も下がりますから評価が低いということなります。
ですから、相続税の評価額も減額することが可能です。

ただし、この減額要因を適用させるためには専門的な知識が必要ですから、困ったときには、相続や不動産に精通している税理士に相談してみましょう。

 

倍率方式

国税庁の評価倍率表で対象となる土地の住所を確認し、「路線価」ではなく「1.3」などの数字が入っていた場合は、倍率方式で評価額を計算します。

計算方法は簡単です。

 

課税評価額=固定資産税評価額×評価倍率

 

固定資産税評価額は、建物の評価方法で説明した通り、「固定資産税評価証明書」に記載されている土地の固定資産税評価額です。

たとえば、土地の固定資産税評価額が3,000万円となっていて、対象となる土地の評価倍率が1.3の場合は、下記のような評価額になります。

 

課税評価額=固定資産税評価額3,000万円×評価倍率1.3=3,900万円

 

まとめ

次回は、今回はご説明した親名義の家を相続した場合の家(建物と土地)の評価額をもとに、全体の相続税額を出してから各相続人が支払う相続税の計算方法について解説します。

【相続登記】登記申請書での不動産の書き方

相続登記の申請書を自分で作成する場合は、気を付けるべき点がいくつかありますが、不動産の書き方には特に注意が必要です。

 

記載した不動産の情報が登記されている内容と異なれば、不動産を特定できないため、手続きを進めることができません。

 

また、不動産が複数ある場合に記載に漏れがあれば、漏れた不動産については、別に手続きを行わなければなりません。

 

登記申請書に不動産を記載する場合は、記載事項の不足やミス、漏れをなくすことが重要です。

 

今回のブログでは、相続登記を行う場合の登記申請書での不動産の書き方について、技術的な面から紹介します。

 

相続登記申請書での不動産の書き方

 

不動産の相続登記でも、遺言によって相続する場合、遺産分割協議によって相続する場合、法定相続分で相続する場合には、それぞれ登記申請書の書き方が異なります。

 

以下では、遺産分割協議によって相続する場合を想定していますのでご注意ください。

 

登記申請書には、登記の目的や原因、相続人、相続する不動産の課税価格、登録免許税などを記載します。

これらを記載した後には、「不動産の表示」として、相続登記の対象となる不動産を個別に記載していくことになります。

 

建物は5つの要素、土地は4つの要素を記入

 

不動産を表示するために必要な要素は、建物では、所在、家屋番号、種類、構造、床面積の5つです。

一方、土地については、所在、地番、地目、地積の4つで、建物と土地では不動産の区別の仕方が異なっています。

 

登記申請書には、登記の目的とする不動産を特定できるように、登記簿などからこれらの要素を間違いなく転記しなければなりません。

 

(例)「登記申請書の不動産の表示」

建物

 所  在: ○○郡○○町○○番地

 家屋番号: 20番

 種  類: 居宅

 構  造: 木造瓦葺2階建

 床 面 積: 1階 32平方メートル

       2階 28平方メートル

 

土地

 所  在: ○○郡○○町○○字○○

 地  番: 22番

 地  目: 宅地

 地  積: 120・00平方メートル

 

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建物と土地の登記(例)

 

不動産の表示を間違いなく書く方法

 

登記申請書には、対象とする不動産を、登記簿(登記事項証明書)に記録されているとおり間違いなく転記しなければなりません。

 

以下では、相続する不動産が多数あるような場合に、転記ミスや転記漏れの防止に役立つ方法を紹介します。

 

不動産番号を記入する

 

先に紹介した建物と土地の登記(例)を見ていただくと、どちらも「不動産番号」が記されています。

不動産を表示する場合、この不動産番号を記載すると、細かな不動産の要素を記入しなくてもすむメリットがあります。

 

不動産番号を記載すれば、土地についての所在や地番、地目、地積、また、建物についての所在や家屋番号、種類、構造、床面積を省略してもかまいません。

 

このため、相続する不動産の数が多い場合などは、不動産番号だけを列挙すると、間違いや漏れなどを確認しやすく、間違いを防ぐことにつながります。

(例)

1 不動産番号 xxxxxxxxxxxxx

2 不動産番号 xxxxyxxxxzxxx

3 不動産番号 axxyxxxzxxxxb

 

登記情報提供サービスの利用

 

いわゆる登記簿と呼ばれる、不動産の全部事項証明書は紙に印刷された状態で入手しますが、登記情報提供サービスを利用すると電子ファイル(PDF)が入手できます。

 

特に、相続する不動産の数が多い場合は、このPDFファイルを利用してコピーすると、文字や数字を間違いなく転記できます。

 

なお、登記情報提供サービスは、登記所にある登記情報を、インターネットを経由してダウンロードし、パソコンで確認できる有料サービスです。

 

一般財団法人「民事法務協会」が運営しています。

登記事項証明書とは異なり証明文や公印などはありませんが、簡単な手続きで、登記されている情報をPDFファイルで入手できます。

 

相続した土地がたくさんある場合の書き方

 

とても細かい、技術的な話になりますが、相続した不動産の数が多い場合は、登記申請書が2ページ、3ページにわたってしまうことになります。

 

このような場合に、不動産を確認しやすく、申請書の枚数を減らす方法を紹介します。

 

登記申請書は、法務局で提供している「一太郎ファイル」か「Wordファイル」をダウンロードして利用する方法が簡単です。

 

申請書の様式は、受付シールを貼るスペースも設けられていて、1ページの行数や文字数を自由に変えることは困難です。

 

このため、建物の場合は無理ですが、土地の場合は、4つの要素を一行に収めて記入すると、コンパクトにスッキリ書くことができます。

 

不動産番号だけを列挙する場合に比べ、地番や地目などの具体的な情報があるため、見落とすなどの漏れが防ぎやすくなります。

 

このように、相続する土地が多い場合に、転記ミスを見つけやすく、申請書も少ないページ数で済むメリットがあります。

 

土地を一行に収める書き方の例

 

相続した土地が複数ある場合の一般的な書き方は、次のとおりです。

 

1 所在  ○○郡○○町○○字○○

地番  ○○番

地目  ○○

地積  ○○.○○㎡

 

2 所在  ○○郡○○町○○字○○

  地番  ○○番

  地目  ○○

  地積  ○○.○○㎡

 

3 所在  ・・・

 

一方、土地1筆は、次のように一行に収める書き方も可能です。

 

1 所在:○○郡○○町○○字○○  地番:○○番   地目:○○  地積:○○.○○㎡

2 所在:○○郡○○町○○字○○  地番:○○番   地目:○○  地積:○○.○○㎡

3 所在:・・・

 

まとめ

 

今回の記事は、自分で申請書を作成する場合に、間違いや漏れをなくす方法として利用できることを念頭に紹介しています。

 

自分で登記申請書を作成する場合に、記入した内容の確認を第三者に依頼できれば安心ですが、このような方がいないことも少なくありません。

 

登記申請前には、登記所に予約して事前の相談を受けることができる仕組みがありますので、利用をおすすめします。

 

ただし、限られた相談時間を有効に利用するためにも、正確な不動産の記載が大切です。